「HEMS」とは?エネルギーを見える化してコントロール!仕組みや導入費用をご紹介

近年、日本を含む世界各国でエネルギーの節約について取り組む動きが話題となっています。

その1つに「HEMS(ヘムス)」というシステムがあるのをご存じでしょうか。
聞いたことはあるけれど、どのようなものかはわからないという方もいらっしゃると思います。

今回は、エネルギーを節約しながら快適な生活を過ごせる「HEMS」についてご紹介します。

HEMSとは?意味と仕組み

HEMSの例

(出典:経済産業省 資源エネルギー庁HP「家庭向け省エネ関連情報」ページ)

HEMSは、「Home Energy Management System」の頭文字を取って「HEMS(ヘムス)」と呼ばれています。日本語訳すると「家のエネルギーを管理する仕組み」です。
※機器の名称ではないのでご注意を!

その名の通り、HEMSでは、建物で消費された電力量や太陽光発電の発電量などを”見える化”することが可能となります。

さらには、分電盤のそれぞれの子ブレーカー(各部屋毎に分配されている小さなブレーカー)ごとに、消費電力量を計測することもできるため、建物内の電力消費量全体の内訳を詳しく知ることが可能です。

消費電力量や発電量の内訳を知ることができれば、これまで無駄に消費してしまっていた電力部分などの把握ができるようになるので、建物内の節電できる場所を知る手段につながります。

HEMSの性能とメリット

HEMSには2つの側面があります。
①見える化
家電をネットワークで結び、動作状態やエネルギー消費量を数値で確認できるようになります。
そのため、省エネルギー対策を実施した時のコストメリットを実感でき、そのことが省エネをさらに実行していく動機付けとなります。

②制御
HEMS対応のサーバーに各機器の動作状況を集約し、機器の使用電力量をコントロールすることが可能です。電力会社との契約状況や利用者の生活パターン、あるいは太陽光発電などの発電量や蓄電池の稼働状況などに基づいて積極的な制御を行います。
より広域を対象としたエネルギーマネジメントシステム(CEMSなど)と連携する場合もあります。

CEMS_スマートコミュニティ

(出典:経済産業省 資源エネルギー庁「スマートコミュニティ」イメージ図)

HEMSの必要性

なぜ今、HEMSが必要とされているのか考えてみましょう。

①日本のエネルギー自給率アップをあげるため

2021年度の日本の一次エネルギー自給率は13.3%で、 OECD(経済協力開発機構)に加盟している国際機関38ヶ国中37位です。他のOECD諸国と比べても低い水準でとなっています。

経済産業省_主要国の一次エネルギー自給率比較(2021年)

(出典:経済産業省資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2023年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」」

エネルギー自給率向上と日本のエネルギー問題解決のためには、省エネと再生可能エネルギーの利用が重要なポイントとなります。
電気・ガスを無駄なく使って省エネを心がけたり、電力会社や電気料金プランの切り替えたり、再生可能エネルギーを利用するなどして、一人ひとりが毎日の生活の中でできることから取り組んでいきましょう。

②電気料金の値上がり

電気代の値上げは、2023年6月から大手電力会社でも規制料金部門で実施されており、すでに「 約3,000〜5,000円 」ほど高くなっています。
現在「激変緩和措置」という国の制度による電気・ガス代の補助施策のおかげで負荷は軽減されていますが、この施策も2024年5月使用分までで終了となってしまいます。
一方で、 燃料価格の高騰は世界情勢により今後も続くと予想されています。
☞詳しくはコチラ

また、2024年3月19日に経済産業省のニュースリリースで公表された2024年5月~2025年4月分の再エネ賦課金単価は「3.49円」と、過去最高金額になりました。
つまり、2024年の5月、6月頃から本格的に電気代値上げの影響をつよく感じることになるでしょう。

☞再エネ賦課金とは?詳しくはコチラ

2024年度の再エネ賦課金は再び値上がり!【これまでの単価推移と負担増の影響】

③CO2排出量削減

各家庭のCO2排出量の約30%は「家電製品」や「照明機器」から出るとされています。そのため、環境省では一人あたり1日1kgのCO2排出量の削減を推奨しています。
日常生活からできる取り組みとしてあげられるのは、下記の方法などです。

  1. 待機電力を減らす
  2. エアコンの設定温度を見直す
  3. LEDを使う
  4. 環境に優しい電気を使う
  5. 公共交通機関を使う
  6. エコバッグを利用する
  7. 簡易包装の商品を積極的に買う
  8. シャワーの利用時間を減らす

まずは簡単にできることから始めてみましょう。

HEMS導入の流れ

HEMSを検討してから、実際に導入するまでの流れについて簡単にまとめてみました。

①HEMSとHEMS対応の住宅分電盤を設置
②電気機器をネットワークに接続
③エネルギーの使用状況を確認
④エネルギーの管理を開始

HEMSは必ず、住宅分電盤と繋がなくてはいけないため、HEMS未対応の場合は対応型の分電盤に交換が必要となります。対応型が備わっている場合は、HEMSの設置だけで完了です。

設置完了後は、家電製品、太陽光発電設備、蓄電池システムなどと接続することでエネルギーの使用状況の確認、管理ができるようになります。また、使用状況はHEMSモニターで確認することも可能ですが、スマホやパソコンからでも簡単に確認することができます。

HEMS_画面例

(HEMSモニター画面例)

HEMSには他にも、機器を遠隔で制御する機能がついています。メーカーにより差はありますが、エアコンや照明、お風呂の湯沸かしなどをスマートフォンで操作することができます。

例えば、外出中でも建物で電気が使われていることがわかり、その場で電源を落とすこともできます。あるいは、帰宅する前に外出先からエアコンの電源を入れたり、お風呂の湯沸かしも可能となるので、時間や電力をムダにしない効率的な生活が実現します。

このように、建物のエネルギーをスマホ一つで管理できる便利な機能がHEMSというシステムは、省エネを進めていくためのカギとなる仕組みと言えます。

製品例から見るHEMSの具体的な仕組み

次に、HEMSの代表的なメーカーの一社であるPanasonicの製品を参考に詳しい仕組みをご紹介します。

HEMS機器

・「スマートコスモ(マルチ通信型)」
HEMS対応の住宅分電盤
・「AiSEG 2」
HEMSの中心となる機器
スマートコスモで計測した使用電力量データを無線通信で受信し、モニターに表示します。
また、各家電に通信で指示を送ります。

AiSEG2(HOME IoT)おすすめプラン

(出典:Panasonic AiSEG2(HOME IoT)おすすめプラン)

HEMSには、電力消費量を計測する計測器と、それらのデータを通信する手段、データを見るモニター(スマートフォン)が必要となります。

パナソニックのHEMSの場合は、「AiSEG(アイセグ)2」と「スマートコスモ」という計測機能付き分電盤と通信機器に分かれます。

「AiSEG 2」は、モニター機能付きのものがあるため、分電盤で計測した各回路の電力消費量や太陽光発電の発電量をモニターで確認することができます。また、AiSEG2から建物のインターネット環境を使って、データをクラウド上に吸い上げ、スマートフォンのアプリで確認することも可能です。

そして、先ほど少しご紹介した家電製品の遠隔操作は、インターネットを介しておこなわれます。そのため、外からでもエアコンや照明などの機器を操作することができるという仕組みです。

これらはあくまで一例となるため、ほかにもHEMSシステムにはさまざまな活用方法がありますが、「HEMSを使うとこんなことができるのか」と、参考にしていただければと思います。

HEMSに必要な機器や費用相場

HEMSは新築時に導入しておくこともできますし、後から取り付けることも可能です。
ただ、後付けの場合は既設の設備を交換しなくてはいけない可能性があります。

HEMSに対応している住宅分電盤や、家電製品に変更するとなった場合、導入にどのくらいの費用がかかるのかを簡単に調べてみました。

HEMSの設置費用は施工会社やメーカーによって異なりますが、約15万円から20万円になります。これ以外に、HEMS対応の家電製品への買い替えをおこなうと、エアコンで約10万円から25万円、照明機器で8万円から13万円、冷蔵庫45Lだと約30万円程度がかかります。
こうした家電製品は決して安価ではないので、少しずつ入替えをしていくことになりそうですね。

HEMSの注意点

ここまでで、HEMSが重要な役割を担っていることをご理解いただけたと思いますが、メリットがある一方で注意点も少なからずあります。

①対応機器がまだ少ない
②費用対効果が少ない

HEMSは電機メーカーから販売されている商品ですが、まだまだ種類が少なく、対応機器も限られています。費用対効果を高めるには、利用される方の節電に対する意識や行動に左右されます。

つまり、実際にエネルギーを節約していくには、利用される方の努力も必要となります。

HEMSの課題と目標

内閣府国家戦略室は、2012年11月にまとめたグリーン政策大綱(骨子)の中で、世界最高水準の省エネの更なる深化のため「2030年までにHEMSを全世帯に普及させる」という施策目標を掲げています。
☞参考:内閣府国家戦略室「グリーン政策大綱(骨子)

「令和3年度 建て方別HEMSの使用率」によると、 HEMSを使用している世帯の割合は、全国で2.5%ほどです。このことからも、HEMSの普及にはまだまだ時間がかかると考えられます。

建て方別HEMSの使用率_2021年度

(出典:環境省『家庭部門のCO2排出実態統計調査家庭のエネルギー事情を知る』)

HEMSそのものの知名度が低く、設置事例が少ないことも課題の一つです。導入を検討するときに参考になるような導入時のコストや対応機器などの情報が見つかりにくく、ご自宅に必要な設備かどうか判断に迷い、導入に至らないケースもあります。

HEMSに対応している補助金は?

HEMS単体の補助金制度に関して、国からの補助金制度は2013年に打ち切られています。

しかし、自治体によってはHEMS単体の補助金制度を実施している場合や太陽光発電を導入する際に、同時にHEMSを導入することで、太陽光発電の補助額の上乗せが可能となる場合があるので、導入を検討している方は、お住いの自治体に確認してみてください。

まとめ

エネルギーを見える化・最適化し、節電や省エネが進む「HEMS」について解説してきました。

政府によって普及が進められていますが、現状では認知度や普及率は残念ながら低いままです。しかし、ここ数年のIoT環境の進展やZEHの普及推進などが追い風となり、近い将来、HEMSを使ったエネルギー管理や節電が当たり前になっているかもしれません。

快適で環境にやさしい家づくりを目指して、HEMSの仕組みや今後の動きに注目していきましょう。

当社では、太陽光発電設備をはじめ蓄電池システムや、今回ご紹介したHEMSなども取り扱っております。詳しいお話やご相談などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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