「フェアトレード」とは?何がいいの?仕組みから見る必要な理由
近年は特に、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどでも日常的に「フェアトレード」と記載された商品や認証ラベルの付いた商品を目にする機会も増えました。
ただ、フェアトレード商品は何となく良いものだろうとは思っているものの、詳しいことはよくわかっていないという方が多いのではないでしょうか?
フェアトレード商品を購入すると、だれにとってどんな良い影響があるのか。なぜ他と比べると少し価格が高いのか。今回は、そんな商品のその先を深掘りしてみましょう。
この記事では、フェアトレードの概要と仕組み、フェアトレードとSDGsの関係性を詳しく紹介していきます。ぜひ最後までご覧ください。
「フェアトレード」とは?意味と概要
特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン(以下「フェアトレード ジャパン」)によると、フェアトレードとは「公平・公正な貿易」という意味です。
ザックリ説明すると、次のような仕組みでおこなわれる貿易を指します。
<買い手>
・開発途上国で作られた原料や製品を適正な価格で継続的に買う
<売り手>
・開発途上国の自然環境を守りながら、生産者や労働者が原料や製品を生産する
→開発途上国の生産者や労働者の生活環境を改善したり、自立を促したりする
フェアトレードの目的は、開発途上国で貿易に関わる全ての人に公平かつ公正に対応し、貧困のない社会を目指していくことです。
フェアトレードが始まった背景
フェアトレードは、発展途上国の生産者が公正な価格で製品を販売できるようにすることで、彼らの生活水準の向上と自立を支援する国際的な取り組みです。
この運動が始まった背景には、グローバル化が進む中での国際貿易の不公正さや、発展途上国の生産者が直面する厳しい労働条件と貧困問題があります。
20世紀中盤、特に第二次世界大戦後の復興期において、先進国と発展途上国との間での経済格差が拡大しました。
多くの発展途上国の生産者は、国際市場での価格競争にさらされ、不適切な低賃金で働かされるなど、不公正な扱いを受けていました。
これに対し、消費者や活動家、NGOなどが、生産者を支援し、彼らの労働環境や生活水準の改善を目指す動きが強まりました。
フェアトレードは、こうした背景のもと、1960年代に欧米を中心に始まりました。
最初は、手工芸品やコーヒーなどの商品が中心でしたが、徐々にその範囲は広がり、現在では様々な食品や衣料品など多岐にわたる商品がフェアトレードの対象となっています。
フェアトレードは、公正な取引を通じて、経済的に弱い立場にある生産者の権利を守り、持続可能な開発を促進することを目指しています。
フェアトレードの仕組み【なぜ必要?誰にとって必要?】
とはいえ、では開発途上国ってどこなのか?どんな人にとって公平公正な取引になるのか?
今のままではいまいちイメージが膨らまないと思います。
そこで次は、フェアトレードの具体的な仕組みをフェアトレードでの取引が進んでいる「コーヒー」と「カカオ」の2商品を例に挙げて、詳しく紹介していきます。
以下は、大半が開発途上国で作られている「コーヒー」と「カカオ」におけるフェアトレードの仕組みです。
それでは、上記についてもっと詳しく見ていきましょう。
フェアトレード商品の仕組み①コーヒー豆
コーヒー豆はその種類にもよりますが、ブラジルやベトナム、エチオピアなどの開発途上国でその多くがつくられています。フェアトレードは、こうしたコーヒー豆農家にとって必要です。
<フェアトレード前のコーヒー豆農家>
開発途上国のコーヒー豆農家が生産したコーヒー豆の買い取り価格は、ニューヨークとロンドンの国際市場で決まります。
しかし、開発途上国のコーヒー豆農家の多くは市場動向の情報を得たり、市場へ直接販売したりする手段を持っておらず、中間業者に頼っている状況です。そのため、国際市場の買い取り価格など関係なく、農家にとって不利な価格で取引されることもあります。
こうした不利な取引が続く現状にあることで、開発途上国のコーヒー豆農家は生活できる十分な収入を得られず、経済的に不安定な生活を余儀なくされているのです。
<コーヒー豆でフェアトレード>
フェアトレードでは、買い手は以下のようにコーヒー豆を取引しています。
・「フェアトレード最低価格以上」の買取価格を生産者組合(個々の農家が協働で作る組合)に保証
たとえば:
アラビカコーヒーのフェアトレード最低価格は、1ポンド(約454g)あたり140USセント(約153円)が保証されている。
・「プレミアム(奨励金)」と呼ばれる、品物の代金とは別に支払われる支援金を保証する
たとえば:
コーヒー豆1ポンドあたり20USセント(約20円)を生産者組合に保証しているので、レギュラーコーヒー200g製品であれば、約11セント(約12円)のプレミアムが保証される。
コーヒー豆はトン単位で取引されるため、これらのような条件下で売買することができれば、生産者組合は数十万~数百万円のプレミアムを手にすることができるようになります。
<フェアトレード後のコーヒー豆農家の状況>
コーヒー豆がフェアトレードで取引されれば、開発途上国のコーヒー豆農家は以下を実現できます。
・生産能力を高める仕組みを作れる
・生産技術の向上や機材を購入できる
・市場と直接つながって交渉力が身に付く
・地域の教育や医療など社会発展に貢献できる
☞参考:fairtrade japan公式サイト『なぜフェアトレード?|フェアトレードとは?』
フェアトレード商品の仕組み②カカオ
チョコレートの原料であるカカオも開発途上国で作られていることが多く、その7割はガーナと言われています。フェアトレードは、こうしたカカオ農家にとっても必要です。
<フェアトレード前のカカオ農家の状況>
開発途上国のカカオ農家は、児童労働(子どもによる労働)問題を抱えています。カカオ農家は経済的な貧困であるため、児童労働が起こっているのです。
<カカオでフェアトレード>
フェアトレードでは、買い手は以下のようにカカオを取引しています。
・児童労働を禁止し、労働者の安定した生活を保証する取引をする
・カカオ農家の持続可能なカカオの生産と安定した生活に繋がるフェアトレード価格で購入する
・プレミアム(奨励金)を生産者に保証する
<フェアトレード後のカカオ農家の状況>
カカオがフェアトレードで取引されれば、開発途上国のカカオ農家は以下を実現できます。
・経済的な貧困が減り、子どもに労働をさせなくて済む
・地域の教育や医療など社会発展に貢献できる
☞参考:fairtrade japan公式サイト『なぜフェアトレード?|フェアトレードとは?』
フェアトレードのメリット
フェアトレードは、公正な価格での商品取引を通じて、途上国の生産者の生活向上を目指すとともに、環境保全や質の高い商品製造にも貢献する取り組みです。
ここでは、フェアトレードの主なメリットを詳しく説明します。
途上国の貧困状態からの自立
フェアトレードは、途上国の生産者が公正な価格で商品を販売できるよう支援することで、彼らの経済的自立を促進します。
通常の国際市場では、価格競争により生産者への報酬が低く抑えられがちですが、フェアトレードでは生産者に適正な報酬を保証し、彼らの生活水準の向上や教育、医療の改善に貢献します。
これにより、生産者は貧困状態から抜け出し、自立した生活を送ることが可能になります。
環境保全
フェアトレードは、持続可能な農業方法や環境保護を奨励しています。
多くのフェアトレード製品は、化学肥料や農薬の使用を控える有機栽培によって生産されており、生物多様性の保護や土壌の健康を維持することに貢献しています。
また、フェアトレードの原則には、自然資源の持続可能な利用と環境への負担軽減が含まれており、地球環境の保護にも積極的に取り組んでいます。
質の高い商品の製造
フェアトレード製品は、生産者が適正な報酬を受け取ることで、より高い品質の商品を製造するインセンティブがあります。
公正な取引を通じて経済的な余裕が生まれることで、生産者は製品の品質向上に投資することが可能になり、結果として消費者には質の高いフェアトレード製品が提供されます。
また、フェアトレードは生産過程の透明性も重視しており、消費者は商品がどのようにして作られ、誰によって作られたかを知ることができます。
これにより、消費者は製品を選ぶ際により情報に基づいた選択をすることが可能となります。
フェアトレードにおける10の原則
世界フェアトレード連盟(WFTO)では、10の原則を掲げています。
1. 経済的弱者である生産者に雇用機会を与える
2.事業の透明性と説明責任
3.公平な取引の実践
4.公正価格での取引
5.児童労働および強制労働の排除
6.差別のないこと、男女平等、結社の自由への誓約
7.安全で健康的な職場環境の提供
8.生産者の能力強化
9.フェアトレードの推進
10.環境への配慮
フェアトレードの認証ラベル
フェアトレード製品を選ぶ際の重要な指標となるのが、認証ラベルです。
これらのラベルは、製品がフェアトレードの基準に沿って生産されたことを消費者に保証します。
主なフェアトレードの認証ラベルには、WFTO認証ラベル、国際フェアトレード認証ラベル、フェアトレード・サーティファイドがあります。
日本においては、フェアトレードに関する基準を定めた法律は存在しませんが、各認証ラベルによって製品の信頼性が担保されています。
WFTO認証ラベル
WFTO(World Fair Trade Organization、世界フェアトレード機構)認証ラベルは、WFTOが定めるフェアトレードの基準を満たしている組織や製品に付与されます。
WFTOは、フェアトレードを実践する組織間のネットワークであり、この認証ラベルは、公正な取引条件のもとで生産された製品であることを示します。
この認証は、生産プロセス全体における社会的、経済的基準の遵守を重視しています。
国際フェアトレード認証ラベル
国際フェアトレード認証ラベルは、Fairtrade International(フェアトレード・ラベリング・オーガニゼーションズ・インターナショナル)によって管理されています。
このラベルは、特定の製品が国際的に認められたフェアトレードの基準に従って生産され、取引されていることを保証します。
コーヒーやチョコレート、バナナなど特定の農産物に多く見られ、生産者に公正な価格が支払われていることを示します。
フェアトレード・サーティファイド
フェアトレード・サーティファイドは、Fair Trade USAによって管理されている認証マークです。
この認証もまた、製品がフェアトレードの基準に沿って生産・取引されたことを示しており、特にアメリカ市場を中心に広く認知されています。
生産者への適正な報酬の保証や、持続可能な農法の推進など、社会的・環境的責任を果たす生産活動をサポートしています。
日本ではフェアトレードの基準となる法律はない
日本においては、フェアトレードに関する基準や条件を定めた法律は存在しません。
そのため、消費者がフェアトレード製品を選択する際には、上記のような国際的な認証ラベルが非常に重要な指標となります。
これらのラベルは、製品がフェアトレードの原則に基づいて生産されていることを示す信頼の証であり、消費者が倫理的な選択をする上で役立つ情報を提供しています。
フェアトレードの問題点
フェアトレードは、途上国の生産者に公正な価格を保証し、彼らの生活向上を目指す取り組みでありながら、いくつかの問題点も指摘されています。
販売価格が高くなる
フェアトレード製品は、生産者に適正な報酬を支払うため、一般的な市場価格よりも高価になる傾向があります。
公正な取引を通じて生産者を支援するためのコストが価格に反映されるため、消費者はより多くのお金を支払う必要があります。
この結果、価格の高さが消費者の購入意欲を減少させる可能性があり、フェアトレード製品の普及にブレーキをかける要因となっています。
品質に差が出る可能性がある
フェアトレード製品は、途上国の小規模生産者によって生産されることが多いため、品質にばらつきが生じる可能性があります。
生産者が異なると、製品の品質や一貫性に差が出やすく、特に農産物など自然条件に左右される商品では、品質の安定性が確保しにくい場合があります。
フェアトレードに参加する生産者に対しては品質向上のためのサポートも行われていますが、一般消費者が期待する品質を常に保証することは難しいという課題があります。
フェアトレードとSDGs
私たち消費者はフェアトレードに直接関わることはありませんが、フェアトレード商品を買うことで開発途上国の生産者や労働者を安定した生活につなげることは可能となります。
さらに、今世界的に取り組みが進んでいるSDGsの達成にも貢献できます。以下は、フェアトレード商品を買うことで貢献できるSDGs目標の一例です。
SDGs目標1. 貧困をなくそう
2030年までに世界で極度に貧しく暮らしている人をなくしたり、各国の基準で貧しいとされている人を少なくとも半分に減らしたりする目標が掲げられています。
フェアトレードが進めば、社会的・経済的に立場の弱い開発途上国の生産者と労働者の権利と生活が保障されます。
SDGs目標2. 飢餓をゼロに
2030年までに小規模の食料生産者の生産性と収入を倍にしたり、持続可能な食料生産の仕組みを作ったりする目標が掲げられています。
フェアトレードがおこなわれれば、開発途上国の生産者と労働者が安定した生活が送れるような条件で原料や製品の取引が進み、経済的に自立した生活が保証されます。
SDGs目標8. 働きがいも経済成長も
各国の状況に応じてそこに暮らす人々が経済的に豊かになっていけるようにしたり、児童労働をなくしたりする目標が掲げられています。
フェアトレードが進めば、開発途上国の農家が適切な労働条件のもとで原料や製品を生産したり、児童労働をなくしたりすることが保証されます。
☞参考:日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)『SDGs17の目標』
☞参考:一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム『フェアトレードとSDGs』
世界や日本が取り組む「フェアトレードタウン運動」
フェアトレードタウン運動は、地域全体でフェアトレード製品の消費を促進し、持続可能な開発と貧困削減を目指す国際的な運動です。
この運動は、2000年にイギリスのガーレス・トーマスによって始められ、以降、世界中に広がりました。
フェアトレードタウンに認定されるためには、地域の行政機関、学校、企業、市民団体などが連携し、フェアトレードの理念を支持し、具体的な行動を起こす必要があります。
フェアトレードタウン運動の目的は、フェアトレードの認知度を高め、地域社会におけるフェアトレード製品の利用を促進することにあります。
これにより、途上国の生産者が公正な取引を通じて適正な報酬を受け取り、その生活を向上させることができるようになります。
また、消費者は自分の消費行動が世界の貧困問題や環境問題にどのように影響を与えているかを理解し、より倫理的な選択をすることができます。
日本でも、この運動に賛同する自治体や団体が増えており、フェアトレードの普及という共通の目標に向かって、多くの人々が力を合わせています。
国内フェアトレード市場の規模も拡大中
2023年4月25日、フェアトレード ジャパンより次のことが発表されました。
2022年の国内フェアトレード市場の推計規模は195.6億円に成長。
2021年と比較すると24%増という過去10年で最大の伸び率となった。
市場規模が急拡大した背景には、国内でのSDGsに対する認知度が拡大したことで消費者にとって「フェアトレード」がより身近になったことが挙げられています。そしてもう一つ、企業がサステナビリティ戦略に力を入れだしたことが大きな要因と考えられます。
これまでは“自然”に関する環境問題にスポットが当たりがちでしたが、近年は“人権”に関する環境にも注目が集まるようになりました。フェアトレードは、国際的な人権課題に取り組むためのツールとして積極的に選ばれ始めています。
とはいえ、諸外国と比較すると日本の市場規模はまだまだ小さく、その差はなんと約17倍だそうです。今後ますますの日本市場躍進が期待されますね。
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いかがでしたでしょうか?
今回は、「フェアトレード」について紹介しました。
フェアトレード商品は、同じ商品と比べると価格が高い傾向にあります。
しかし、前述したようにフェアトレード商品を購入することで開発途上国の生産者と労働者を援助し、持続可能な社会作りに貢献することができます。
私たち人間がこの先もずっと地球で暮らしていけるようにするためにも、フェアトレード商品を積極的に買うことはとても重要で大切です。
これを機にスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで買い物するときはフェアトレード商品を探してみて、積極的に購入してみてはいかがでしょうか。
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