ごみを出さない「ゼロウェイスト」とは?簡単にできる取り組み方法10選
英語で「ウェイスト(waste)」とは、「浪費する(無駄遣いする)」という意味を持っています。その対象には例えば、時間や物などが該当します。
しかし、今回の「ゼロウェイスト」では主に“資源の浪費をなくしてゴミを出さないこと”を目的とした行動や活動を指して使われています。
では、そもそもどのような背景で始まったものなのか?国内外でさまざまな形で取り組まれているゼロウェイストの事例紹介を交え、詳しく説明します!
目次
1.ゼロウェイストが始まった背景
2.国内の自治体などによるゼロウェイストな取組み
3.海外のゼロウェイストな取組み
4.個人でもできる「ゼロウェイスト」10のアイディア
5.ゼロウェイストで地球環境と資源にちょっといいこと
ゼロウェイストが始まった背景
ゼロウェイストの概念は、世界的に増加するごみの排出量とそれに伴う環境問題に対する強い危機意識から生まれました。
現代社会において、人口増加や経済活動の拡大に伴い、ゴミの排出量は年々増加しています。特に発展途上国の経済成長により、消費活動が活発化し、都市部で大量の廃棄物が発生しています。世界銀行の報告によると、世界の固形廃棄物の量は2050年には現在の約1.7倍になると予測されています。
このように、ごみの量は今後も増え続ける傾向にあり、これに対処するための持続可能な解決策が求められています。また、ごみの排出量が増え続けると、以下のような問題の原因につながります。
ごみが抱える問題
●有害ガス・悪臭による公衆衛生問題
ごみの処理過程で発生する有害ガスや悪臭は、公衆衛生に悪影響を及ぼします。
特に不適切に管理されたごみの山は、病気の温床となり、周辺環境に有害物質を放出することで地域住民の健康を脅かす原因となります。
●処理コスト(税金)の増加
ごみの量が増えれば増えるほど、その収集・運搬・処理にかかる費用は増大します。
これは自治体の財政に負担をかけ、結果として市民の税金の増加に繋がる可能性があります。
●温室効果ガスの増加、温暖化の進行
ごみの焼却や埋め立てにより、大量の温室効果ガスが排出されます。
温室効果ガスは地球温暖化の主要な原因の一つであり、気候変動を加速させることにつながります。
●埋め立て地・最終処分場の不足
ごみの量が増加すると、それを処理するための埋め立て地や最終処分場が不足する問題が生じます。
適切な廃棄場所の確保が難しくなり、環境への負荷が増大することになります。
これらの問題を解決するために、ごみを減らし、リサイクルを促進し、廃棄物の最終的な排出量をゼロに近づける「ゼロウェイスト」の考え方が重要視されています。
プラスチックごみ問題と海洋汚染の現状
ごみ問題の中でも特にプラスチックゴミ問題は、環境に深刻な影響を及ぼしており、海洋汚染が顕著です。
現在、世界中で毎年大量に消費されるプラスチックの多くが適切に処理されず、川や海に流出しています。海洋に漂うプラスチックごみは生態系に害を及ぼし、魚や海鳥がこれを誤飲することで健康被害が発生しています。
また、プラスチックは分解されにくく、微小プラスチックとして海中に長期間残り続け、食物連鎖を通じて人間にも影響を与える恐れがあります。この問題に対処するため、プラスチックの使用を減らし、リサイクルを促進することが求められています。
国内の自治体などによるゼロウェイストな取組み
世界のさまざまな国では、すでに当たり前のように取り組まれている「ゼロウェイスト」ですが、近年では日本でも精力的に取り組まれています。
例えば、今年2022年4月1日から施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」=プラスチック新法も、プラスチックごみのゼロウェイストを目指す施策です。
徳島県上勝町:自治体として初のゼロウェイスト宣言
また、自治体では徳島県上勝町が、2003 年に日本で初めてゼロウェイスト宣言をおこないました。
同町では、ごみを45種類に分別し、町内に唯一ある「ゴミステーション」へ町民自らが持ち込みます。このように、ごみを細かく分け適切に処理する社会づくりに取り組み、2020時点では町のリサイクル率は80%を超えたそうです。
そんな上勝町にある「HOTEL WHY」は、この活動のハブとなる上勝町ゼロ・ウェイストセンター内に建てられており、さまざまなゼロウェイストへの取組みと暮らしを体感することができます。
☞参考:上勝町「WHY」HP
神奈川県鎌倉市:ゼロウェイストかまくら
神奈川県鎌倉市では、「ゼロウェイストかまくら」というスローガンのもと、循環型社会を目指す取り組みが進められています。
鎌倉市の取り組みの核となるのは、多様な人々、微生物、そしてAI(人工知能)が共生することでアップサイクルを実現し、廃棄物を資源に変えるサイクルを確立することです。
アップサイクルとは、廃棄される予定のものをただリサイクルするのではなく、より価値の高い新たな製品や材料に生まれ変わらせるプロセスを指します。
鎌倉市の「ゼロウェイストかまくら」プロジェクトは、地域全体で循環型社会の実現を目指す事例として注目されており、持続可能な社会づくりへの貴重な取り組みとなっています。
海外のゼロウェイストな取組み
続いて、海外でのゼロウェイストの取り組み事例を見てみましょう。
オランダ・アムステルダム:循環型経済
アムステルダムは、循環型経済の先進都市として知られており、2050年までに100%循環経済への移行を目指しています。この目標達成に向け、2020年には「ドーナツ経済学」の概念を市の政策に採用しました。
ドーナツ経済学とは、地球上の限られた資源をその範囲内で活用しながら、世界中の人々の社会的公正を実現するべきだという考え方で、経済成長と環境保護のバランスを重視しています。
アムステルダムでは、廃棄物の減少、資源の再利用、持続可能な材料の利用促進など、循環型経済に資する様々な取り組みが進められています。
この取り組みは、他の都市や国にも影響を与え、アムステルダムのゼロウェイストと循環型経済に対する姿勢は、持続可能な未来を目指す上での重要な指標となっています。
ブータン:ゼロウェイスト・アワー
ブータンは2030年までに「廃棄物ゼロ社会」を目指す目標を掲げています。
この取り組みの一環として、ブータン政府は毎月2日を「ゼロウェイスト・アワー」と定め、全国民がゴミ拾いやリサイクル活動に参加する時間を設けています。
この取り組みは、地域コミュニティの清掃、リサイクル活動の促進、そしてゼロウェイストに関する意識向上を目的としており、国民全体で環境保護に貢献する文化を育んでいます。
アメリカ・ニューヨーク:コンポスターの設置
ニューヨークでは、ゼロウェイストの実現に向けて、市内の100箇所以上にコンポスターを設置し、堆肥化プロジェクトを推進しています。
設置されたコンポスターに市民が生ゴミなどの有機廃棄物を投入し、収集後に堆肥化されます。生成された堆肥は、地元の都市農業や公園、ガーデニングに利用され、土壌改良材として有効活用されています。
スウェーデン:家庭ごみのリサイクル率世界一
スウェーデンは世界一の家庭ごみリサイクル率を誇り、99%に達しています。
スウェーデンでは、国全体でリサイクルを徹底する文化が根付いており、住宅地だけでなく至る所に家庭ごみの回収拠点が設置されています。
こうした社会づくりの施策により、住民はごみの分別と回収を容易におこなうことができるため、高いリサイクル率の維持に貢献しています。
スコットランド:デポジット・リターン・スキーム
スコットランドでは2019年から「デポジット・リターン・スキーム」を導入し、空になったボトルや缶を回収場所に返却すると、デポジット(保証金)が戻ってくる仕組みを実施しています。
この取り組みにより、リサイクル率の向上と廃棄物の減少を促進し、ゼロウェイストの目標達成に貢献しています。利用者は使用した容器を返却することで、環境保護に直接貢献できると同時に、経済的なインセンティブを受け取ることができます。
個人でもできる「ゼロウェイスト」10のアイディア
そして現在、ゼロウェイストは個々人のライフスタイルにも取り込まれ始めています。
では、個人でもできるゼロウェイストの取り組みをいくつかご紹介します!
①パッケージレス商品をえらぶ
「パッケージレス」とは、商品のパッケージや梱包をなるべく使わず購入することを指します。
例えば次のようなものが該当すると考えられます。
・食品や洗剤などの量り売り(容器持参)
・化粧品(化粧品ブランド「SHIRO」など)
「SHIRO」では、以前からパッケージレスでの購入に対し“エシカル割”という割引を実施していましたが、2022年4月からは商品の紙箱やショッパーなどを有料にしました。エシカルブランドとしても有名なシロならではの“限りある森林資源を守る”ための取り組みです。
そのほかにも、ファッションブランド「アーバンリサーチ」では衣服購入時にショッパーの不要を申し出ると、UR CLUB会員なら“GREEN POINT”として10ポイントが付与されます。
②リサイクルできる商品をえらぶ
リサイクルとは、廃棄物や不用品を回収して再資源化することを言います。近年は、リサイクルできる素材を使用した化粧品や衣服なども増えてきましたね。
では具体的にどういったブランドがあるか、一例をご紹介します。
・ナチュラルコスメブランド「LUSH」
・コスメティックブランド「ロクシタン」
LUSHでは、2021年9月から循環型容器返却プログラム“BRING IT BACK”という取り組みが始まっています。この取り組みでは、元々実施されていた「対象の空容器を5個ショップに持ち込むと、フレッシュフェイスマスク1個との交換」のほかに、「対象容器1個につき30円をお会計時に使用」することができるようになりました。
また、ロクシタンの“グリーンプログラム” では、リサイクル対象の空き容器を店舗に持ち込むと、1回の来店でロクシタングリーンポイント(クラブオクシタニアポイント)を50ポイント付与されます。
③マイボトルを持ち歩く
マイバッグ同様、マイボトルの持ち歩きも最近はよく目にするようになりましたね。マイボトルを利用することで、会社などでも好きな飲みものを楽しむことができます。
また、カフェやコーヒーショップでも、マイボトルを持参するとカップ割引きをしてくれるケースも多いです。いくつか例を挙げてみましょう。
・スターバックスコーヒー(20円の割引)
・タリーズコーヒー(30円の割引)
・エクセルシオール カフェ(20円の割引)
ほかにもさまざまなお店でマイボトル・タンブラー割は実施されているので、ぜひ持ち込んでみてくださいね。持ち込む際のルールは各社で異なりますので、そちらも一度ご確認ください。
④量り売りを利用する
最近ではスーパーなどでも見かけるようになりましたね。
量り売りは、「①パッケージレス商品をえらぶ」にも結び付きます。また、個人や各ご家庭で必要な量を必要なだけ購入することができるので、普段食材などを使いきれず捨ててしまうことがある方にはおすすめの買い方です。
量り売りで購入できるものも、現在は多岐に渡っています。
・食品(肉、醤油、ナッツなど)
・シャンプーなどのヘアケア商品
・洗剤(洗濯や食器洗い用など)
ほかにも、はちみつやお菓子、お米なども量り売りしているショップがあります。見た目もわくわくする量り売り、ぜひトライしてみてくださいね。
⑤レンタル・サブスクサービスを利用する
必要なものを自身が所有するのではなく、レンタルやサブスクリプションサービスを利用することで、物の消費を減らすことができます。
例えば、特別なイベント用の服や一時的に必要なスポーツ用品、工具などはレンタルすることで、購入による資源の消費と廃棄物の発生を防ぐことにつながります。
また、本や映画、音楽などのデジタルコンテンツはサブスクリプションサービスを利用することで、物理的な製品を購入する必要がなくなります。
⑥修理・修繕をして長く使う
物を長く使うことはゼロウェイストの基本です。
衣服や家電、家具などが壊れた時に新しいものを購入するのではなく、修理や修繕を行い長く使い続けることが大切です。修理を通じて、物への愛着を持ち、使い捨て文化からの脱却に繋がります。
また、修理を学ぶことで、製品に対する理解が深まり、より責任ある消費ができるようになります。
⑦リサイクルショップ・フリーマーケットを利用する
不要になった物をリサイクルショップに売ることや、フリーマーケットでの売買を通じて、物の寿命を延ばし、新たな所有者に引き継ぐことができます。また、自分が必要とする物を中古で購入することも有効活用に繋がります。
近年は、こうしたリサイクル品や中古品の売買もアプリで簡単におこなうことができるので、利用する側のハードルも下がってきています。商品も数多く取引されているので、気に入るものが見つかるかもしれませんね。
⑧食材の可食部を無駄にしない
食品廃棄は大きな問題です。食材を購入する際は、必要な量だけを買い、食材の可食部をできるだけ無駄にしないように心がけることが重要です。
野菜の皮や茎部分も、うまく利用すれば美味しい料理に生まれ変わります。また、食品の保存方法を学び、賞味期限内に消費する計画を立てることも大切です。
⑨サステナブルな生理用品を使う
女性の場合、生理用品もゼロウェイストの対象になります。
使い捨ての生理用品の代わりに、布ナプキンや月経カップを使用することで、毎月のゴミ量を減らすことができます。
これらの製品は再利用可能なため、長期的に見れば経済的でもあり、環境にも優しい選択となります。
⑩買う前にちょっと考える
「そんなこと?」と思われるかもしれませんが、これが意外と大事です。食品の買い物や日用品、化粧品、衣服の買い物でも、つい衝動的に買ってしまう瞬間ってありませんか?
最近はさまざまな分野でネットショッピングができるようになったので、パソコンやスマートフォン1つで何でも簡単に購入できてしまいます。
そのため私は、特に化粧品や衣服類の購入では、“ちょっと考える=少し時間を置く”ことを大切にしています。例えば、アプリやネットで「ほしい!」と思ったときは、商品をカートに入れたあと1~2日ほど時間を置く。店舗に行くときは、事前に手持ちのモノやクローゼットの写真を撮っていくなど。
こうした、自分がちょっと冷静になれる用意をすることで「本当に必要かどうか」を考えるきっかけになります。よく考えて購入すると喜びもひとしおです!
ゼロウェイストで地球環境と資源にちょっといいこと
ごみの量を減らさなければいけない理由は?
別の記事でもご紹介しましたが、2024年3月28日、環境省の資料「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について」では、2022年(令和4年度)の日本におけるごみの総排出量は4,034万トンであったと公表しました。
前年度比では、-61万トンほど削減するに至りましたが、まだまだ多い状況です。
そして、ごみの量が増えることで発生する大きな問題が「最終処分場」の不足です。「最終処分場」とは、廃棄物を最終的に処分する場所のことです。廃棄物は、リサイクルされたりしない限りは、廃棄物の種類ごとに適切な処理がされた後、この最終処分場に埋められます。
現在はまだ、現状の最終処分場の容量で廃棄物を埋められていますが、前述したようにごみの総排出量はとても多いです。このことから、環境省は「令和5年版 環境・循環社会・生物多様性白書」にて次のように公表しています。
家庭から出る廃棄物の場合、最終処分場に埋められる量は、全国平均であと23.5年分
これはつまり、約23年後には廃棄物を最終処分場に埋められなくなってしまうことを意味します。
できることから廃棄量を減らしていこう
ごみで溢れかえる日本、少し想像しがたいですよね。
こうした現状から、もちろん政府や企業でもさまざまなゼロウェイストの取り組みはおこなわれています。ただ、個人でも少しずつ意識してごみの量を減らしていくことで、総量が減少していったらすばらしいと思います。
ゼロウェイストなライフスタイルは、「少しいいことをしてる!」と気持ちをあげてくれます。
日常の中で少しのいいこと、ぜひ実践してみてください。
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☞もうマイバッグの持ち歩きは当たり前の時代!