G7へ求められた「2025年 水銀フリー化」汚染問題と環境価値

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2023年4月15~16日に北海道札幌市で開催されたG7の気候・エネルギー・環境大臣会合より少し前、2023年4月12日に環境NGO3団体よりG7閣僚に対して1つの意見書が提出されました。

その内容は、一言で言うと「2025年までに全世界がLED照明に移行する」ことを要請するものでした。そこには、気候変動対策としての目的と、水銀から人々の健康や環境を保護するための目的が含まれています。

そこで今回は、G7閣僚に提出された本意見書の内容から、日本だけでなく世界各地で発生している水銀による環境汚染問題を知り、自然環境の価値を改めて確認してみましょう。

水銀フリーを目指しLED照明への移行を|G7への要望

そもそも「G7」とは?

まずはG7についておさらいしましょう。

外務省によると、G7とはフランス・アメリカ・イギリス・ドイツ・日本・イタリア・カナダ(議長国順)の7カ国及び欧州連合(EU)が参加する枠組みです。また、「G7」というのは「Group of Seven」の略称となります。

この枠組みには、G7メンバー以外の招待国や国際機関などが参加することもあるそうです。実際に、上記の「G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合」でも、インドやインドネシア、UAEなどが招待国として参加しました。

“G7サミット”では、7カ国の首脳が参加し、世界経済や地域情勢など、さまざまな地球規模の課題をはじめ、その時々の国際社会における重要な課題について話し合われます。そのほかにも、上記のような7カ国の外相などによる会合もおこなわれます。

水銀フリー_G7

環境NGOからの要請概要

今回、「G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合」に先立つ形で、クリーンライティング連合(CLiC)、気候行動ネットワーク(CAN)、気候ネットワークの環境NGO 3団体から共同でG7閣僚に向けて意見書が提出されました。

その内容は、大きく以下の2点です。

・2025年までに直管型蛍光灯の段階的廃止を支持すること
・2025年までに全ての照明の販売をLEDに移行すること

意見書の中では、LED照明に移行することで得られるメリットについても、具体的な説明がされています。それは以下の通りです。

<2025年までに直管型蛍光灯から直管型LED照明に移行できた場合>
2025~2050年までの25年間で、以下の回避が可能となる
①198トンの水銀汚染
②1兆3,400億ドル(約179兆円)の電気代
③3.3ギガトンのCO2排出
④9,602テラワットのエネルギー消費

また、意見書にはLED照明への移行が2025年から遅れた場合の損失についても計算が記されています。具体的な数字については、公表されている意見書をご確認ください。
☞クリーンライティング連合(CLiC)、気候行動ネットワーク(CAN)、気候ネットワークからの意見書

今回、水銀汚染問題と絡めて本意見書が提出されたのは、2023年10月に開催される「第5回 水俣条約締約国会議(COP5)」を見据えてのことでした。この会議には140もの締約国が集うため、照明による水銀汚染の最大の原因と言われている「直管型蛍光灯の段階的な廃止」というテーマに対し合意を取れるまたとない機会でもあります。

2023年5月19日~21日の間で開催されたG7サミットでも、2035年までに電力部門の「完全又は大宗の脱炭素化の達成」は成果文書に記されています。つまり、G7の中でも脱炭素化を進めることは共通認識を持っているということになります。

今回、こうした意見書が提出された水銀汚染問題とその対策について今後どうしていくのかは、10月のCOP5を待ちましょう。

日本だけでなく世界規模で「水銀汚染問題」

水銀フリー_環境汚染

日本では「水俣病」で知られる水銀汚染問題ですが、同様の健康被害は、実は世界各地でも起こっていました。こちらもまずは、日本で発生した「水俣病」からおさらいしてみましょう。

日本で起きた「水俣病」とは

環境省 水俣病情報センターによると、水俣病とは次の疾患のことを言います。

化学工場から海や河川に排出されたメチル水銀化合物を、魚や貝などの魚介類が直接エラや消化管から吸収、あるいは食物連鎖を通じて体内に高濃度に蓄積し、これを日常的にたくさん食べた住民の間に発生した中毒性の神経疾患である。
(参考:水俣病情報センター「水俣病とは」)

また、熊本県水俣湾周辺を中心とする八代海沿岸で発生したことから、この疾患は「水俣病」と呼ばれるようになりました。最終的な患者数は2,200名にものぼったそうです。

世界で起きた水銀汚染問題

世界各地で発生している水銀汚染ですが、近年で特に汚染問題が多いのは“金採掘”に関連する国々です。

1970年代末頃、ブラジルのアマゾン川流域をはじめとする砂金を取ることができる地域では、川底などの土中の砂金採掘が盛んにおこなわれました。取れた砂金の精練に使用される金属水銀によって汚染は深刻化しています。

<水銀汚染問題の傾向と該当国>
●以前:工場廃液や有機水銀系農薬による汚染
現在でも開発途上国を中心に発生しているものの、減少傾向にある
例)日本、カンボジア、カザフスタンなど
●近年:金採掘による水銀汚染や廃鉱山からの水銀汚染
工場跡地の残留水銀処理問題なども
例)ブラジル、インドネシア、タンザニアなど

現在も水銀による汚染問題は続いており、問題を抱える地域では対応や調査、対策などが進められています。

自然はいくら?環境を維持することの価値

水銀フリー_環境価値

「自然」をタダ(無料)と考えず、その活動を「サービス」として考えお金に換算すると、私たちがいかにその恩恵を受けているのかが可視化されます。最後に、そんな興味深いデータを少しご紹介します。

●国際自然保護連合(IUCN)によると
・生態系がもたらすサービスの価格=33兆ドル/年
・GDP世界ランキング1位のアメリカ=25兆ドル/年

GDP(国内総生産)で見ると、世界で最も豊かな国であるアメリカでも、2022年時点のGDPは約25兆ドル。それに対し、生態系の活動を経済的価値に換算した価格は約33兆ドルでした。
これはつまり、生態系のサービス(活動)の方がより多くの経済価値を生み出しているということですね。

次は、サービス(活動)ごとにどれくらいの経済価値があるのかをチェックしてみましょう。

●生態系と生物多様性の経済学(TEEB)の報告によると
・サンゴ礁の恵みがもたらす経済的価値=300~1,720億USドル
・昆虫による授粉サービスの経済的価値=1,530億ユーロ
・森林が果たす危険防止機能の経済的価値=20~35億USドル

その他にもさまざまな生態系サービスの経済的価値が評価されています。詳しくはぜひご覧になってみてください。

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当たり前にある「自然」には経済的にも大きな価値があり、逆にこれを失うことは大きな損失にもなり得る。実に興味深いデータでしたね。

いかがでしたでしょうか?今回はG7から水銀汚染問題、そして自然の価値までをご紹介しました。

水銀汚染については、「水銀フリー」。つまり、水銀が含まれる製品をできる限り使わないようにし、また使用済みの製品を適正に廃棄することにより、最終的に水銀が使われなくなる状態はこれからも目指されるでしょう。

まずは2023年10月のCOP5に注目したいですね。

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