日本で初めてRE100に参加したリコージャパン株式会社

RE100とは(2018年取材当時の内容です)
英国の非営利組織クライメイト・グループ(The Climate Group)が主催するビジネスイニシアティブのことで、事業運営に必要な電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が参加する。2014年に始まり現在世界の環境先進企業122社が加盟しており、リコーは日本企業として初めて加盟した。
リコーグループは、2030年目標として、GHG(温室効果ガス)スコープ1(自社の工場・オフィス・車両などから直接排出されるGHG)と、GHGスコープ2(自社が購入した熱・電力の使用に伴うGHG)を2015年比で30%削減、GHGスコープ3(企業活動のサプライチェーンの排出量)を2015年比で15%削減することを掲げている。さらに2050年目標として、バリューチェーンのGHG(温室効果ガス)排出ゼロを目指している。
今回リコーグループの目標を決定し推進していく部門、サステナビリティ推進本部 社会環境室 室長 阿部 哲嗣氏にお話を伺った。
2015年のCOP21(地球温暖化対策に関する国連による議論の場)では、気温上昇を2度に抑えるために温室効果ガスの排出に関する2020年以降の国際的なルールが世界的に合意されました。リコーはこのCOP21の公式スポンサーで、会場の複写機やプリンターを提供しました。
リコーが公式スポンサーに選ばれたのは、1998年から「環境経営」、つまり「環境保全」と「利益創出」この2つを両立させていくという理念を掲げて経営をしてきたことが、フランス政府や国連、COP事務局から評価されたことが理由です。
公式スポンサーを務めたことで、多くのイベントや意見交換に参加する機会を得て、フランス政府の要人や名だたるグローバル企業のCEOと意見交換ができました。皆さん口々に「脱炭素社会」「CO2排出0」を目指し、国ではなくわれわれ企業が積極的に取り組んでいくべきだという強い意見を持っておられることを痛感しました。リコーはこれまで約20年「環境経営」に取り組んできた自負があったものの、世界はもっと早いスピードで「脱炭素社会」に向かって動いていることに驚きました。
COP21後にいままでの取組みを見直し、2017年4月に日本で初めて「RE100」に加盟し、具体的な数値目標としては、使用電力を2050年までに100%、2030年までに少なくとも30%再生可能エネルギーで賄うという目標を立てました。
世界では再生可能エネルギーへのシフトが加速し、またコストダウンも実現している中で、積極的に再生可能エネルギーを活用し、購入することを柱としてチャレンジを始めました。
リコーがRE100に参加を決めた理由は、主に4つあります。
世界では、100%にするかどうかは別として再生可能エネルギーを積極的に活用する企業が増えています。リコーは、環境経営のリーディングカンパニーとして、RE100に参加することで、よりはっきりとグローバルにコミットメントを示すこととしました。また社員に対しても周知する狙いもあります。
RE100に参加している企業は100社以上ありますが、そのほとんどがリコーが複写機やプリンターをすでに提供していたり、今後お付き合いをしたいグローバル企業であり、そういった企業と同じ価値観をもって活動していくことをグローバルに意思表明する意味もあります。
また複写機をメインにオフィスで使われる画像機器を扱っていますが、太陽光発電のO&M、保守点検など新しい事業の立ち上げをおこなっており、これらのビジネスの後押しにも繋がると考えています。
最近の流れとして投資家の方々が、ESG投資といわれる環境意識が高い会社に投資をする投資判断の基準として考えるようになってきているので、環境意識が高い会社として評価向上を図る効果もあると思います。
日本では、使う側は再生可能エネルギーは使いたいけれど、高いので使えない、価格が下がったら使いたいと考えています。また再生可能エネルギーを供給する会社は、環境意識が高い人は高くても買ってくれるだろうと考えていて、卵が先か鶏が先かという状態になっていると思います。リコーは需要家として、再生可能エネルギーを積極的に使う、切り替えていくという意思表示を示すことで、国を含め供給側の改革を促すことも狙いとしています。
リコーでは、自社の使用電力を再生可能エネルギー100%で賄うにあたり、再生可能エネルギー施設の設置や再生可能エネルギーの購入だけではなくて、省エネやプロセス改善による徹底的な効率化を大前提として考えています。
よく、グリーン電力証書などを購入して再エネ率100%にするのですか?と聞かれますが、今の段階でそういった方法はとらず、まず徹底的な省エネに努めた上で、再生可能エネルギー設備の設置、電力の切り替え、生産効率化などで実現していきたいと考えています。
また、日本では、市場から電気を調達しているので再生可能エネルギーのカウントや調達については課題があります。われわれはRE100に参加することで、仕組みも考えていきたいという社会への投げかけもおこなっています。今年5月に始まる非化石証書の扱いだとか、原子力が入るのであれば自分たちの再エネのカウントはどうしたらいいかなどRE100に参加しているからこそ、発言や意見も述べる機会が得られます。
日本と海外での推進の仕方はまったく違います。つい、日本と世界という大くくりで考えますが、実際は、世界とは、アジアなのか、アメリカなのか、ヨーロッパなのか、まだそれでも単位としては大きく、実際に工場がどこにあるのか、地域別での戦略が必要になります。
アメリカ・ニュージャージの販売会社で去年4月に太陽光発電設備を敷地内に設置しました。これは全体の約半分の電気を賄うものですが、近隣5州にしか存在しない補助金を使いました。ニュージャージを含む5州では、太陽光発電設備による環境価値をクレジットとして販売すると、設備投資費用が軽減することができます。
これもアメリカ全体の政策ではなく、州の政策ですので、実際に拠点がどの地域にあるのか?使える補助金は?電力供給はどこから受けていて、再生可能エネルギーへ切り替えることができるのか?など細かく見ていく必要があります。

2017年4月 米・ニュージャージ販売拠点 太陽光発電システム
リコーは中長期の経営計画に沿った環境目標をグローバルレベルで設定しました。各極、各社、各部門が具体的な推進計画をたてて、グループ全体での目標達成を目指しています。
リコーでは経営理念を元に、2002年に目指すべき社会の姿として3Psバランスを提唱。具体的に3つのPとはProsperity(持続可能な経済)、People(持続可能な社会)、Planet(持続可能な地球環境)をさし、この3つのバランスが重要と考えています。このバランスを保ち、持続可能な地球環境を実現するために、環境目標を設定し、RE100でのコミットメント目標、2050年までに再生可能エネルギー活用目標100%が達成できるようチャレンジをしていきたいと思います。