企業BCP対策の事例紹介WEBメディアNo.1「リスク対策.com」編集長に聞く!メディア立ち上げ秘話と今後
新建新聞社は「建設メディア事業部」「住生活メディア事業部」「危機管理メディア事業部」「DIY事業部」の4本柱からなる専門メディア企業です。
今回は、本業の“新聞”という枠組みを超えて、日本で唯一の危機管理とBCPの専門メディアである「リスク対策.com」というWEB媒体での取り組みを始められたきっかけや今後の展望について、新建新聞社の専務取締役兼「リスク対策.com」編集長の中澤 幸介さま(上写真右)にお話を伺いました。
新建設新聞社について
新建新聞社は、長野県の公共事業や土木工事などの情報を掲載する74年目の新聞社です。
日本では1990年がバブル崩壊と言われていますが、長野県は1998年に長野オリンピックがあったため、新幹線や高速道路の整備などで98年前までは公共工事も多く、新聞の売上も右肩あがりでした。
その当時は従業員数も100名以上と建築を専門に扱う新聞社としてはかなり優秀で、利益も確保できとても好調でした。しかし、98年の長野オリンピック後は新建新聞自体の売上も減少に転じました。
公共工事や建設の需要が減る中、新しい事業構築も検討していましたが、1995年に阪神淡路大震災が起こった際、先代のオーナーである伊沢 和馬氏が長野県の建設会社を何社も連れて現地の被災地復興支援を積極的におこないました。
私自身は95年以降の入社ですが、その時の伊沢の思いと建築や土木のノウハウを生かして地震に強い家作りを全国に広めたいという思いが重なりました。
そして1995年3月に、今までの新聞とは異なる、全国の家作りや工務店などをターゲットにした「新建ハウジング」を発刊しました。「新建ハウジング」は、お陰様で全国の工務店さんなど家づくりを生業とする会社さんに読んでいただいて売り上げもV字回復しました。
危機管理メディア立ち上げのきっかけ
一方、私としては、会社からの“新しいメディアを立ち上げる”との方針を受け、また、過疎化や災害にも強い町づくりを目指したいという思いがあり、過疎化が進む集落で町おこしをしている事例を掲載する「まちづくり新聞」を始めました。
例えば、四国の徳島では地元のおばあちゃんたちが葉っぱを集めツマにし、全国の料理店で卸しているという事例や、高知県の馬路村ではゆずをドリンクにして販売している事例などがありました。このように、全国の過疎化が進む集落で住民がどのように町おこしをしているかなど、とにかく全国各地を飛びまわり取材を続けました。
100市町村ほど取材繰り返し、2000年~2006年まで発刊していたのですが、なかなか思うように売上部数が伸びず、当時上司だった編集長もやめてしまったことから、まちづくり新聞はいったん辞めることになってしまいました。
ただ、災害も頻発し人口も減っている中で地域活性化や防災という観点から、災害があったらどのように町や人を守っていくのかが重要であることは間違いないため、危機管理にテーマを絞ったメディアを立ち上げることにしました。
今までにない情報を発信!徹底した取材で企業のあらゆるBCP対策を特集
当時、政府がBCP(事業継続計画)のガイドラインを策定し、企業に対してBCPに取り組むよう呼び掛けはじめていました。BCPとは、災害時に自社にとって重要な事業だけは早期に再開させる取り組みです。これなら日本の防災を変えられるのではないかと強く感じました。
なぜなら、企業も地域も、成長をするために次々に新しい活動をする中で、その守り手である社員や、あるいは地域の住民は、少子高齢化により年々少なくなているからです。従来型のようにすべてを守る防災は限界を迎えていると感じたのです。
また、阪神淡路大震災、東日本大震災、伊勢湾台風など、猪年にはよく災害が起こるというジンクスを知っていたのもあり、2007年に創刊することを決めました。そして、2007年5月にBCPの専門誌として「リスク対策.com」を発刊しました。
発刊直後のタイミングで起こったのが2007年7月の新潟県中越沖地震で、「リケン」という自動車の部品メーカーが被災しました。すると、その部品を入れている部品メーカーが止まり、最終的には車を製造する工場自体が止まってしまいました。
その部品はピストンリングという、車のエンジンにつける本当に小さい部品なのですが、結果として全自動車業界に影響を与えてしまうこととなったのです。
このような事態が発生したこともあり、BCPは社会的な注目を浴びるようになりました。日経新聞でもBCPが1面の記事に載るなど、メディアとしてのスタートダッシュも大変うまくいきました。
ただ、翌年は災害が減り、2008年は一変して購読や広告による収入は厳しくなりました。当時BCPという言葉は今ほど知られていませんでしたし、取材に行っても邪険に扱われたりもしました。しかし2009年になると、新型インフルエンザの大流行が転機となり、“やはりBCPが大事だ”ということが認識され、息を吹き返しました。
災害を喜ぶわけではありませんが、災害の有無によって売り上げが大きく変わってしまうことは事実で、事業収入が伸びないと、災害を待ち望んでいるかのように考えてしまっているのではないかと自己嫌悪に陥り、災害が起きるたびに自責の念に苛まれるようになりました。
そんなこともあり、災害だけでなく、もっと別のリスクにも備えられるようなメディアにしていくことが大切だと感じました。リスク対策といっても、感染症・労働災害や不祥事・風評、地域でのレジリエンス強化など、その内容は多岐にわたります。それに対応できるよう、あらゆる企業に取材し情報を提供するため、雑誌という形からさらに多くの情報を掲載できるWebメディア「リスク対策.com」に切り替えました。今では認知度も高まり、企業にも必要とされるWEB情報誌として知られるようになりました。
現在「リスク対策.com」は月間20~30万ほどのアクセス数があり、多くの企業のリスク対策部門の方に読んでいただいています。特に、他社の事例が自社のBCP対策や情報漏洩対策をする際に参考になると好評を得られています。
今後の「リスク対策.com」について
「リスク対策.com」は、ネットの“.com(ドットコム)”ではなく“企業(Company)”と“社会(Community)”の“com”を表しています。こうした企業を守る人、組織を守る人のコミュニティをつくっていくというのが私たちの目標です。
よく「“.com”なんて新聞社の方がWEBメディアみたいなことを始められましたね」といわれるのですが、そうではなく、企業や社会を守るために必要な危機管理とBCPの情報をお届けする、という思いを込めた日本で唯一の専門Webメディアが「リスク対策.com」です。
特に私自身については「この人を紹介してほしい」「こうしたBCP対策をしたいが、自分たちだけではノウハウがないので他社を紹介してほしい」などいろいろな企業同士を、業界を超えて繋いでいくということをもっとやっていければと思います。
また「リスク対策.com」としては、メディアとしてだけでなく実際に会社や個人をつないでいき、新しいビジネスや危機管理の体制を構築できるようなことをどんどんおこなっていきたいと思います。
現在、「リスク対策.com」では、実際に読者企業同士のサービスや情報を交換できるセミナーなどもおこなっています。7月26日に開催予定の「危機管理ビジネス研究会」では以下のテーマで実施します。最近はVPPやオフグリットなども話題ですし、興味がある事業者さんも多いと思います。ぜひご参加ください。
【7月26日開催】危機管理ビジネス研究会(WEBミーティング)
テーマ:「電気を貯めて使う!世界が注目するテスラビジネス」
EV領域で世界トップクラスの大企業となったテスラ社が今、電力市場に乗り出しています。
家庭用蓄電池「Powerwall(パワーウォ―ル)」の事業を拡大し、再生可能エネルギーである太陽光発電と蓄電池を利用してバーチャルプラント(VPP)や災害時のバックアップ電源として、企業や店舗に設置されるケースが増えています。
今回の勉強会では、「Powerwall」の認定販売施工会社である辻・本郷スマートアセット株式会社に製品の魅力や今後の展望をお聞きします。