Tシャツで世界を変えるJAMMIN(ジャミン):一つひとつのNPO活動をモノづくりでかたちにする
参加者
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TAICHI NISHIDAJAMMIN代表
1983年京都府生まれ。立命館大学在学中の2005年に訪れたスリランカではじめて途上国の現状を目の当たりにし衝撃を受ける。修士課程修了後、途上国の水問題等を解決したいと開発コンサルタント会社であるパシフィックコンサルタンツ株式会社に入社。政府の成長戦略・インフラ輸出戦略立案やミャンマー・ダウェー経済特区開発に従事。「自分に出来ることからしよう!」と2013年にJAMMINを設立。
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MEGUMI YAMAMOTOJAMMIN企画・広報・ライター
1984年京都府生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、書籍編集プロダクションを経てWEBコンテンツ企画・制作会社に勤務したのち渡印、ヨガを学んだ後、カナダへ。帰国後、WEB制作会社を経てJAMMINに加わる。
さまざまなNGO・NPO団体と毎週1週間限定でコラボTシャツをつくり、グッズ販売金額の一部をコラボした団体へ寄付するという、アパレル業界では異色のメッセージ性が高い事業を展開している「JAMMIN(ジャミン)」。
今回は京都にあるオフィスにて、JAMMIN代表の西田さま、企画・広報・ライターの山本さま、デザイナーのDLOPさまに、創立の経緯から活動内容まで詳しくお話を伺いました。
(TOP写真:左から山本さま、西田さま、DLOPさま)
チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」誕生の経緯
早速ですが、JAMMINを立ち上げようと思ったきっかけとは?
NPOやNGOのチャリティーはよくあると思うのですが、チャリティーって、お金持ちの方1人が多額の寄付してくださるようなイメージもあるかと思います。
ただ、私はNPOやNGOを支援したいという方なら誰でも小口から気軽に寄付できる仕組みを作りたかったので、「JAMMIN」を立ち上げました。
「JAMMIN」という会社名はどのような意味ですか?
ジャムセッションから着想して決めました。ストリートでいろんな人がいろんな楽器を持ち寄って即興で音楽を奏でるように、自分の手元にあるものを持ち寄って何かを作りたいというコンセプトが基となっています。
こういった会社を立ち上げようと思い至った経緯などありますか?
学生時代、スリランカで飲み水の調査などをしていたのですが、当時は奴隷制度が残っていたり内戦があったりと、国自体が貧しい状況です。
しかし、そんな中でもみんな自分たちができることをやって、貧しいながらも幸せそうでした。こうした経験をするうちに自分でも何か行動したいと考えるようになりました。
卒業後、開発コンサルタント会社に入社し、海外のまちづくりやインフラ整備のプロジェクトに携わっていました。ただ、現地で学校に行けない子どもたちや泥水で生活する人たちを見て、完成までに20年、30年かかるまちづくりをするのではなくて、目の前にある問題を解決したいと思うようになりました。
15年前から模索!JAMMINの「持続可能な社会づくり」
ソーシャルビジネスがもてはやされ出した15年前、当時はまだ「SDGs」という言葉は今のように浸透はしていませんでしたが、その頃から仲間たちと勉強会を開いて、持続可能な社会づくりのために何かビジネスができないかと模索していました。
その勉強会の中で出てきたのが、チャリティーTシャツです。1週間ごとさまざまなNPOやNGO団体とコラボしたTシャツを販売して、その一部を寄付したら面白いんじゃないかと思いました。どうなるかわからないながらも、「まずはやってみよう。そして続けることが大事!」と思い、立ち上げました。
最初はデザインを外注で何人かのデザイナーさんにお願いしていたのですが、1年ほどしてお願いしていたデザイナーの一人だったDLOP(デザイナー日高さんのニックネーム)が入社しました。
その2年後には山本が入社して、コラボしていただく団体さんにインタビューさせていただいて、思いをしっかりデザインや文章でかたちにしていく、今のかたちができていきました。
では、山本さんが入社されたとき、JAMMINの活動はいかがでしたか?
JAMMINのメンバーがそれぞれこんな思いを持って活動しているのに、それが全然伝わっておらず、もったいないと感じました。
なので、どんな人がどんな思いでやっているのか、自分たちのホームページやSNSでもっと積極的に発信していけば、賛同してくださる仲間が増えていくのではないかと。
そこで皆の思いを記事やブログにして載せたり、JAMMINのものづくりに携わってくださっている製造業者さんのものづくりにかける思いなども紹介するようにしました。
JAMMINのオリジナルTシャツに関しては、原料であるコットンを昨年の4月からインドの生産農家さんの暮らしに配慮したオーガニックのものに切り替えました。コットンを糸にして編んで生地にして、染め、裁断して縫製まで、すべて日本国内でおこなっています。
なるほど、Tシャツ自体にもこだわりがたくさん詰め込まれているんですね。
おしゃれで独創的なJAMMINのTシャツデザイン
Tシャツのデザインも独特ですよね。これはどのように作られているのでしょうか?
コラボする団体さんの活動の内容や思いをしっかり踏まえ、毎回ラフを3案、ご提案しています。団体さんのご要望やご意見も伺いながら最終的なデザインを作り上げていくようなイメージです。
例えば、先日は「TOKYO PLAY」という団体とコラボしました。
TOKYO PLAYさんは、「遊ぶことの大切さを理解し、受け止める大人を増やしていきたい」と活動されている団体です。
「大人たちが、子どものことを『遊んでいないで、これをしなさい』とか『そんなことしちゃダメでしょ』という教育や生活のレンズだけではなく、『遊びのレンズ』でも見てほしい」というメッセージを、レンズ型にした手のデザインを描くことで表現しました。
デザインするときのポイントやルールなどはありますか?
その団体でしか表現できないものは何か、どうやったらその団体らしさが出るかということは、DLOPくんと毎回、丁寧に時間をかけて話し合っている点です。
ファッションのアイテムとして、あるいは日常使いできるアイテムとして誰も気軽に手にとっていただきたいという思いから、基本的に団体名を入れることはしません。
(デザイン案を製作する様子)
確かに、デザインだけでも団体の特徴を感じ取ることができます。
「このデザインはどんな団体を表現しているんだろう?」とデザインから団体に興味や関心を持つ人も多そうですね。
毎週変わるNPO・NGO団体とのコラボ!その方法とは?
コラボは、年に何団体とするのでしょうか?
基本的には、正月を省く毎週のコラボなので、50団体ぐらいですかね。
そんなにも多くのNPOやNGO団体とコラボしているのですね。毎年決まった団体さんとコラボすることもあるのでしょうか?
毎年コラボしているのは3~4団体さんほどで、後は新規開拓しています。
新規の開拓は、ニュースを観ていて気になったキーワードから、団体さんを調べてお声がけすることもあります。
例えば、先日はニュースで「ヤングケアラー」という言葉を知りました。
心や体に不調がある人の介護や看病、療育、世話、気遣いなど、ケアを無償でする家族や友人、知人、近親者を「ケアラー」と呼びます。
そしてその中で、本来であれば大人が担うようなケア責任を引き受け、親のかわりに家事や介護をしている18歳未満の子どものことを「ヤングケアラー」といいます。
このことはニュースで知り、「こんな大変なこともあるんだ」と思って、ヤングケアラー支援に取り組んでいる団体さんを捜し、コラボが実現しました。
団体への問い合わせは、電話とかメールを利用するのですか?
最初は電話やメールで連絡をさせていただいています。
「JAMMINと言いますけど、自分たちはNPOさんやNGOさんとコラボしたTシャツを作っていまして、購入金額の一部を御団体に還元しています…」という旨を1件1件、地道に問い合わせてコラボできる団体を探しています。
僕たちは「チャリティーをもっと身近に」という合言葉で活動していますが、よりたくさんの方の生活の中で、身近にチャリティーを感じてもらえたらと思い、最近では動物園さんともコラボしました。
動物園でTシャツを販売していただき、売り上げの一部が動物保護の団体へと寄付される仕組みになっています。
コラボTシャツは“目に見える応援”という形になる
コラボにあたり、企画やデザイン、インタビューやライティングなどはすべて僕たちの方でやっていて、基本的に団体さん側には、金銭面含め負担のないかたちです。
ただ、どうしても僕たちは団体さんと関わりのあるご支援者さんとは繋がっていないので、広報の面に関しては、「こんなTシャツの販売を開始しました!」とお知らせしてもらったり、イベントでご着用いただくなど協力していただいています。
団体の皆さんはうれしいでしょうね。自分たちのやっている活動を知ってもらうきっかけになりますから。
そうですね。そう言っていただくことも多いです。
自分たちの活動が、第三者によってまた新たな視点でかたちになり、さらにチャリティーアイテムを購入してもらった売上の一部が寄付されるということは、「こんな伝え方もあったんだ」「自分たちの活動が広く認知された」「応援してくれる人がこんなにいる」といったことを改めて認識する機会になったとおっしゃっていただくことも多いです。
チャリティーTシャツを購入される方はどんな方が多いですか?
単純にそのNPO団体を応援しているという方から、JAMMINのTシャツやグッズが好きで毎回購入してくださるリピーターの方もいらっしゃいます。
ただ、Tシャツはどうしても着る場面を選んでしまいますし、「Tシャツばかりそんなにたくさんいらない」というお声もありました。なので現在は、例えばエプロンやバッグ、ポーチなど、その他のアイテムの拡充にも力を入れているところです。
日々の生活の中で、何か一つをJAMMINのアイテムに置き換えてくださったら嬉しいですね。
プリントも手作業!廃棄ロスのない受注生産での対応
Tシャツのプリントもこの場所でおこなっているのですよね。
そうです。オーダーが入ったら、ヨッチ(工房で作業をする伊藤さんのニックネーム)がシルクスクリーンという手法で一点一点プリントしています。見学に来てくださった方が、どなたも必ず驚かれるぐらい、地味な手作業です。
無地の状態で在庫を持っていて、オーダーが入った分しかプリントしないので、アパレルの世界でも問題になっている廃棄ロスが発生しません。その分、1点の売り上げにつき700円を団体さまへのチャリティーとしてお届けできています。
また、JAMMINのオフィスがある建物の1階には、就労継続支援事業所「三休」があります。
近所の方がふらっと立ち寄れるカフェを運営しながら、利用者さんにはJAMMINのアイテムの梱包などのお手伝いもしていただいています。
すごくおしゃれなカフェですね!立ち寄りたくなります。
JAMMINを通して、人と人の輪がつながる未来を
最後に、JAMMINの今後について教えてください。
先ほどもお話したとおり、生活の中にさりげなくチャリティー付きのアイテムを取り入れてもらえたら。そして、それが何か、社会課題やそこに思いを持って取り組んでいる団体さんがあるということを知ってもらえる機会になればと思います。
一つひとつの団体さんが取り組んでいるテーマは、決して簡単なものではありません。しかし大変なことだけに焦点を当てるのではなく、ポジティブな面に焦点を当てた発信を、これからもしていきたいです。
また、アパレルブランドとして、「JAMMINの商品が好きだから購入する」という方が増えていってくださったらうれしいです。
出会いのきっかけに「JAMMIN」がいる
過去にもコラボした団体さんのスタッフの方から聞いた話なのですが、ある方が出張で地方を訪れた際、JAMMINのコラボTシャツを着て一軒の居酒屋に入ったら、同じ店で飲んでいた方から、「それ、JAMMINのTシャツですよね」って声をかけられたそうです。
そこから会話が弾み、お二人とも同じ団体さんを応援していることがわかって交流が生まれたということでした。
もしJAMMINのTシャツを着ていなかったら、会話を交わすこともなく、まして同じ団体を支援しているなど知る由もなかったと思うんです。新しいご縁をつなぐきっかけになったというのは、とても嬉しかったです。
人とのつながりが希薄になっていると言われる昨今ですが、人と人、想いと想いをつなぎ、JAMMINが何か、誰かの心に温もりを与えるものになれたら、そんなに嬉しいことはないですね。
僕たちは、社会で起きている問題に対して「NO!」と主張したいわけではありません。
ただ、思いを持って課題に取り組んでいる人がいるということ。そして、実はそれが僕たちにとっても身近な問題でもあるかもしれないよということを、感じてもらえるきっかけになればと思います。
【あとがき】
JAMMINで働く皆さんは本当に格好良くて、しかも自然体で、とても楽しそうでした。
「これをしたら良くない」「毎日大変なことばかり」と思いがちですが、楽しみながら仕事も遊びも同じように本気で取り組む、その先に幸せや成功があると言えるのではないかと思いました。
日常の中で少しの良いこと。まずは、JAMMINのチャリティーTシャツから始めてみませんか?
■JAMMIN お問い合わせ先
HP:https://jammin.co.jp/
SHOP:https://jammin.co.jp/shop/
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