国内でも進む「路面太陽光発電」!海外ではすでにさまざまな実証実験も
住宅や工場の屋根に太陽光パネルを設置する方法が主流となっている太陽光発電設備ですが、近年は太陽光パネルの設置場所を路面にするという大胆な取組みも始まっています。
今回は、そんな「路面太陽光発電」についてご紹介します。ぜひ一度ご覧ください。
路面太陽光発電とは
路面太陽光発電とは、既存の駐車場・歩道・自転車専用道路などに取り付けることができる太陽光発電設備のことを指します。
表面を特殊な樹脂でコーティングし路面に貼り付けるため、自転車や歩行者がその上を通行することも可能です。また、設置場所が路面になので、台風や暴風雨などに強い点も特徴と言えます。
発電した電力は、公共の電力として使用することや蓄電池に充電することも可能です。そのため、発電しない時間帯に蓄電池にためた電力を使用したり、災害時の非常用電源としての活用にも期待できます。
日本国内:杉並区役所の取り組み
杉並区は2023年12月に、杉並区役所前広場の路面に路面太陽光パネル「Wattway(ワットウェイ)」の試験導入をおこないました。
このことは、「区内では、太陽光発電設備を設置できる箇所が限られているため、再生可能エネルギーの一層の普及を目指し、空間の有効活用の可能性について、発電量等をもとに検証していく」と杉並区のホームページでも発表されています。
試験導入として設置された太陽光パネルの枚数は6枚で、毎月の発電量は杉並区のホームページに公表されており、確認することができます。
計測期間 | 発電量 |
2023年12月20日~12月31日 | 3,520Wh (1日平均 293Wh) |
2024年1月1日~1月31日 | 11,850Wh (1日平均 382Wh) |
2024年2月1日~2月29日 | 18,210Wh (1日平均 628Wh) |
2024年3月1日~3月31日 | 23,090Wh (1日平均 745Wh) |
2024年4月1日~4月30日 | 30,360Wh (1日平均 1,012Wh) |
試験導入期間は、季節の変化を踏まえて1年間程度を予定していて、検証の結果、発電量が見込めれば区内の公園などにも導入を検討するとのことです。
世界初の路面舗装型太陽光メーカー「Wattwey(ワットウェイ)」
Wattwey(ワットウェイ)の太陽光パネル舗装材は、驚くほどの薄さ(厚さ6mm)と耐久性を実現した、新しいタイプの太陽エネルギー変換装置です。
大規模な土木工事を必要とせずに、既存の駐車場・歩道・自転車専用道路などに接着することが可能なため、農地を減少させたり自然景観を破壊したりせずに、既存の敷地を活用して発電することができます。
仕組みと特徴
この太陽光パネル舗装材は、埋め込まれた結晶シリコンの太陽電池セルで太陽エネルギーを電気に変換します。
セルは非常に傷つきやすいので、太陽光が届くために十分な透過性と、車両通行の荷重に対する耐久性を備えた、多層構造の合成樹脂とポリマー製の層で保護されています。
また、車両のタイヤが接する路面は、一般的な道路舗装と同等のグリップ力を保持する処理が施されています。
海外での展開
2015年10月に、パリで開かれたCOP21(気候変動枠組条約締結国会議)会期中に報道発表されてから、Wattwey(ワットウェイ)の太陽光パネル舗装材はフランス国内外の約50か所の現場で運用実験がおこなわれました。現在は、実験結果を踏まえ改良が進められています。
また、大型車の走行にも耐えることができると言われており、海外ではすでにアメリカやカナダ、ヨーロッパなど約10カ国の駐車場や歩道などにも設置されています。
太陽光発電システムのさまざまな発展!海外での取り組み事例
オランダ:ソーラーロードの実証実験
2014年には、オランダのアムステルダムに世界初の太陽光パネルを設置した自転車専用の道路、通称「ソーラーロード」が実証実験のために建設されました。
全長約70メートルあるソーラーロードは、自転車だけではなく歩行者が歩いても滑らないように作られています。オランダは国土が日本の9%ほどと小さな国ですが、現在太陽光発電システムの普及が急速に拡大しています。
☞参考:東洋経済ONLINE「世界初!発電する道路」のインパクト」
アメリカ:ソーラーシティ実現
こちらは路面太陽光発電ではないですが、アメリカ フロリダ州南東部では町の消費電力を100%太陽光発電でまかなう「バブコック・ランチ(Babcock Ranch)」という町が存在しています。この町は、通称「太陽のシティ」とも呼ばれています。
東京ドーム1558個分の広大な土地に、パネル枚数約33万枚のメガソーラーを設置し、全ての消費電力を発電した電力でまかなっていており、住宅などへの電力供給をおこなっています。大型の蓄電池も設置されていて、1MWの電力を蓄え、4時間の放電が可能となっているようです。
フロリダ州はハリケーンが多い地域とも言われており、2022年9月28日におこったハリケーン「イアン」では、300万人以上が被災したと国連常駐調整官事務所が発表しています。
しかし、フロリダ州全域で約260万世帯が大規模な停電被害にもあった中、バブコック・ランチは太陽光発電と蓄電池があったことで停電しなかったといいます。また、電線網も地中に埋められており、ハリケーンの影響を受けることがなかったとのことです。
☞参考:日経BP「“100%太陽光“で賄う大規模な分譲住宅地 太陽のシティ」
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別の記事にてご紹介させていただきましたが、東京都では2030年までに都内の温室効果ガスを50%削減する「カーボンハーフ」の実現に向け、太陽光発電の設置義務化が進んでいます。
通常の住宅や工場の屋根に設置する太陽光発電だけでなく、都市や町の開発時から設置検討をすることで、フロリダ州のような災害に強い街づくりが可能になります。
路面太陽光発電であれば歩道などに設置することができるため、従来の設置方法では導入が難しいような地域でも普及拡大が見込めます。実用化が進めば、東京都ではよりカーボンハーフの目標へ近づくことができるかもしれませんね。
今後の発展に期待が高まる商品なので、引き続き情報を追っていきましょう!
☞東京都の太陽光発電義務化をもっと詳しく
☞住宅の複雑な屋根にも今なら設置できる?