地元の伝統食材を絵本に!地元の伝統食材で絵本をつくるスローフードのプロジェクト始動

インタビュー

参加者

  • 渡邉めぐみ様Slow Food Nippon代表理事

    1991年神奈川県出身。大学在学時よりスローフードに関わり、若者の仲間を中心にSlow Food Youth Networkを日本で初めて立ち上げ。2015年イタリアに渡り、スローフード協会が設立した食科学大学University of Gastronomic Sciecesにて修士号を取得。 日本に帰国後は、スローフード日本の立ち上げから活発化の中心的役割を担い、2019年4月から代表理事。
    また有機農家のお嫁さんとして、二児の母親として多忙な日々を送っておられます。

今回は、クラウドファンディングのCAMPFIREで始められた

「地球上から消えてしまうかもしれない日本の伝統食材を伝え残すための絵本をつくりたい」プロジェクトの立ち上げのきっかけや今後の活動内容についてお伺いしました。

「スローフード」とは?

本日はお時間をいただきありがとうございます。

早速ですが、めぐみさんが代表を務めておられるスローフードについて教えてください。

スローフードはもともと「おいしい・きれい・ただしい食をすべての人へ」をモットーに、1989年にイタリアで生まれた草の根運動の名称で、地球環境や食の未来を守りそだてようと、世界160カ国以上に広がり、さまざまな活動を展開しています。

私たち日本スローフード協会(通称Slow Food Nippon)は2016年に設立しました。現在は、日本各地にスローフードの活動をしているグループが存在します。

slowfoods

地元の伝統食材で絵本をつくるプロジェクト誕生のきっかけ

今回、クラウドファンディングCAMPFIREで「地球上から消えてしまうかもしれない日本の伝統食材を残すための絵本をつくりたい!」というプロジェクトを始められましたが、この企画を始めようと思ったきっかけを教えてください。

スローフードでは、「味の箱船(ARK OF TASTE)」として、伝統食材で後継者がいなかったり、生産量が減少している食材について1996年から調査・記録をしていました。今現在、日本では74食材(2021年12月現在)が登録されています。

 

「味の箱船(ARK OF TASTE)」とは?

地方の伝統的かつ固有な在来品種や加工食品、あるいは伝統漁法による魚介類などのなかには、このままでは消えてしまうかもしれない、小さな生産者による希少な食材があります。

「味の箱船」は、それらを世界共通のガイドラインで選定し、さまざまな支援策によって、その生産や消費を守り、地域における食の多様性を守ろうという取組みです。

1996年に設立され、現在世界中で5000を越える動物、果物、野菜の品種と加工食品などが登録されています。“食の世界遺産”とも呼ばれています。

☞「味の箱船」について詳しくはコチラ

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しかし、味の箱船プロジェクトでは調査して記録していく部分だけ担っていたので、日本ではその食材を今後も残していくための具体的な活動ができていませんでした。

そんな中、この「味の箱船」に登録されていた食材を作っていた生産者さんが、継承者がいなくてやめてしまうなどといったお話をよく聞くようになりました。

こうした状況を踏まえ、「どうしたら自分たちの地域にある特産品を知り、残してく活動が地元の方を巻き込んでできるか?地元の特産品についてもっと誇りに思ってもらえるか?」を考えるようになりました。

その結果、伝統食材に関する絵本を作って、まずは子どもたちに知ってもらおうと考えました。その後、日本財団の助成金へ応募し採択が決まり、2020年から本格的にこの絵本プロジェクトを始めるに至りました。

伝統食材をテーマにした絵本:つくる上でのこだわり

絵本作家や食材はどのように決定し、絵本化されましたか?

食材はもともと「味の箱船」に登録されていたものから選びました。

絵本のテーマについては、日本財団が助成金を出しているさまざまなカテゴリーを鑑みて、その中で今回は“海にまつわる食材”を残していこうと決め、それに当てはまる4つの食材についての絵本を企画しました。

今回は「味の箱船」に登録されている日本の74食材のうち、4地域の4食材を題材に、4冊の絵本をつくります。

・秋田県 ハタハタのしょっつる
・静岡県 西伊豆町の潮かつお
・長崎県 エタリの塩辛
・沖縄県 国頭村宜名真(くにがみそんぎなま)のフーヌイユ

 

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絵本を書いていただいた方々についてですが、もともと絵本作家という方はほとんどおらず、絵画作家さんや、イラストレーターさん、陶芸もやられているような、多彩なアーティストの方々にお願いしています。

なぜなら、担当していただいた食材に対し、絵本という形だけではなくて、今後も別の表現の仕方などでも関わっていただきたかったので、できるだけ食材が作られている地域に根ざして創作活動をされている方に絵本作りをお願いしました。

現在、絵本もほぼ9割できあがっています。

絵本のストーリーや、その他こだわった点を教えてください。

ストーリーを作る際は、もともと「このようなストーリーで」というのはあまりなくて、その地域ごとにアプローチ方法は異なっていましたが、基本的には地元の人や生産者さんの思いなどをゆっくり聞き出したりして、そこから大切な要素を抽出して、一緒にストーリーを作りあげています。

 

その他には、絵本に描かれる背景などもなるべく地元にある風景と一致させたり、どうやったら子供にわかりやすいかという視点で編集したりしています。

スローフード6_絵本見本

今回のクラウドファンディングの現在の経過はいかがでしょうか?また、反響はいかがでしょうか?

クラウドファンディングを開始して、まだ3週間程度(2022年1月17日現在)ですが、すでに117人もの支援者の方の登録があります。

支援金も、250万円の目標設定ですが、すでに100万円以上の支援額をいただいており、多くの方にご支持やご声援をいただいています。

クラウドファンディング上での告知はもちろんのこと、スローフードのもともとの支援者やSNSを通じて、企画のことを拡散しています。面白いのは、スローフードとあまり接点が無いであろう、私の大学の友人などもSNSで知り、いい企画だからと支援してくれたりして、反響の大きさに驚いています。

また、もともとスローフードの活動は知っていたけれど支援活動などへの参加は躊躇っていたという方にも、この絵本の企画で親しみやすくなり、そこから支援活動にも実際に参加していただけたりもしました。

親と子に-この絵本を通して伝えたいこととは

コロナ禍でいろいろ苦労があったと思うのですが、この絵本を通じて子どもたちに伝えたいことはなんですか?

コロナ禍で、活動がすべて順調にいったわけではないですが、各地で活動するコーディネーターや生産者さん、絵本作家さんと直接会えない中、ZOOMなどのオンラインでコミュニケーションを重ねてきました。

この絵本を製本して、子どもたちに届けることが一番の目的ですが、生産者さんやスローフードのメンバー、地元の方と対話をして何かを作っていくというプロセス自体が重要で、このプロセスそのものが、食材の未来につながっていると思います。

 

絵本は子ども向けですが読み聞かせをするのは親であり、読み聞かせをする親世代にもこういった、伝統の味として地域で愛されている食材があるということを知ってもらいたいと思います。

また、将来子どもが地域を離れる際も地元に誇りを持ってくれて、どこかでこの箱船シリーズの食材(この絵本の企画は第1弾で4つの食材しか扱っていないですが、今後も反響を見てシリーズ化する予定です)を見つけて、「この食材は絵本で読んだことがある」と思って買ってくれる、そんなことも期待しています。

今回の絵本は、どこでどのように読んだり買ったりできますか?

第一版は、小学校や学童に寄贈してきます書店での販売もおこなっていきます。

セレクトショップや服屋さんの一角など、書店に限らず、この絵本を手に取っていただける場所を増やしたいと思います。もちろん、オンラインショップでもご購入いただける予定です。

 

この絵本は、地元の食材を知るだけではなく他の地域の食材も知ってもらうことで、自分だけではなく他の人に思いをめぐらせたり、自分以外のだれかを大事にできる子どもになってもらいたいという思いも込めて作っています。

ただの地域の特産品紹介、町づくりの一環というアプローチだけでなく、子どもたちの人間性と多様性を豊かに育てるものとして、絵本がそんな側面も担えたらうれしいです。

また、この絵本を親に読んでもらった子どもが、今度は自分の子どもにも読み聞かせていく、そんな風に引き継がれ、永く愛される絵本になってほしいです。

現在、スローフードで企画中のものやイベントはございますか?

この絵本の出版お披露目も兼ねたイベントを、神戸で2月26日、27日におこないます。お近くの方は、ぜひお越しください。

Slow Food Nipponと神戸市が共催する食のイベント

We Feed the Planet Japan 2022~みんなでつくる、おいしい食の交換会~

kobe

また、次の食材で新しい絵本のプロジェクトも考えています。この「味の箱船」の食材をテーマにした絵本プロジェクトにご支援いただける方はぜひ、クラウドファンディングCAMPFIREよりご支援をお願いします。

☞本プロジェクトのクラウドファンディングはコチラから

サンクスレターと、日本の伝統食材と生産者さんの思いや地元のことがよくわかる絵本をセットにしてお届けする支援プランもあります。

神戸のイベント楽しそうですね。

この第1弾のプロジェクトが成功して、第2弾と第3弾と続けていけるよう私たちも応援しています。本日はお忙しいところお話ありがとうございました。

あとがき

このプロジェクトを通じて、日本の消えゆく食材について知るきっかけにもなり、子供たちだけでなく、この絵本を読み聞かせる親にも地元食材や全国のおいしい食材や生産者さんの思いを知っていただきたいと思いました。

本プロジェクトは、クラウドファンディングCAMPFIREより支援することが可能です。さまざまな支援プランが用意されていますので、ぜひ一度ご覧ください!

☞絵本プロジェクトを応援したい!クラウドファンディングはコチラ

2022年2月21日に見事250万円の資金調達を達成されました!

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☞地域で取り組まれているスローフード:インタビューはコチラ

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【SAVE&EAT】発酵スープカレー ミコヤ様(22年1月5日取材)

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