自家消費型太陽光発電の点検すべきポイントとは?

太陽光発電

太陽光発電点検_IRカメラ

今、自家消費型太陽光発電が増えているワケ

日本では、2030年までに温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減すること、そして2050年には完全なカーボンニュートラルを実現することを目標に定めています。

しかし、こうした気候変動対策としての脱炭素とは別に、ロシアのウクライナ侵略に端を発するエネルギー危機は、化石燃料を輸入している世界中の国にとって奇しくもエネルギー政策を見直すきっかけとなりました。

国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、「気候変動ではなく、エネルギーの安全保障が各国をクリーンエネルギーにシフトさせている」と分析しています。事実、自国産のエネルギーとして再エネは、自国領内に吹く風や降り注ぐ太陽光で電気をつくることができるため、各国は年々再エネ比率を上げており、結果的にCO2排出量が抑えられているようです。

屋根上太陽光発電設備

2012年からFIT法を始めた日本では、2022年3月時点で国内の太陽光発電認定件数は2,449,200件まで増加し、導入量(運転開始量)は計60,536MWとなりました。つまり約10年間で60GWの導入を達成しています。

2022年4月からは「第6次エネルギー基本計画」および「地球温暖化対策計画」の下で、「エネルギー供給強靭化法」並びに「改正地球温暖化対策推進法」が施行され、2030年までに新たに導入すべき60GWの導入拡大を進めています。

そして今、太陽光発電の市場で規模を拡大しているのが「自家消費型太陽光発電」です。

富士経済の「2021年版 太陽電池関連技術・市場の現状と将来展望」に記載されている調査結果によると、2021年時点の国内における太陽光発電システムの導入は、工場屋根や福祉施設、公共施設屋根への自家消費型太陽光発電が、2020比で金額ベース114%、出力ベース121%と増えています。
また、市場での自家消費比率は20.3%となっており、2035年には66.5%になると予測されています。

そこで今回は、日本でも普及が急がれている自家消費型太陽光発電システムの点検メンテナンス(O&M)について詳しくご紹介します。

自家消費型太陽光発電の点検種類とは

自家消費型太陽光発電の設置場所としては、商業施設や医療・福祉・公共施設、あるいは物流倉庫などの屋上に設置されるケースが多く、野立て太陽光発電のように草刈りは不要などの特徴があります。自家消費型太陽光発電設備でおこなうべき点検の種類としては、以下のような内容があります。

太陽光発電の点検「絶縁抵抗測定」

絶縁抵抗測定をする目的は、絶縁不良(電気漏れ)が発生していないかどうかの確認です。
絶縁抵抗が低くなると、漏電が発生します。漏電してしまった場合、感電につながり、火災の発生を招く可能性があります。

太陽光発電の点検「接地抵抗測定」

接触可能金属部が確実に保護接地されているか確認する試験になります。
接地抵抗が高いと発生する電圧が高くなり、金属製外箱に手を触れた人が電撃を受ける(感電する)ことがあります。

太陽光発電の点検「IVカーブトレーサー」

IVカーブ(電圧電流特性曲線)測定は、太陽電池ストリングおよびモジュールの特性変化の把握に有効です。
このカーブの特性を計測し発電能力を把握するとともに、複数ストリングのカーブと相対比較することで、異常ストリングの判定もおこないます。

太陽光発電点検_IVカーブ

太陽光発電の点検「IRカメラ機器による発熱異常測定」

IR(サーモグラフィック)カメラにて発熱異常を起こしているパネルやパワーコンディショナ・蓄電池内で発熱異常を起こしている箇所がないか検査をおこないます。
ホットスポットやバイパスダイオードが働いているセルなどの異常は、発熱を引き起こすことが多いです。そのため、他の箇所より温度上昇が見受けられるので、IRカメラによるチェックが有効です。

太陽光発電点検_IRカメラ②

太陽光発電の点検「目視点検とボルトの増し締めの確認」

本チェックでは、以下のようなことを実施します。
・構内、及び点検やメンテナンス用の通路はあるかどうか
・アレイ間の距離、モジュールの数、接続箱の数、パワーコンディショナの数、ケーブルとボルトの増し締めの状態の確認
・架台、パネル、DCケーブルの状態の確認
・接続箱、パワーコンディショナ、蓄電池の状態の確認

太陽光発電の点検「パネル洗浄」

パネル洗浄は定期点検などに含めていないケースもありますが、自家消費型太陽光発電の場合は点検することをおすすめします。
屋根上設置では、屋根面に対してなりで設置しているケースも多く、パネル角度がない(0度)設置の場合は、雨などでほこりが落ちにくいことがあります。パネルの汚れが目立ってきた際には、パネル洗浄の提案をおこない、洗浄します。

再エネの地産地消に「自家消費型太陽光発電」

今後、ますます普及が進められる自家消費型太陽光発電では、その発電量と発電効率を維持し、安定的に再エネのエネルギーを生むためにも、点検メンテナンスは欠かせません。

これまで国内に導入された60GWの太陽光発電システムは、大規模な野立て太陽光発電所が主でした。
しかし、これから導入される60GW分の再生可能エネルギーは、より都市部に近く、再エネの電気が消費される場所に近い、“地産消費できる再エネの電気が自家消費型太陽光発電”になります。

これまでの60GWとこれから導入する60GW。トータル120GWの再生可能エネルギーの電気を基幹電源として運用していくためには、保守・管理を定期的におこなっていく必要があります。

自家消費型太陽光発電システムの導入や、O&Mに関してご相談いただけることがございましたら、ぜひお問い合わせください。

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