中古太陽光発電所(セカンダリー)市場の現状とポイント
中古の太陽光発電所ってなに?2021年度の市場規模は?
太陽光の中古(セカンダリー)とは、すでに稼動済みで、実績が出ている発電所のことを指します。
発電量に対して、キャッシュイン(売電)、キャッシュアウト(O&Mコストなど)の実績があることがメリットして挙げられます。
コロナの影響もあると思いますが、「本業の資金を確保したい」、「現金化したい」という発電所オーナーの方が増えており、売りに出される中古発電所も増えてきているように感じています。
矢野経済研究所の「2020年度版太陽光発電設備運用・セカンダリー現状と将来展望」によると、以下のことがわかります。
・2019年度の太陽光発電所セカンダリー市場の市場規模(出力ベース)は730MW。
・稼働中の太陽光発電所の取引が成約にいたる価格は、出力1MW当たり概ね3億円~5億円。2019年度の金額ベースの市場規模は、2,920億円と推計。
・2021年度の中古発電所の規模は、1,210MWと予想される。
このように、データからは年々中古発電所(セカンダリー)売買が増えると予想されています。
まだまだ確立していない中古発電所のデューデリジェンス(評価・査定)
今市場に売りに出ている物件の中で、特に低圧発電所に関しては、テクニカルな部分できちんと作られていないものやJIS規格に則っていないもの、造成工事などの土地がきちんとしてないものが比較的多いと感じています。
そのため、転売をする際に必要なものとして、売り手側にトラッキングレコード(過去の運用記録)を必ず請求しましょう。
また、遠隔監視装置のID・PWをもらい、正常に運転できているかなどのテクニカルデューデリジェンス(評価・査定)と、法令を順守して作っているかなど一般的な法令関係のデューデリジェンスをおこないましょう。
デューデリジェンスからみた中古太陽光発電所の現状
中古発電所(セカンダリー)のデューデリジェンス(評価・査定)をする中で、下記のような問題を抱えている発電所もあります。
・基礎工事や架台、モジュールなどの工事不良
・JIS C 8955に準拠していない
・各種法令に順守していない
・適切なO&Mがされていない
O&Mで言えば、例えば草刈などを定期的におこなっておらず、草がモジュールにかかり、発電を妨げている太陽光発電所があります。
他にも、モジュールを定期的に目視検査していないために、バックシートが焼け焦げるなどしている太陽光発電所、土地が悪く地盤沈下して架台が崩れかかった太陽光発電所など。
法令に関しても、市や県の条例に従っていない太陽光発電所もあります。
最悪の場合は撤去しなければならないケースもあり、事前のデューデリジェンス(評価・査定)をきちんとおこなわないと、転売先のオーナーに多大な迷惑がかかってしまう可能性があります。
中古発電所(セカンダリー)のテクニカルデューデリジェンス(TDD)の費用もさることながら、リパワリングについても、費用をかけてまで直した方が良いかどうかの判断は難しいです。
「リパワリング」とは、落ちてしまった発電能力を100%、またはそれに近い発電能力に戻すことを指します。
リパワリングには、システム構成するもの自体、例えばモジュールやケーブル、パワーコンディショナを変更し、新しい部材に入れ替えるなどの工事を伴います。
ただし、リパワリング費用をかけたら本当に費用を上回る利益が確保できるのか?その判断が難しいところです。
失敗しないために!今後の中古太陽光発電所の評価に求められるもの
こういった問題を解決する方法として、ひとつは国や公共機関などがガイドラインを策定し、それを運用できる技術者や会社にお墨付きを与えることがあげられます。
一般社団法人 太陽光発電協会(JEPA)では「太陽光発電事業の評価ガイド」を公表していますが、評価ガイドとともに、実際きちんと評価ができる会社を登録制度などにして、公表していく必要があると思います。
一般社団法人 電気安全環境研究(JET)では、JET保守点検技術認定制度のもと、ガイドラインの策定をおこない、会社やそこに紐づく技術者を登録制にしています。
ガイドラインに基づいたO&Mを実施した場合は、認証することもおこなっています。
また、海外では発電所の認証はあたり前になっています。有名なのは、テュフ ラインランド(TUV)の発電所認証です。
TUVの発電所認証があれば、転売時にもこの認証をつけて転売することができるので、銀行などでの融資を受けやすくなります。価格も高値で売ることができます。
このように、今後は日本でも客観的に判断でき、発電量を中正・公正に判断できる機関の認証を取得することが必要だと思います。
海外では発電所運開前に第三者機関の認証をもらう当たり前ですが、日本ではまだコストがかさむという理由でデューデリジェンス(評価・査定)をしないことが多いです。
しかしながら、運用開始前や転売前には、必ずデューデリジェンスを入れることをおすすめします。そして、今後は「○×」だけの評価ではなく、細かく点数化し、だれもが評価基準としてわかる形にしていくことが必要だと思います。
太陽光発電所を適正価格で売却するために
新規案件は、FITの下落や土地の仕入れ問題からどんどんなくなってきています。中古発電所(セカンダリー)においては、リパワリングや評価が重要になってきます。
転売する際にきちんと発電所を売ることができるように、現在はまだ転売を考えていない方も、今の段階で、デューデリジェンスをしっかりおこない、O&Mを入れて発電量を維持しないと市場から見向きもされなくなる可能性があります。
業界としては、評価基準を定めることと、その評価基準に則って評価できる会社の登録などをおこなっていく必要があります。
いかがでしたでしょうか?
ぜひこれらの点を踏まえてセカンダリーをご検討ください。