スマートグリッドとは?導入例を交えてメリット・デメリットを解説!
現代社会においてエネルギーの効率的な使用は重要な課題となっています。そんな中、今注目されているのが「スマートグリッド」技術です。
スマートグリッドとは、情報通信技術を駆使して電力供給と消費を最適化するシステムのことです。
この記事では、スマートグリッドがどのようなものかを具体的な導入例を挙げながら解説し、そのメリットとデメリットを詳しくご紹介していきます。
電力の効率的な配分が可能になるスマートグリッドによって、私たちの生活はどのように変わるのでしょうか?スマートグリッドが持つ可能性に迫ります。
スマートグリッドとは?
スマートグリッドとは、「スマート(smart)=賢い」と「グリッド(grid)=電力網」を組み合わせた言葉です。
これまでの電力網よりも進化した電力網なので、「次世代電力網」と言われることもあります。
スマートグリッドを導入することで電力の無駄を削減し、消費電力に合わせて必要な電力を送電することができるようになり、再生可能エネルギーの導入拡大や電力利用の効率化が期待できます。
マイクログリッドとの違い
マイクログリッドは、地域や建物単位で完結する小規模な電力網のことで、一定の地域内や施設で生成された電力を地域内で消費します。
自立運転が可能であり、主電力網から独立して運用することもできるため、災害などの非常時にも電力を供給し続けることが可能です。
再生可能エネルギー源と組み合わせることが多く、環境に優しい運用が期待されます。
スマートグリッドが注目される背景
スマートグリッド技術が注目されるようになった背景には、複数の要因があります。
第一に、世界的に増加するエネルギー需要に対し、既存の電力網の限界が明らかになってきたことです。現在、電力需要の増加と電力網の老化が主な原因となってたびたび停電が起きています。
これまでの電力網では、需要の急激な増減に柔軟に対応することが難しいため、スマートグリッドでは効率的なエネルギー管理が求められています。
第二に、世界的に環境問題への関心が高まり、再生可能エネルギーの導入拡大が進められていることも関係しています。
再生可能エネルギーを導入するためには、太陽光や風力など、天候に左右されるエネルギー源を効果的に管理する必要があります。そのため、スマートグリッドの技術が必要不可欠です。
このようにスマートグリッドは、エネルギー使用の効率化を図り、再生可能エネルギーの活用を促進することで、環境への負荷を減らす手段として期待されています。
スマートグリッドの仕組み
スマートグリッドを実現するには、「スマートメーター」と「HEMS」2つの技術が必要不可欠です。
スマートメーターは、家庭やオフィスに設置することで、電力の使用量や発電量、売電量をリアルタイムで計測できる機器です。
そして、スマートメーターで計測した電力データは、HEMSというエネルギー管理システムに送信され、電力の最適化に活用されます。
スマートメーターとHEMSによって、電力会社は需要の変動を正確に把握し、供給計画を最適化することができます。また、家庭やオフィスでは自身のエネルギー消費パターンを可視化し、省エネ行動を促進できます。
スマートグリッドのメリット
次に、スマートグリッドの主なメリットを詳しく説明していきます。
電気の見える化で電力需要を把握できる
スマートグリッド技術の一環として導入されるスマートメーターやHEMSは、電力の使用状況をリアルタイムで計測し可視化します。
これにより、消費者は自家の電力消費パターンを正確に理解し、無駄なエネルギー使用を削減することが可能になります。
また、電力会社は全体の電力需要を正確に把握し、供給と需要のバランスを効果的に取ることができるため、より効率的な電力供給が可能となります。
電力を効率的に使える
スマートメーターで得られた電力データを元に、電力の使用を最適化することができます。
例えば、需要のピーク時に自動的に家庭や企業の電力消費を調整し、エネルギーコストの削減を図ることができます。
このように、スマートグリッドを通じて電力をより効率的に使用することで、エネルギーコストの削減はもちろん、環境への負荷も低減します。
非常時のリスク軽減になる
スマートグリッドは、災害時や非常時における電力供給が滞るリスクを軽減する機能も持ち合わせています。
従来の「集中型電源」では、災害や事故などにより発電所が停止した際など、非常時の電力の確保が課題でした。しかし、スマートグリッドによって「分散型電源」が実現すれば、発電所から電力供給が難しくなっても、分散された電源から電力を供給することによって、電力不足を解消できるようになります。
また、マイクログリッドや家庭に蓄電池や電気自動車を導入することで、一部の地域が主要な電力網から切り離されても、独立して電力を供給し続けることが可能です。
これらの対策で大規模停電のリスクを軽減し、非常時でも電力供給の安定を保つことができます。
スマートグリッドのデメリット
スマートグリッドの導入は多くのメリットをもたらしますが、一方でいくつかのデメリットも存在します。こちらもいくつか説明していきます。
導入コストがかかる
スマートグリッドの導入には、スマートメーターや蓄電池など新たな設備を設置する必要があります。また、設備の他にも、設置にかかる人件費やメンテナンス費用も必要になります。
そのため、日本全体でスマートグリッドを導入するには、莫大な費用がかかることが予想されます。スマートグリッドの普及には、コスト面が大きな課題となるでしょう。
セキュリティ対策が必要
スマートグリッドは、大量のデータを収集し、通信技術を利用してリアルタイムで情報をやり取りします。そのため、サイバーセキュリティの脆弱性が大きな問題となります。
ハッキングやデータ漏洩のリスクがあり、外部からの攻撃によって電力網全体が危険にさらされる可能性があります。
したがって、スマートグリッドを安全に運用するためには、高度なセキュリティ対策と継続的なシステムの監視が必須です。
スマートグリッドを導入している企業の紹介
スマートグリッド技術の導入は世界中で進んでおり、日本国内でも多くの企業がこの先進的な電力システムを活用し始めています。
ここでは、スマートグリッドを積極的に導入している代表的な企業の一例を紹介します。
☞参考:新潟県HP「国内外におけるスマートグリッドの導入・取組事例調査」
電機メーカー
●三菱電機株式会社
三菱電機株式会社は、家庭内の消費電力量と各家電の使用状況を検出する「ライフパターンセンサー」を開発しました。検出したデータはテレビなどを通じて見える化し、省エネ行動につなげることができます。
また、消費電力量と家電の使用状況の情報から、高齢者世帯の生活状況を見守る手段としての活用が期待されています。
●NEC グループ
三機工業株式会社ならびに日本電気株式会社および NEC エンジニアリング株式会社は、無線センサーネットワークを活用し、エネルギー消費を見える化する「熱源廻り性能測定システム」を共同開発しました。
また、NEC システムテクノロジー株式会社では、オフィスや家庭の無駄な電力を発見し、自動的に節約することができる電力制御システム「グリーンタップ」を開発しました。
●エリーパワー株式会社
エリーパワー株式会社は、太陽光をエネルギー源とした独立型リチウムイオン EV 充電スタンドを新たに開発し、神奈川県庁に第一号を納入しました。
通信業
●NTT グループ
NTTは、各企業と協力し、ホーム機器やオフィス機器をネットワークにつなぐことで、豊かな暮らしや便利なオフィス環境を実現するホームICTのトライアルを開始しています。
●富士通株式会社
富士通株式会社は、設定不要でネットワークを自動構築し、障害が発生した際にも自己修復ができる、周囲のネットワーク環境変化に適応する自立分散型ネットワーク技術を開発しました。
自動車
●三菱自動車工業株式会社
三菱自動車工業株式会社と日本宅配システム株式會社は、集合住宅向けの電気自動車用充電システムを共同開発しました。
●トヨタ自動車株式会社
デンソー、トヨタ自動車、トヨタホームは、蓄電機能を備えたHEMSの開発を進めています。
●日産自動車株式会社
日産自動車株式会社は、EVぼ利用を 24時間365日サポートするITシステムを開発しました。
建設業
●積水ハウス株式会社
積水ハウス株式会社は、集合住宅におけるコージェネレーション電熱相互融通による省エネルギー型エネルギーシステムの制御システム開発業務を実施し、電気や熱の利用データを計測、分析しています。
●大和ハウス工業株式会社
大和ハウス工業株式会社は、コンビニエンスストア向けに次世代CO2モデル事業を展開しています。
また、NTT コミュニケーションズとともに、ホームサーバの共通プラットフォームや、それらを活用した生活サービスを共同開発しています。
スマートグリッドを活用しよう
今回は、スマートグリッドの概要と具体的な導入例、それに伴うメリットとデメリットについて解説してきました。
スマートグリッドは、エネルギー使用の効率化はもちろん、再生可能エネルギーの積極的な活用や災害時の電力供給の安定化など、私たちの未来に大きな影響を与える技術です。
しかし、その導入には膨大なコストやセキュリティ対策など、解決すべき課題も少なくありません。スマートグリッドがもたらす未来を、私たち一人一人が理解し、賢く活用していくことが重要です。
みなさんも、この革新的な技術にどう向き合うか、考えてみてください。
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