エチオピアシープスキンを世界に!長く愛される革製品づくり「andu amet(アンドゥアメット)」

インタビュー

andu amet_代表_鮫島弘子さま

「andu amet(アンドゥアメット)」は、エチオピアのシープスキン(羊の革)を使ったバッグや財布、カード入れなど、デザインから縫製、販売までを手掛けるレザーファッションブランドです。

SDGsやエシカルという言葉が知られるずっと前から、サステナブルなものづくりにこだわり、 全ての製品は、エチオピアの直営工房で、職人の手により1点1点丁寧に作られています。

「私たちの工房はエチオピアにあるため、フェアトレードへの取組みについては理解されやすいですが、それだけではなく、ゼロウェイストや脱プラスチック、再生可能エネルギーなど多方面において社会や環境に配慮するよう心がけています。

でも、一番大切なのはお客さまに愛され、永く大切に使おうと思っていただけるようなブランドになること。生産の過程でどんなにサステナビリティを意識しても、すぐに捨てられてしまっては環境に良いとはいえないからです」

そう話すandu ametの代表である鮫島 弘子さまに、エチオピアでバックづくりを始めた理由や、現地の様子などについて伺いました。

andu amet(アンドゥアメット)のコンセプトと商品

自国でより付加価値の高い産業を生み出すアイディア

2002年から2005年にかけて、エチオピアやガーナでボランティアに参加しました。

その際、それまで自分が訪れたどの途上国とも異なる、貧困の現状を目の当たりにしました。
一方で、現地の人々に決してやる気や能力がないわけではなく、ただそれを使う機会に恵まれていないだけであることを知り、現地の特産品である羊の革でビジネスをしようと思い至りました。

エチオピアでは羊の肉は食用として一般的で、家畜として育てられています。

実はこの羊の革は良質なため、バッグなどの革製品の素材としてイタリアなどの海外に輸出されていました。そうして、輸出先の国で加工された羊の革でできた革製品は、イタリア製やフランス製として高額で売られていることを知りました。

それならば、この良質な羊の革をローマテリアル(素材)として輸出するのではなく、付加価値の高い最終製品として輸出しよう。エチオピアの職人たちに長期的に技術やノウハウを教えて習得してもらい、上質なMade in ETHIOPIAのバッグを生み出そうと思いついたのです。

andu amet_財布とカードケース

長く愛される“オンリーワン”を デザインのこだわり

私は日本でもともとデザイナーをしていたのですが、ブランドビジネスのノウハウを身につけるために、外資系ラグジュアリーブランドのマーケティング部で5年ほど経験を積みました。
そしてその後、エチアピアでandu ametの事業を始めました。

起業にあたっては、トレンドを意識しつつも、何年も使い続けられるデザインや、高い技術で丁寧に作られた本当の意味での“オンリーワン”な製品を提供したい。そしてそれらを長く大切に使っていただきたいという強い思いがありました。

例えば、andu amet(アンドゥアメット)のアイコンにもなっている「モザイクレザー」。
日本の寄木細工にインスピレーションを得て、革を細かくつみ重ねて作っています。二つとして同じ色合わせのものはありません。その他にも、バッグのリボン部分は、日本の着物の帯から発想を得ています。

andu amet_モザイクレザーと帯リボン

デザインやカラーリングは、日本の伝統工芸の美しさや、ナイル川のブルーや豊かなグリーンフィールドなどアフリカの雄大な自然やカラフルな日常をモチーフにしています。
また下写真のポーチは、そうしたモチーフもとに、バッグを生産した際にでる端切れをパッチワークでつなぎあわせたアップサイクルのシリーズです。

andu amet_Shubu-Shubu Versatile Pouch

andu amet_Shubu-Shubu Versatile Pouch

エチオピア産の羊の革の特徴とブランド立ち上げまで

エチオピアが周辺諸国と大きく異なる点のひとつとして、イギリスの植民地にはならなかった点があげられます。現地では英語ではなく「アムハラ語」という言葉を使うので、はじめの頃はコミュニケーションに苦労しました。

例えば、スーパーマーケットで「パン」を指さしながらこれが欲しいというと、「ダボが欲しいの?」と聞かれ、それで「ああパンはダボというんだな」という具合に、ひとつひとつ覚えていきました。今では日常生活には困らない程度のアムハラ語を習得しました。

そして、いざエチオピアにandu ametの工房を作ってからは、品質管理や輸出入、政府機関とのやりとりなどに苦労をしました。

エチオピアシープスキンの特徴とは?

エチオピア産の羊の革は、まずはしっとりとやわらかい手触りに特徴があります。

お客さまには「赤ちゃんのほっぺたみたい」「ずっと触れていたくなる」とよくおっしゃっていただきます。それから丈夫であること伸縮性が高いことなどもあげられます。

例えば、尖ったもので力をいれて刺したりしても破れにくい。ぱっと見に大きな違いはありませんが、顕微鏡で見ると一本一本が太くて密で、しかもゴムのように弾力性が高いのです。これは、羊の品種や生育環境などの理由によります。

andu amet_産地別シープスキンの違い

製品のデザインも、このエチオピアシープスキンの素材の特徴を活かすことにこだわっています。

例えば、下の写真のプクプクしたバッグは、ストレッチやしっとりした味わいを活かせるデザインにしています。このバッグはブランド立ち上げの2012年から販売していますが、今もシグニチャーバッグとして大人気で、今日もお店で一番目立つところにディスプレイしています。

andu amet立ち上げ当初からラインナップにある「Hug Hug」

エチオピア製の革製品ができるまで

エチオピアでは、外資が起業するのに20万ドル必要です。私たちもそれだけの資本金を準備して工房を立ち上げました。

また、バッグを作る自社工房以外に「タナリー(革なめし工場)」も重要です。革はなめす工程では大量の薬品や水を使用するため、タナリーには使用後の水をきちんと浄化して自然に戻すシステム完備が不可欠です。

andu ametは自社でタナリーを持っていないので、基準に見合った環境対策を講じているタナリーとのみ契約して、環境基準をクリアしていることを直接確認した上で革の仕入れをおこなっています。

そして、仕入れた革をandu ametの工房で形にしていきます。バッグや財布を作るときには、職人が手で革をカットし、ハンドメイドで作ります。物にもよりますが、ひとつの製品を作るのにだいたい3~7日間ぐらいかかります。

このようにつくられたエチオピア製のバッグは、ANA(全日空)さんやスターバックスコーヒーさんでもコラボ商品として販売いただいた実績があります。これは多くの反響をいただきました。
エチオピアの工房で働いている職人たちもこの仕事に誇りを持って取り組んでくれています。

☞製作の様子はコチラのミニフィルムから

andu ametの今後:サステナブル・エシカル視点からのものづくり

最近はSDGsやサステナブル、エシカルなどの言葉が少し流行りだしていると思いますが、要は「持続可能な社会のために良いものを長く使うこと。審美眼を養うこと」が大切なのだと思います。

私が起業した頃は、まだ大量生産、大量消費がマーケットの主流でした。

しかし、これからは1円でも安く何かを買うという価値観はなくなっていくと思います。多くの人が「この商品はサステナブルか、このブランドはどのようなビジョンを持っているか」という視点で商品を選んでいけば、より持続可能で幸せな時代になっていくと思います。

会社立ち上げから今まで、私たちの思いは変わりません。

これからも高い付加価値を持ったオンリーワンの製品をエチオピアの職人さんたちとともに作りだし、作り手も、使うひとも、手にするすべての人々を笑顔にするような事業を続けていきたいと思っています。

andu amet_一枚革バッグ「Airy」

andu amet_ミニ財布「Across Half Wallet」

andu amet(アンドゥアメット)店舗&オンラインストア

・店舗情報
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前4-16-12 青山ビル1F
TEL:050-5436-2610
メール:info@anduamet.com
オンラインストア:https://anduamet.com

andu amet_店舗外観内観

あとがき

鮫島さま曰く、エチオピアでは水力発電が9割で、それ以外にも風力や地熱発電など、再生可能エネルギー由来の電気がメインで使われているそうです。また、お店の電気も再生可能エネルギー100%の電気を使っているとのことでした。

いいものを長く使うというのはもともと日本人の発想にあるものだと思います。

鮫島さまの話を聞いて、私もなにか商品を購入するときには「この商品は長く使っていけるのか」を、一呼吸おいて考えてから選ぶ習慣を身に着けようと思いました。

サステナブルなものを選ぶこと。自分のその選択が、持続可能な社会を作ることができると信じて、日々生活をしていきたいですね。

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