【エネルギーミックスとは】2050年目標に向けた第7次エネルギー基本計画の改定迫る!

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エネルギーミックス(電源構成)とは?

「エネルギーミックス」という言葉をご存じでしょうか?
エネルギーミックスとは、「複数の発電方法を効率的に組み合わせて(ミックスして)、社会に必要な電力を供給すること」を言います。「電源構成」や「ベストミックス」と呼ばれることもあります。

エネルギーミックスは近年気候変動が加速する中で、世界中で「エネルギーのつくり方・使い方」に対する意識が高まり、注目されているワードです。地球温暖化の危機をむかえている中で、今あるいくつかの電力源を組み合わせて、安定した電力を供給できることが世界規模で求められています。

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2024年1月に日本原子力産業協会は東北大学の協力を得て、「エレクトロネーション -エネルギーミックスボードゲーム-」というボードゲームを発売しました。

このゲームは、幅広い世代に向けて、いかにエネルギーミックスが国の発展や繁栄につながるかを理解してもらうために作られました。ゲームを通じて、「エネルギーミックス」への関心が高まり、エネルギーに関するニュースを見たときに「自分に関係あること」として考えてもらうことを期待しているそうです。

今回は、現在非常に注目されているエネルギーミックスについて、理解を深めていきましょう。

エネルギーミックスの必要性

そもそも、なぜ「エネルギーミックス」が必要なのでしょうか?

現在、火力や水力、原子力、再生可能エネルギーなど、さまざまな発電方法が存在します。それぞれ長所や短所がある中で、特定のエネルギー源だけに頼ってしまうと、国際情勢の変化(紛争など)や災害、パンデミックなどで、その発電方法ができなくなったときに、私たちの生活に欠かせない電気が供給されなくなってしまいます。

また、電気の確保ができなくなると、電気料金の値上げにつながります。日本は火力発電への依存が大きく、2022年度時点でも、化石燃料依存度は83.5%を占めています。

最新データとなる経済産業省資源エネルギー庁の令和4年度(2022年度)エネルギー需給実績(確報)では、一次エネルギー(自然界から採れた石油や石炭、天然ガスなどの資源)の国内供給は前年度比2.1%減となりました。エネルギー自給率は前年比0.7%減となる12.6%で、依然として低い水準です。

このように、日本は国内自給率が低いため、火力発電に使う石油やLNGを外国からの輸入に頼り切っているので、先に述べた国際情勢の変化の影響を大きく受けてしまいます。そして、この燃料価格は「燃料費調整額」という項目名で、私たちが毎月支払う電気料金に反映されています。つまり、電源が不足すると私たちの生活にも大きく影響してしまうのです。

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エネルギーミックスが重要視されるようになった経緯

エネルギーミックスについて強く意識されるようになったのは、1973年の第一次オイルショックからと言われています。第4次中東戦争がきっかけになり、原油価格が3か月で約4倍に高騰し、世界経済が大混乱に陥った出来事です。

これにより日本ではインフレが発生し、日本中のスーパーからトイレットペーパーが消えたことは、教科書にも載っているため広く知られていることと思います。

この頃は、エネルギーの主となるものが石炭から石油へと替わる転換期でした。同年の日本の一次エネルギーは、80%近くを石油が占めるようになった中でのオイルショックは、その後の日本のエネルギー政策を大きく変えるものになりました。この時期に打ち出された政策の中の一つが「エネルギーミックス」だったのです。

石油の戦略的な備蓄
「ムーンライト計画」と呼ばれる世界最高水準の省エネルギー技術開発
「サンシャイン計画」と呼ばれる再生可能エネルギーの技術開発
電源種の多様化=「エネルギーミックス」
(参考:朝日新聞SDGs Actionエネルギーミックスとは?日本の2030年度目標や現状、課題を紹介」

「S+3E」の考え方

エネルギーミックス最適化のために、日本のエネルギー政策では「S+3E(エスプラススリーイー)」の達成が重要と考えられています。

  • Safety(安全性):大前提
  • Energy Security(安定供給):輸入リスクに備えるために、さまざまな国から輸入することや自給率を高めていくために様々な対策を検討することが求められる
  • Economic Efficiency(経済効率性):少ない燃料で大量のエネルギーをつくる効率性が求められる
  • Environment(環境適合):CO²を排出しないクリーンエネルギーへの転換が求められる
    (参考:経済産業省 「知っておきたい経済の基礎知識~S+3Eって何?」)

主なエネルギーの種類

「エネルギーミックス」の理解を深めるために、エネルギーの種類について、整理しましょう。

それぞれ、発電方法・メリット・デメリットを下図の通りまとめてみました。緑色の電源が「再生可能エネルギー」にあたります。

エネルギーミックス_図

自然の力を利用した再生可能エネルギーは、天候によって発電量が左右されるなどのデメリットはありますが、CO²を排出しない、または排出量が少ないなど、気候変動を抑制するメリットもあります。

それぞれのエネルギーにはメリット・デメリットがあることを理解し、各国の事情に合わせて組み合わせていくことがエネルギーミックスの実現に繋がります。

国内外のエネルギーミックスの現状

ここからは、国内外のエネルギーミックスの現状について、確認していきましょう。

日本のエネルギーミックスの現状

日本の一次エネルギーの供給量は近年ほぼ一定であり、オイルショック以降も石油への依存度が高いことが下記図を見るとわかります。

資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」日本の一次エネルギー供給実績

(出典:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」日本の一次エネルギー供給実績図)

再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電の導入は年々増えており、現在は世界の約8%を占めていると言われています。国土が狭い日本でも太陽光発電がここまで増えているのには驚きです。

3.日本の太陽光発電導入量の推移

(出典:日本原子力文化財団 原子力・エネルギー図面集「日本の太陽光発電導入量の推移」図)

世界のエネルギーミックスの現状

次に世界の一次エネルギーの構成比を見てみましょう。
特筆すべきはフランスで、原子力の供給割合が30%と高い状況です。フランスも日本と同等に化石燃料などのエネルギー資源が乏しいことが原子力に依存している要因と言われています。とはいえ、日本も化石燃料への依存が高いことがわかります。

4.主要国の一次エネルギー構成

(出典:日本原子力文化財団 原子力・エネルギー図面集「主要国の一次エネルギー構成」図)

2030年に向けたエネルギーミックスの目標

2021年10月に岸田文雄首相は「第6次エネルギー基本計画」を表明しました。本計画では、「S+3E」の重要性と下記2つを重要なテーマとして策定しています。

① 昨年10月に表明された「2050年カーボンニュートラル」や今年4月に表明された新たな温室効果ガス排出削減目標の実現に向けたエネルギー政策(2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減)の道筋を示すこと
② 気候変動対策を進めながら、日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服に向け、安全性の確保を大前提に安定供給の確保やエネルギーコストの低減に向けた取組を示すこと
(参考:経済産業省ニュースリリース「第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました」)

2050年にはカーボンニュートラル実現

5.2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

(出典:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」図)

政府は、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。経済産業省が中心となり、あらゆる政策を総動員させています。

2020年グリーン成長戦略の概要として、14分野に分けて実行計画を策定しています。14分野は、大きく分けるとエネルギー関連産業、輸送・製造関連産業、家庭・オフィス関連産業の3分野となります。これを実現することにより、2050年の経済効果は約290兆円、雇用効果や約1,800万人になると試算されています。

各事業の取組みは、非常に具体的で目標も高く設定されています。例えば、エネルギー調達源の見直しなど、ビジネスモデルの変革を迫られています。

6.グリーン成長戦略

(出典:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(広報資料)」)

第7次エネルギー基本計画で2040年度の電源構成を策定

また、岸田文雄首相は2024年3月28日に「2024年度中を目途とするエネルギー基本計画改定に向けて、議論を集中的におこなう」と発表しました。これは2021年に策定された「第6次エネルギー基本計画」の改定を示しており、改定の大きなポイントは2つあるとされています。

①原発再稼働

設置変更許可を受けた原発5基のうち、出力の大きな東京電力㈱柏崎刈谷原子力発電所(全7基)の再稼働に向けて、経済産業大臣が発言を始めています。また2024年4月15日には、新潟県の同意が得られる見通しが立たないまま、東京電力は同原子力発電所の7号機の原子炉に核燃料をいれる装填(そうてん)に着手しました。

原発再稼働へと政府が動いている中で、再稼働反対を掲げる市民の行動を無視するかたちとなっていることが現在問題とされています。

☞参考:東京新聞「“私たちの命を無視している”原発再稼働に突き進む東京電力に怒る地元

東京電力㈱福島第一原子力発電所の事故があってから、原子力規制委員会が原子力施設の設置や運転などの可否を判断するために、従来の安全基準を強化しています。
2024年4月19日現在、原子力発電所は関西エリアで6基、四国エリアで1基、九州エリアで3基のみが稼働しています。これは国内にある原子力発電設備のうちの約16%にあたります。廃炉にならず、稼働していない原子力発電設備が約60%ある中で、「安全対策にゴールはない」を掲げて再稼働の動きが出てきている状況です。

経済産業省資源エネルギー庁_原子力発電所の現状

(出典:経済産業省資源エネルギー庁「原子力発電所の現状」)

②火力比率減

燃料(特に石炭)が比較的安価で、発電量をコントロールしやすいため、日本の電力供給の80%は火力発電による電力で占めています。しかし火力発電のデメリットは、大量のCO²を排出していずれ枯渇する有限資源である点です。持続可能な電源とはされていません。

そこで火力発電に代わるものとして、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーによる発電方法の普及が進んでいますが、計画対比で遅れている風力発電や地熱発電をいかに拡大できるかがポイントとされています。
太陽光発電の普及は比較的順調ではあるものの、メガソーラーなどでの設置は進んでいる一方で、企業や住宅での設置はまだまだ拡大の余地があります。
企業の工場や建物の屋根上、住宅の屋根上への設置は、現在各自治体単位でも義務化への動きが進められるなど、ますますの普及拡大が求められています。

☞参考:ニッセイ基礎研究所「予見可能性の高いエネルギー基本計画・改定はできるのか?

エネルギーミックスを実現するために必要なこと

ここまで、エネルギーミックスについての現状や目標などをご紹介してきました。ここからは、エネルギーミックスの実現に必要なことをまとめていきます。
先ほど、大きなポイントとして①原発再稼働と②火力比率減の2つを挙げましたが、このほかにも必要なことがあります。

再生可能エネルギーの導入

2023年2月に閣議決定された「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」では、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つを同時に実現することが目的とされています。
その中では「再生可能エネルギーの主力電源化」も示されており、2030年度の再エネ比率36~38%の確実な達成を目指すとあります。
そのためにも、再エネ導入の際に着工時点から使用開始までの初期費用に係る資金調達の環境を整備するなど、再エネの拡大に向けてさまざまな検討が進められています。

☞参考:経済産業省ニュースリリース「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました
☞参考:経済産業省「今後の再生可能エネルギー政策について

天然ガスの利用拡大

石油、天然ガスを合わせた自主開発比率を2030年に40%以上とすることを目標としています。
再生可能エネルギーの普及が加速する中でも、引き続き石油、天然ガスの権益獲得などに向けて動いており、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が支援をおこなっています。

省エネルギーの促進

脱炭素社会の実現を考えると、そもそもエネルギーを使う量そのものを減らしていくことが重要だとされています。
企業では、非化石エネルギーへの転換を進めるために、生産体制の転換などそれぞれが省エネ目標を立て進むことを改正省エネ法で促し支援もおこなっています。家庭では、省エネ効果の高い断熱窓への改修や、省エネ家電の買い替えで補助金を交付するなど支援がおこなわれています。

☞参考:経済産業省 資源エネルギー庁「GX実現に向けた日本のエネルギー政策(前編)安定供給を前提に脱炭素を進める

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いかがでしたでしょうか?

「第7次エネルギー基本計画」には「エネルギーミックス」などの数値目標を排除すべきである、という意見も出ています。しかし「エネルギーミックス」という考え方は、電源を自給できない日本において重要であると思います。

近々発表される「第7次エネルギー基本計画」にも注目していきましょう。

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