未来の子どもたちに地球を残したい!自家発電のクリーンな電気でオフグリッドを目指す会社 |大里綜合管理さまの事例
東日本大震災をきっかけに、原発の電気をなるべく使わず、地球温暖化対策としてクリーンな電気を自家発電し、未来の子どもたちのために地球を残していきたい。
そんな考えのもと、太陽光発電設備やテスラの蓄電池「パワーウォール」を導入し、実質“オフグリッド”に挑戦する大里綜合管理株式会社さまにお話を伺いました。
<話者>
大里綜合管理株式会社
代表取締役会長 野老 真理子(ところ まりこ)さま(上写真左から3人目)
代表取締役社長 野老 憲一(ところ けんいち)さま(上写真左から2人目)
大里綜合管理株式会社とは
当社は、不動産や不動産管理、土地管理などを生業としており、 30名程度の従業員を抱えています。創業は来年で50年になります。
30年前に住宅用ショールームとして利用していた施設をリフォームし、現在1Fは事務所やギャラリーとして使用しています。2Fは、日替わりでシェフが変わるレストランと多目的ホールです。
使用電力量削減を目指したきっかけは東日本大震災
なるべく多くの住宅や事務所をオフグリッドしていきたいと思ったのは、東日本大震災がきっかけです。
11年前の東日本大震災では、できることをやっていこうと決め、ボランティア活動をしてきました。その結果、これまで300回以上、延べ3000人以上のボランティアの方々とともに現地でお手伝いしてきました。
このボランティアを通して思ったことは、今すべきなのは「原発はいいものか、悪いものか」という議論ではないということです。
実際に約2万人が犠牲となったことを踏まえ、この原発の問題は電気を好きに使ってきた私たち自身の責任だと思いました。そして、二度とこのような大惨事を起こさないために、なるべく原発の電気を使わないようにしていこうと決めました。
会社で取り組んだ節電:使用電力量8割減へ
その頃、日本全体の電源構成の3割が原子力由来の電力だったので、まずは自分たちの使用電力量を3割減らす努力を始めました。
自主停電や打ち水、夜やっていた会議を朝にして電気を使わないようにするなど、会議で出た節電手段は全ておこないました。100個以上の節電項目を立て、それを一つひとつ実行したことで、1年後には3割削減をほぼ達成することができました。
しかしながら、東日本大震災から1年後、原発が再稼働しました。再稼働の理由は「電気が足りないから」というものでした。
自分たちの使用電力量は目標の3割削減を達成したのに、なぜ原発が再稼働したのか?
その理由を考えたところ、電力会社の管轄エリア内全体で平均3割の電気を削減しなければ、どうしても原発の電気に頼らざるを得ないと気が付きました。
つまり、我々は自分たちの使用電力量を3割削減すれば原発は再稼働しなくてもいいのだと思っていたのですが、そうではありませんでした。電力の供給先には、例えば病院などの、どうしても電気を常時止められない施設なども含まれているからです。
その削減が難しい施設の使用電力量を誰かが受け止めて、均す必要があったのです。そこで当社では、使用電力量をさらに削減する目標を立てて実行しました。
社内で取り組む難しさも
こういった経緯もあり、当社ではますます節電に対し本気で取り組むようになりました。
しかし、使用電力量を減らし節電を進めていくうちに、「もうこれ以上節電に取り組めない」「大変だ」という声が出てくるようになりました。中には、「お客さまにも迷惑がかかるし、やめたい」という社員もいました。
ただ、その中で「節電をやめない」と断固反対するパートの女の子がいたのです。その子は、第1原発の事故の時に、着の身着のままで8人乗りのバンに9人乗って、身寄りがないこの関東に移動してきていました。
すごくおとなしい子でしたが、もう二度と原発の事故を起こしてはならない、なるべく原発の電気を使いたくないと強く思っていたのでしょう。
原発の事故は自分たちの責任でもあると思い立ったのに、簡単に諦めたらだめだと気持ちを引き締め直し、そこから他の社員とも改めて節電に取り組みました。
最終的には、使用電力量を震災前の約3割まで落とすことができました。今では、外部から買う電気を2割にまで抑えることに成功しています。
太陽光発電や蓄電池の導入、そしてオフグリッドへ
オフィスの使用電力量はかなり削減できたものの、自動車や物流といった部分は節電が難しいところでした。そこで、太陽光発電設備やEV(電気自動車)5台、EV充電用のV2Hなどを導入し、発電した電気をなるべく自社で使うようにしました。
そんな折、2019年の千葉の台風でさまざまなところから「木が倒れて困っている」「水が出ない」「屋根が壊れた」などのSOSがありました。当社のスタッフは本当によくやってくれて、700件以上の問い合わせに一つひとつ対応しました。
第1段階:本社(母屋)でオフグリッドを実証
こうして使用電力量の削減に取り組むうちに、自然と“電力会社に頼らず電気を自給自足している状態”、つまりはオフグリッドを実現していきたいと思うようになりました。
そこで、オフグリッド実現のための第1段階として、2020年6月に本社(母屋)に太陽光発電設備(20kW)と特定負荷型蓄電池3台、V2H設備4台を導入しました。
ただ、特定負荷型の蓄電池は、万が一停電が起こった際にすべての電源をバックアップできるタイプの蓄電池ではありませんでした。そのため、2022年1月には全負荷型の蓄電池であるテスラの「パワーウォール」4台へ入れ替えをおこないました。
第2段階:自社で完全オフグリッドへの挑戦
エネルギーの自給自足は、自分たちでやっていかないと万が一何かあった時に、どうしても電力会社から電気を買わないといけないし、頼らざるを得ないです。
そのため当社では、太陽光発電設備や蓄電池を使って自家発電した電気をためて使うことで、電力会社から電気を買う必要をなくし、エネルギー的に自立できることを目指し始めました。
現在、オフグリッドへの挑戦は第2段階が始まっています。2023年3月、本社(母屋)の「パワーウォール」はさらに5台導入し、合計9台に増設しました。
そして新たに、工具などを置いている倉庫へ太陽光発電設備(10kW)と「パワーウォール」3台を設置しました。そのため、完全オフグリッドで電気を賄っています。
オフグリッドを本気で推進する理由
私たちは未来の子どものために、温暖化対策に本気で取り組んでいます。
お金を儲けることが成功で、他社に勝つことが今までの当たり前でしたが、もう勝つ必要がなくなった、意味を持たなくなったと思うのです。だって、地球自体が滅んでしまって、子どもたちがいなくなってしまっては、勝ちも負けも成功もないですから。
今は、オフグリッドの新築を建てて社員さんに住んでみてもらおうという試みもおこなっています。これもまた、未来の子どもに地球を残すための一歩です。
大里綜合管理のこれから
千葉で停電し電気が使えなくなった経験は、東日本大震災と4年前の千葉の台風の時なのですが、その停電の時に電気がなくて死ぬということはありませんでした。電気がないなら、ないなりに工夫すれば何とか生活できました。
当社がオフグリッドをしようと思い、実現できると確信しているのは、不要な電気や無駄を省いていって、必要な量と必要な分だけエネルギーを創り使えばいいと考えているからです。
当社では2011年から使用電力量を見直し節電に取り組み、買う電気は当初に比べ8割削減してきました。その後は、必要な2割の電気をどう作りだすかということを真剣に考え、EVや太陽光発電設備、蓄電池などを導入しました。
その結果、オフグリッドの家を創ることは十分可能と確信しました。「必要な電気を必要な分だけ使う」、これを突き詰めていけばオフグリッドの家は実現できると思います。
また、現在進行中ですが、今後は太陽光発電と農業が同時にできるソーラーシェアリングなどにも取り組んでいって、地域で必要な分だけ必要な量のエネルギーを創り、循環させる仕組みを実現していきます。そのほか、当社の建屋なども万が一の有事の際に使用できる“住民の支援センター”としても利用していきたいと考えています。
そういったことに、これからも本気で取り組んでいきたいと思います。
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