コーヒーを通じSDGsに取り組む!食品ロスなど社会課題の解決へ「三本珈琲株式会社」の事例

三本珈琲株式会社は、神奈川県横浜市に本社がある創業65年のコーヒーロースターです。
当社は、三本珈琲さまの鎌倉総合工場と仙台総合工場に太陽光発電の設置をさせていただきました。
そのご縁から今回は、持続可能な社会実現のためのSDGs活動について、三本珈琲株式会社のサステナビリティ推進室に所属しておられる正木 陽子さまにお話を伺いました。
三本珈琲さまならではのさまざまな取組みをぜひご覧ください!

三本珈琲株式会社 北海道総合工場 食品安全・開発研究本部 兼 製造部門統括本部 サステナビリティ推進室 正木陽子さま
三本珈琲株式会社のサステナブル活動:その始まりと現在
三本珈琲株式会社にサステナビリティ推進室が設置されたのは最近のことですが、創業当初より社会貢献活動には積極的に取り組んでいました。
1989年に開催された「YES’89横浜博覧会」には「MMCコーヒー地球体験館」を出展したほか、スリランカへの野球場の寄付、工場での障がい者雇用を積極的におこない表彰いただくなど、事業活動と並行して持続可能な社会づくりに貢献してきました。
SDGs活動をする中で苦労している点、成功している点
当社のSDGs活動の推進力の一つとして、スピーディーな意思決定による実行力が挙げられます。
組織図を見ていただければわかるように、SDGs推進に関する意思決定は非常にシンプルでわかりやすい構造となっており、経営層のSDGsへの意向や考えを直に聞くことが可能となっています。
そのため、決断も早くSDGs活動を円滑に推進することができ、発足して1年ほどで食品ロスや再生可能エネルギーである太陽光発電の設置など、さまざまなことを実現してきました。
現在の課題の一つは、社外はもちろん社内にもこの活動を浸透させることです。社内の理解を深めるには、社外に広めるのとはまた違った難しさを感じています。
しかし、社外から反応や評価をいただくことが、社内への認識の浸透につながることも多いです。そのため、地道に働きかけ続けることが最も重要だと考えています。
販売店もお客さまもハッピーな食品ロス削減への取組み
食品ロスは日本で約600万トンに上り、その半数以上が事業系食品ロスであると言われています。
三本珈琲でも食品ロスの削減には積極的に取り組んでおり、2020年5月には製造中に割れたり、焼きすぎ・焼き不足のコーヒー豆など、味には全く問題がないのに製品にできないコーヒー豆をおいしくブレンドして再生する食品ロス削減商品を作りました。
それが「三本珈琲オリジナルブレンド」です。
また、この商品ではその売上金の一部を社会貢献活動に使用しています。
この商品には、食品ロス削減や社会貢献の輪をつなげる工夫があって、製造者である当社の食品ロス削減だけでなく、製品を購入する消費者はこの製品を買うことで社会貢献に参加できます。
そして、製品の販売店の食品ロス予備軍をこの社会貢献費用で買い取ることで販売店の食品ロスを減らし、買い取った食品をフードバンク活動団体など必要な先に届けることができます。
関わる人全員が参加できる「全員参加型食品ロス削減推進モデル」の構築により、消費者庁主催令和3年度食品ロス削減推進大賞審査委員会審査委員長賞をいただくことができました。
この活動がテレビや新聞に取り上げられることで、社外への当社の活動の認知度を向上させることに繋がりました。社内での反響もとても多く、1つの行動や結果が次の行動や周りの皆さまへの意識の広がりにつながることを実感した出来事となりました。
動物も喜ぶコーヒー豆でできること「金沢動物園」と連携したSDGsの取組み
金沢動物園(横浜市金沢区)など、日本のいくつかの動物園や牧場では、コーヒーの薄皮を動物たちが過ごすエリアの床じきなどに活用いただいています。
コーヒー豆は薄い皮をまとっていて、焙煎することでその薄皮がハラハラと剥がれてくるのですが、その薄皮を「シルバースキン」といいます。今まではただ捨てていたものなのですが、ゾウや馬などの蹄を守る緩衝材になると知り、このシルバースキンが活用できるとわかりました。
また、コーヒーの生豆は麻袋に入って海外のコーヒー生産地から運ばれてきますが、その麻袋も動物園では動物の寝具や遊具として有効に活用されています。
そんなつながりもあって、2022年3月~5月には、金沢動物園内に環境問題やSDGsを知ってもらうためのパネルを設置し、クイズラリー形式でSDGsを学んでもらうという取組みをおこないました。貴社(横浜環境デザイン)にもご協力いただき、クイズパネルを作成させていただきました。
5月のゴールデンウイークには、同園にて「シルバースキン」をパンに練りこんだホットドックも販売しました。
今後もシルバースキンをバイオマス発電のエネルギー源として活用するなど、さまざまな活路を模索して、なるべく廃棄しないようにする試みを続けていきます。
再生可能エネルギーの導入で使う電気をクリーンにCO2削減
CO2削減には何ができるか検討した際、エネルギーを作るための立地や条件を考慮し、鎌倉総合工場と仙台総合工場に太陽光発電設備を設置しました。
電力を再生可能エネルギーに切り替えることで、CO2削減や工場の光熱費の削減ができるのではないかと考え、貴社(横浜環境デザイン)に工事を依頼しました。また、工場の電気もLED化を進め、消費電力を減らすことにも取組んでいます。
パートナーシップやSDGsセミナーなどの取組み
フードバンクや子ども食堂を運営しているNPO団体などと一緒に、SDGs活動の中でも特に「食品ロス」に対する貢献活動をおこなっていきたいと考えています。
また、当社では小・中・高校生及び専門学校などに、SDGsセミナーをおこなっています。セミナーのお問い合わせは、主に当社のHPをご覧いただき、当社のSDGs活動に興味を持っていただいてお声がけいただくことが多いです。
それぞれのご要望の内容に、コーヒーや食品の関連事業者だからこそお話できるようなトピックスを加えて、オーダーメイドで対応しています。
SDGsへの取組みは自分たちの中だけでは終わらせずに、発信して広げていくことが重要だと考えているため、繋がりを広げる活動を今後も継続しておこなっていきたいです。
新しく始めるSDGs活動や今後の活動について
今年度の新たな取組みとして、三本珈琲は2022年5月からWFP国連世界食糧計画(国連WFP)がおこなう「レッドカップキャンペーン」に参加します。
国連WFPの「ハンガーマップ2021」では、赤が濃い地域が慢性的な飢餓に苦しむ地域となっています。そこにコーヒー栽培可能な地域、いわゆるコーヒーベルトを重ねてみると、赤の濃い地域がコーヒーベルトと重なっていることがわかります。
これはつまり、コーヒー生産国の多くが飢餓に苦しんでいるということです。
レッドカップキャンペーンは、国連WFPの「学校給食支援」に賛同した企業が赤いカップのマークを付けた商品を展開し、対象商品の売上の一部を寄付する取組みです。
三本珈琲は、2022年5月より「SUNSHINE COFFEE PROJECT」を発足し、本プロジェクトへの参加を通してより多くの企業がレッドカップキャンペーンを支援できる取組みを実施しています。
本プロジェクトの参加企業は、三本珈琲のレッドカップキャンペーン商品を購入することで、売上の一部を国連WFPに寄付することができます。
このように、「SUNSHINE COFFEE PROJECT」では学校給食支援を通して、地球を照らす太陽の光のように、世界中のこどもの笑顔と未来をはぐくむことができる取組みです。
☞本プロジェクトやレッドカップキャンペーンについて詳しく知りたい方はコチラ!
深刻な食品ロス問題と持続可能な社会づくり
この取組みをきっかけに、考えさせられたことがいくつかありました。
例えば、ハンガーマップでは、日本は栄養不良人口が2.5%未満の青色に塗られています。それなのに、なぜ日本にもフードバンクや子ども食堂が必要なのか?
世界や日本で食べ物を必要としている人々に、日本で発生している「まだ食べられるのに捨てられてしまうもったいない食品ロス」の600万トンを、どうして届けることができないのか?
そして、それができない代わりに、私たち一人ひとりが何か少しでもできることはないのかなど、一つの真実を見つめ直すとその周りのいろいろな課題や矛盾が浮き彫りになります。
こうした課題や矛盾にしっかりと向き合って、「明日からではなく今からできる何か」を具体的に示し、周囲を巻き込み実行していきたいと考えています。
持続可能な社会づくりは、地球とそこに暮らす世界中のみんなのためのものです。専門家によると、現在すでに地球は危機的な状態で、今すぐに具体的で効果的な行動を起こさないと、もう後戻りができない状況まできていると言われています。
そのような状況も踏まえ、当社も一企業としてSDGs への取組みを事業活動に効果的に取り入れ、事業活動と社会全体の持続可能性を高めることを考えながら、引き続き活動をおこなっていきたいと思います。
あとがき
三本珈琲株式会社では、コーヒーのプロとしておいしいコーヒーを提供しながら、コーヒーの製造過程で出る「捨ててしまう食材」を有効活用し、地域や世界の食品ロス削減に取り組んでいることを知ることができました。
正木さまや三本珈琲株式会社の姿勢として、“今取り組むべきことを今やる。自分事として考え、本気で会社としてSDGsに取り組む”ということが、本当に持続可能な社会づくりを実現するために必要なのだと思いました。
☞工場での自家消費で電気代3割削減、三本珈琲の事例
☞フードロスの1つ「災害備蓄品」をムダなく分配する仕組み!