【増える中古太陽光発電所売買】売却時に気をつけるべき点と事例の紹介
【中古太陽光発電所売買・売却のポイント】テクニカル・デューデリジェンス(査定)の必要性
2012年に始まった固定価格買取制度(FIT制度)から10年近く経ち、現在では野立ての中古太陽光発電所を売りたい投資家の方や、コロナウィルスの影響で手放して本業の資金として運用したい投資家の方などが増えています。
中古発電所は、すでにO&Mや発電レポートなどの「発電所の履歴」があり、今後の売電予測もしやすい一方で、2012年当初に急遽進んだ発電所の建設ラッシュで、技術のあまりない施工会社による建設や、近年多発している台風などの自然災害を想定していないような発電所もあり、トラブルも多発しています。
当社のメガソーラー開発部門の担当者は、適切な売買を成立させるためには次のようなことが重要だと話します。
「発電所を売りたいという人はもちろん高く売りたい、ただ買いたい人は安く買いたい。これは当たり前の心情ですが、この折り合いをどうつけるかが重要になってきます。その際、発電所の価値を判断するために、銀行でよく使われる、デューデリジェンス(査定)が必要です」
当社では、主に技術的な査定「テクニカル・デューデリジェンス(TDD)」をおこない、発電所の評価考査をしています。
これは、ただ単に電気的な検査のみならず、土木、周辺環境、施工品質などの多岐にわたる検査がおこなわれるものです。
そこで今回は、発電所の事例をいくつかご紹介させていただきます。ぜひご参考ください。
【中古太陽光発電所売買・売却のポイント】TDD事例の紹介と解説
それでは、実際にTDD実施時にあったさまざまな注意点をいくつか取り上げていきますので、発電所をお持ちの方はぜひご覧ください。
[目視検査編]よくある落とし穴は目視検査で発見するケースも
発電開始から起こるトラブル:太陽光発電所の発電開始直後に発火!
ひとつは極端な例ですが、運転を開始した途端に監視システム付近から出火したという事故がありました。
これは原因が明確で、監視システム内の配線ミスによる発火でした。このような設計施工側の基礎的な電気知識不足による発火や不良も少なくはないです。
この例では発電開始直後に問題が発覚しましたが、発電が開始してから数年経ったのちに、配線ミスや電気工事不良による不具合がおこり、売電を妨げるケースもあります。
海岸から遠くても影響がある場合も:塩害による不具合
ほかにも、九州のとある太陽光発電所では、目視検査中をおこなったところ、機器に塩害と思しき腐食が確認された事例がありました。
海岸線から決して近くはない場所でしたが、周囲環境や土壌による酸、アルカリ、塩分、水分、埃などが原因で機器に何らかの影響を与え、寿命も短くなる場合があります。
そういう場所では、完全密閉型の機器でもない限り、徐々にではありますが少なからず影響を受けますので、トラブルを未然に防ぐためにも定期点検、メンテナンスが重要と考えられます。
[複合チェック編]複合的な要因で起こるトラブルを発見・是正する
見た目は大事。綺麗にできている発電所は施工が丁寧といえます。
ただし、細部まで確認していくと粗が発見される場合もあります。その見極めには、やはり経験値が必要になってくるでしょう。
土木不良による地割れ、基礎架台トラブル
東北地方の傾斜地に建設されたとある太陽光発電所では、太陽電池モジュール(パネル)を設置した架台が雪の重みで傾いてしまった事例がありました。
それも、場内のあちこちではなく、西側に樹木がある一部分だけでした。ということは、パネルに積もった雪が日光で溶けず、荷重がかかり続けて起こった現象と考えられました。
また、この現場はスクリュー杭の基礎でしたが、スクリュー杭そのものが倒れてしまっている状態でした。これは、雪の重さに加え地盤の強度不足、またスクリュー杭の打ち込み深さの不足など、複合的な要因があったと思われます。
この場合、地盤補強を行うことは現実的に困難と判断し、パネルをまとめて場内の別の場所に移設することを提案しました。また、同時に架台の補強も行いました。
このケースから、「テクニカル・デューデリジェンス」の重要性を何点か挙げることができます。
1)建設地の地勢、傾斜の具合、周辺状況の観察
2)積雪地域では雪が落ちやすいパネル角度で施工されているか
3)地盤強度は担保されているか(地盤調査データを参照する)
4)架台の構造・強度は建設地に適合したものか
など、現場状況やデータ分析において、より専門的な知見が必要なのです。
その他:注意しておきたいポイントと事例
近年多発するさまざまな自然災害で、思わぬトラブルが発生する可能性は非常に高くなっています。
台風でフェンスが倒れたり、発電所内に周辺樹木が倒れてしまい、発電を妨げるケースも多発しています。
このような将来的に起こり得る危険性も加味し、「テクニカル・デューデリジェンス」では以下のような点にも注意を払うことが求められます。
1)5年先、10年先まで安定した発電量が見込めるか?
→夏季、冬季の日照状況、周辺環境の変化、樹木の成長について予測する
2)トラブルの予兆はないか?
→設備の耐久性、保守管理状況、健全性の確認する
3)地面は安定しているか?
→風雨による浸食、雨水処理、安全設備を確認する
4)防犯対策はされているか?
→発電所のケーブルなどを狙った盗難が全国各地で多発
竣工検査や日々のメンテナンスでわかることも多くありますが、TDDでも同様に5年先、10年先まで安定した発電量が見込めるかといった視点で考査をおこないます。
【中古太陽光発電所売買・売却のポイント】補修改修(リパワリング)からの発電所売買
その太陽光発電所が現在正常に稼働しているか?
そしてこれからもトラブルなく稼働し続けるか?
これを見極めるためには、ただ単に毎月の売電金額だけを見ていればいいということにはなりません。売電金額(発電量)は天候により大きく左右されますから、その値だけでは発電所の実力は測ることができません。
セカンダリー案件の場合、発電量の実績があるはずなので、まずはそのデータを確認しましょう。
データが売電金額(月次、年間合計)しかなければ、それをFIT単価(税込み)で割ることで発電量(kWh)がわかります。そこからPR値(Performance Ratio)を算出します。
これは、現時点での太陽光発電所の健全性を示す一つの指標になります。概ね80%以上なら合格といえるでしょう。
当社のメガソーラー部門担当者によると、TDDと補修改修(リパワリング)の考え方は次のとおり。
「総合的な点検(TDD)をすることは、発電所の健康診断をするようなもの。本来の実力が発揮できていない発電所であれば、コストとの兼ね合いを見て、リパワリングをおこなうことにより本来の力を発揮させ、収益面を向上させることができます」
発電所の本当の価値を知るためには、適切で総合的なTDDをおこなう必要があり、今の発電量や売電金額だけで判断して売却したり購入したりすると、あとで投資家の方や近隣住民とのトラブルに見舞われる危険性があります。
セカンダリー太陽光発電所の売買する際には、すでに中古発電所売買の実績を多数持つ当社のような企業にお任せいただくことが望ましいです。
☞投資向け太陽光発電所の購入を検討するときに気になるリスクポイント