低圧太陽光発電所に新たな義務「使用前自己確認」とは?【新制度の概要と現行制度との違い】

太陽光発電

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50kW未満の低圧太陽光発電所は、これまで規制が自主規制だったために、事故やメンテナンス不良のケースが増えていました。

このような問題に対処するため、経済産業省は段階的に低圧発電設備に対する規制強化と注意喚起をおこなっていました。そして、2023年3月20日からは新たに、低圧太陽光発電所の使用前自己確認の義務化が施行されました。

今回は、この「低圧太陽光発電所の使用前自己確認義務化」について、簡単に解説いたします。

使用前自己確認とは

使用前自己確認とは、太陽光発電設備を設置したのち実際に稼働させる前におこなう作業のことで、国が定めた安全確認作業の一環です。経済産業省が定めた一定規模の発電所を新設する場合や、既設発電所の設備を変更する場合などに実施しなければなりません。

太陽光発電設備が安全に稼働するか、万が一の時に停止するかどうかの確認と、架台の状態や地盤などの構造関連の確認が主な検査項目とされており、これらの試験・検査の結果は経済産業省に提出する必要があります。

使用前自己確認の義務化範囲拡大による注意点

電気事業法によって、2023年3月20日より「10kW以上50kW未満」の太陽光発電所の「使用前自己確認」が義務付けられました。
☞詳しくは:経済産業省「小規模発電設備等保安力向上総合支援事業」

経済産業省_小規模発電設備等保安力向上総合支援事業「新制度について」新制度対応範囲図

(出典:経済産業省_小規模発電設備等保安力向上総合支援事業「新制度について」新制度対応範囲図)

これまで「低圧」として、保安や安全という観点からみると少し緩かった10~50kw未満の設備が、新たに「小規模事業用電気工作物」と定義されました。これにより、10kw以上のすべての事業用設備で「使用前自己確認」が必要となりました。

この法律は、施行前に発電を開始した低圧太陽光発電所のFIT案件は適応外となっています。

しかし今回の改定で、太陽光発電所の増設やパネルの増設などといった変更をおこなう際、場合によっては「使用前自己確認制度」の申請が必要となります。そのため、今後パネルの増設やリパリング工事などを予定している方はご注意ください。

現行法と新制度(2023年3月20日以降)の概要と違い

現行法

●現行の発電設備の規制体系
電気事業法で定められています。「電気工作物の工事、維持及び運用を規制」とあるように、公共の安全を確保し、及び環境の保全を目的として実施されています。
また、太陽光発電設備は電気工作物であるという位置づけのもとに、一般用電気工作物(小出力設備)と事業用電気工作物(自家用電気工作物)に分類されています。

●現行法(2023年3月20日まで)
・50kW未満⇒一般用電気工作物
・50kW以上⇒事業用電気工作物
(50kW以上は使用前自己確認や保安規定の届け出、主任技術者の専任が必要)

新制度

●新制度の背景
FIT制度の開始以降、急速に増加し設置形態が多様化(住宅の屋根上だけではなく野立てや水上など)してきた背景を受け、公衆災害リスクが増加している実態に則し、再エネ発電設備の適切な保安を確保するため、新制度下で運用することが目的です。

●新制度(2023年3月20日から施行)
・太陽光は10kW以上50kW未満の設備
・10kWかつ出力5%以上の太陽電池パネルのみの取替えで合計出力が2,000kW未満の設備
・20%以上の電圧の変更で合計出力が10kW以上2,000kW未満の設備
⇒事業用電気工作物となる(小規模事業用電気工作物)
※技術基準適合維持義務・基礎情報の届出・使用前自己確認結果の届出が義務化
※10kW未満は除外(従前どおり、一般用電気工作物となる)

低圧太陽光発電所_使用前自己確認対象

また、施行日である2023年3月20日以降に使用を開始する場合は、使用前自己確認及び基礎情報の届け出が必要になります。一方で、FIT認定を受けており運転を開始している設備は、使用前自己確認及び基礎情報の届けは不要です。

小規模事業用電気工作物が新たに負う義務については、以下の通りです。

・技術基準適合維持
・基礎情報の届出
・使用前自己確認の結果の届出

使用前自己確認の詳細解説

届出書類について

新たに義務付けられた提出書類「基礎情報届出書」と「使用前自己確認結果届出書」の2種類について、詳しく解説します。

①基礎情報届出書
基礎情報の届出は、電気主任技術者の選任や保安規定作成の代替の位置づけとして考えられ、以下2点が必要となります。

(1)設置者情報、設備情報
(2)保安体制に係る情報

また、既設の設備(FIT認定を受けている設備は除く)でも、施行から6カ月以内までに提出が必要となります。加えて、基礎情報の項目に変更があった場合や小規模事業用電気工作物に該当しなくなった場合は、FIT認定の有無に関係なく届出書の提出が求められます。

②使用前自己確認結果届出書
使用前自己確認を行った後で提出する結果届出書です。発電所の概要や配置などを示した書類などの提出が求められます。
基本的に既設設備は対象外になりますが、一部の変更工事をおこなった場合に届出書の提出が求められます。

<使用前自己確認の範囲の拡大も>
現在は、500kW~2,000kW未満が対象でしたが、今後は10kW~2,000kWまで範囲が拡大されます。
施行日前の設備に関しては、新たに使用前自己確認を行う必要はないですが、新たに工事を行った場合は、条件により使用前自己確認を行う必要があります。(使用前自己確認を行う箇所は、新規で対応した箇所のみ)
O&M業者へ使用前自己確認の依頼することはできますが、最終的に届け出を行うのは、発電事業者となるため、注意が必要です。加えて、今後FIT申請を行う場合、基礎情報も申請する必要があります。

使用前自己確認の電気試験

電気試験は、太陽光発電を稼働させる際に事故なく安全に稼働するかどうかを電気的な観点から判断する試験になります。また、トラブルが発生した際、正常に発電所が停止するかどうかを判断する試験でもあります。

太陽電池発電設備の使用前自己確認の方法については下記の項目について申請が必要です。

<10kW~50kW未満の場合>
1.外観検査
⇒接地の確認、過電流遮断器、地絡遮断器、図面通り施工されているか
2.絶縁抵抗測定
3.絶縁耐力試験
⇒JISC8918,8939取得済みのモジュールの場合は行う必要なし
4.保護装置試験
5.制御電源喪失試験
6.負荷遮断試験
7.負荷試験(出力試験)
8.その他の各種試験及び確認
(1)接地抵抗測定
(2)遮断器関係試験
(3)総合インターロック試験

<50kW~2,000kW未満の場合>
1.外観検査
2.接地抵抗測定
3.絶縁抵抗測定
4.絶縁耐力試験
5.保護装置試験
6.遮断器関係試験
7.総合インターロック試験
8.制御電源喪失試験
9.負荷遮断試験
10.遠隔監視制御試験
11.負荷試験(出力試験)

構造関連の確認

構造関連の確認では、主に発電所を建設する「地盤の地質調査」を指します。架台などの構造物や地盤の状態を検査し、発電所を建設できる地盤かどうか、使用する部材の強度に問題はないかなどを確認します。

以下のような各種荷重に対する安定した構造であることが求められます。

「支持物の許容応力度設計」
「安定した品質、かつ腐食・腐朽しにく材料または防食措置を施した材料」
「部材間の存在応力を確実に伝達できる接合部」
「沈下、浮上がり、水平移動を生じない基礎」
「高さ9Mを超える設備の建築基準関連法令への適合」
「土砂の流出、地盤崩壊の防止」

また、設計荷重の確認として、自重、風圧荷重、積雪荷重、地震荷重その他当該支持物の設置環境下において想定される各種荷重が、日本産業企画JISC8955(2017)「太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法」などに基づき設定されていることが求められます。

基礎情報・使用前自己確認の届出方法

現在は、オンライン「保安ネット」で申請ができるようになりました。
オンライン申請には事前にgBizIDの取得が必要となりますので、gBizIDへ登録を行いましょう。

➡gBizIDの登録方法
https://gbiz-id.go.jp/top/

申請は、設置者(施主)が申請する必要があります。
また、3月20日以降、系統連系は基礎情報の届出・使用前自己確認の受理後となります。

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いかがでしたでしょうか?

なんだか申請が増えて大変になった印象ですが、これも再生可能エネルギーを安全で長期的に利用するために必要なことになります。

低圧太陽光発電所を保有する方や、これから保有を検討している方はぜひ一度ご確認くださいね。

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