10年近く経った発電所は要注意|太陽光発電のリパワリングとは?

2012年に始まったFIT法から、2022年3月時点の太陽光発電の認定量と導入量(運転開始量)が発表されました。

運転開始量は2,449,200件、計60,536MWとなりました。未稼働分として、166,761件、計16,520MWを残していますが、10年で60GWの導入を達成しています。

2022年4月からは「第6次エネルギー基本計画」および「地球温暖化対策計画」の下で、「エネルギー供給強靭化法」および「改正地球温暖化対策推進法」が施行され、2030年までに新たに導入すべき60GWの導入拡大を進めています。

つまり、これまでに導入済みの60GWと、これから導入される60GWの再生可能エネルギーを基幹電源として運用していくためには、保守・管理をきちんとおこなっていく必要があります。これまでの10年では、急激な導入が進んだことによる問題も発生しています。例えば、設計・施工不良による発電不良や、自然災害の頻発・激甚化などによる発電不足・破損などがありました。

そこで、こうした発電所の不具合や品質チェックと問題があった場合に修繕工事をおこなう「リパワリング」が、今後はますます重要となるでしょう。

太陽光発電の「リパワリング」とは

日本より先行して再生可能エネルギーの導入を進めているドイツを含むヨーロッパでは、ほとんどの場合は銀行や投資家、オーナーの依頼により、竣工検査として投資対象となる太陽光発電所の価値やリスクなどを技術的側面から調査するTDD(テクニカル・デュー・デリジェンス)」検査が実施されています。

こうした竣工検査を実施しないまま太陽光発電所を稼働してしまうと、知らず知らずのうちに利益を損ねている可能性があるため、海外ではこのような手順が一般的な流れとなっています。逆に日本では、竣工検査を実施せずに発電を開始している太陽光発電所が多くあり、発電不良や自然災害による被害の甚大化を招いているケースも少なからずあります。

また、ヨーロッパでは見込みを下回る発電量であると診断された場合、想定通りの収益に戻すため、出力低下が見られる太陽光発電所に対しては、「リパワリング」がおこなわれています。

「リパワリング」とは、テクニカル・デュー・デリジェンス(TDD)による発電所自体の品質チェックをおこない、その後修繕工事をすることです。本来なら発揮できたであろう発電量を下回っていると判断された際に、発電所の発電能力をなるべく100%に近づけることを “リパワリング”と呼んでいます。

発電量の低下が起こる原因には、設計や施工、モジュール自体の不具合などさまざまな要因が考えられ、一つに特定することが難しいですが、日本では施工前のモジュール受け入れ検査や完工後の竣工検査はほとんど実施されません。
そのため、いざ発電量の低下が発見されたとしても、問題の要因を特定することは困難なことが多いです。それでも、TDDで問題を特定し、リパワリングすることで失い続ける売電収入を取り戻すことができます。

ただし、リパワリングにはコストがかかってしまうので、出力低下に対するリパワリングは、必ずしも実施されるというわけではありません。利回りへの影響と発生するコストのバランスを計算する必要があります。

なぜ太陽光発電所のリパワリングが必要なのか?

最近お問い合わせいただいたのは、発電所オーナーから売電金額が去年より少ないと思うという内容でした。ただこの太陽光発電所は監視システムやO&M(点検メンテナンス)を実施していませんでした。毎年のログがなく、毎月電力会社から振り込まれる売電金額しかない状態でした。

<お問い合わせのあった太陽光発電所の詳細>
・容量:1000kW
・場所:栃木県
・売電単価:36円(2016年発電開始)

発電開始初年度を100として、経年でどれぐらい発電量が下がっているかについて検証したところ、年平均−3.14%低下していました。売電金額にすると、計算上では約800万円失っていることになります。

この発電所の発電量低下の原因は、パワーコンディショナが故障し停止しているためであることがわかりました。太陽光発電の心臓部であるパワーコンディショナが数台止まっていると発電は大きく損なわれ、売電量もかなり減ってしまいます。

本案件のリパワリング内容としては、パワーコンディショナを新しいものに入れ替えることをご提案しました。こうしたリパワリング工事をおこなうことで、発電量をアップさせ、売電金額をアップさせることができます。

今回ご紹介した事例のような不具合が発電所にある場合、リパワリングをおこなわないとこの先ずっと発電量ロスと売電ロスが続いていたでしょう。そのため、当社ではTDD後にリパワリング工事を実施することをおすすめしています。

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実際にあった太陽光発電所のリパワリング事例

こちらも太陽光発電所オーナー様より、当初の発電シミュレーションよりも発電量が少ないとのお問い合わせがあったため、現地でTDD(テクニカル・デュー・デリジェンス)をおこないました。

<お問い合わせのあった太陽光発電所の詳細>
・容量:1000kW
・場所:東北電力管内
・発電開始年:2013年

現地調査の結果、複数の影の影響がシミュレーション時に正確に反映されておらず、パワーコンディショナの効率曲線が適正でないことがわかりました。また、当初の発電量予測を約3%下回っていることが判明しました。

改善案として、①パネルにかかる木の伐採、②影の影響を軽減させるためにセントラルパワコンから分散型パワコンへ変更のご提案をおこないました。

リパワリングによる効率向上と売電収入の増加

①の「パネルにかかる木の伐採」については、太陽光発電所の南側の樹木の枝を剪定することを想定した場合、その後一年目の発電量が0.5%アップする見込みがあるという結果になりました。この場合の工事費用の回収期間は、2.5年となる予想です。

また、②の「影の影響を軽減させるためにセントラルパワコンから分散型パワコンへ変更」については、既存のセントラルパワコンを分散型パワコン10台に置き換えることになります。
影の影響を受けているストリングに関しては、より発電効率の高いストリング構成に変更することで、修繕前と比べ一年目の発電量が2.5%アップすることが見込まれます。この修繕工事にかかる費用の回収期間は、5年となる予想です。

このようにリパワリングの内容には、パワーコンディショナの入れ替えや配線の組み換え、影を及ぼす木や草刈りの提案など多岐にわたります。

最近太陽光発電所で気になることはありませんか?

いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介した事例などはあくまで一例となります。リパワリングが必要かどうかわからない場合は、お持ちの太陽光発電所に関して、例えば下記のような不安はないかチェックしてみてください。

<太陽光発電所のよくあるギモンや不安>
・太陽光発電所の発電量が最近下がってきた気がする
・経年劣化が気になり、今後何年も安定的に売電ができるか不安に思っている
・太陽光発電所ができてから10年近く経ち、パネルやパワーコンディショナなどの故障・劣化が心配
・太陽光発電所をそろそろ手放したいと考えているが、自分の発電所の適正な販売価格がわからない
……など

当社では「無料発電量解析調査」をおこなっておりますので、1つでも該当する太陽光発電所をお持ちの方はぜひ一度お問い合わせください。

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太陽光発電の設計・施工で20年以上の実績。最近では再エネ率の高い電気と蓄電池を併せた提案も好評です。環境にいいこと・持続可能な地球・100年後の子供たちのために様々なソリューションで再エネ普及をしています。

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