これさえ読めばわかる|FIPの基準価格と参照価格【プレミアム価格の決定方法】
FIP制度解説第4弾:価格の決定方法を紐解く
FIP(フィードインプレミアム(Feed-in Premium))の内容解説、第4弾になります。
これまでの第1~3弾をまだ読まれていない方は、先にそちらを読んでいただくとより理解が深まるかと思います。
さて今回は、FIPの具体的な価格決定方法について解説していきます。
内容のボリュームが結構あるので、記事内の図と見比べながら読みすすめることをおすすめします。
それでは早速見ていきましょう。
<これまでのFIP解説記事シリーズ>
第1弾「FIP制度とは?2022年度から始まる[再エネ電源主力化]」
第2弾「徹底比較|FIP制度とFIT制度[目的の違いとは?]」
第3弾「FIP制度のリスクとメリット[発電事業者の義務3点]」
プレミアム単価の決定方法:まず押えておくべき2つの価格
まずはおさらいになりますが、「プレミアム単価」とは下図右側のオレンジ色の部分になります。
この価格が売電収入に上乗せされて発電事業者の収入となります。これが毎月市場に連動して決定されていくので、FIPの収入は一定ではなくなります。
それでは、具体的な“価格の決定方法”を見ていきましょう。
始めに、価格の決定に関わる登場人物を2つ紹介します。
①基準価格(FIP価格)
基準価格とは、FITの調達価格と同じ考え方で決められています。
発電設備の建設コストから逆算し、「このくらいの価格であれば設備費回収ができるだろう」という価格になります。これは1年毎に定められます。
FIPでは、発電者の収入が基準価格“程度”になるようにプレミアム単価が設定されます。
②参照価格
参照価格とは、市場取引などにより期待される収入のことです。
細かく説明するとかなり難しい決定方法なので、次項から詳しく解説していきます。
この2つの関係を計算式に表すと下記のようになります。
「プレミアム単価=①基準価格―②参照価格」
いちばん大事な計算式なので、まずはこれをしっかり覚えましょう。
参照価格の決定方法:含まれる算出に必要な要素3点
先ほど「参照価格とは、市場取引などにより期待される収入のことです。」と記載しました。
これをシンプルに考えるのであれば、「卸取引市場の価格」と捉えていただければよいのですが、そのほかに「非化石価値相当額」と「バランシングコスト」という項目が関わってきます。
それでは、それぞれ解説していきます。
①卸取引市場の価格(上図a:青色の矢印)
参照価格は「市場価格の平均」というのが基本的なコンセプトですので、参照価格の決定に最も大きなウエイトを占めるのが、この項目です。計算式を記載すると次のようになります。
「卸取引市場の価格」=
前年度年間平均価格 +(該当月の当年度月間平均価格―同月の前年度月間平均価格)
ややこしくなってきましたね。
要は、前年度の市場平均価格を参考にして、該当月の価格変動分を考慮するということになります。市場は変動するので、参考となる前年の平均価格に対して、その時々の市場状況を反映させる形になります。
また、これらの平均価格には、さらに厳密な計算がおこなわれており、発電所の種別(太陽光や風力など)によって係数がかけられています。
難しいので、シンプルに考えたい場合は「市場価格の平均」と思っておきましょう。
②非化石価値相当額(上図b:オレンジの矢印から緑色の矢印を差し引く処理)
FIP制度においては、非化石価値(環境価値)は発電事業者のものとなります。そして、非化石価値は非化石価値市場という、また別の市場で売ることができます。
この非化石価値市場に非化石価値を売却した場合、プレミアム単価に含まれる環境価値のインセンティブ分との二重取りができてしまうことになります。
そのため、プレミアム単価内から非化石価値分の価格を差し引いてあげる必要があります。なので、参照価格内(a)に上乗せし、プレミアム単価内から差し引いてあげる処理をおこないます。
③バランシングコスト(上図c:オレンジの矢印に赤色の矢印を上乗せする処理)
FITと異なり、FIPでは発電事業者は、発電予測や計画提出をおこなう義務があります。
とは言っても、発電事業者にとって、いきなりそのようなことをおこなうにはノウハウもなく、外部委託にしてもコストがかかります。
なので、そのコストを「バランシングコスト」としてプレミアム単価に上乗せすることで、ある程度補填してもらえるという仕組みになっています。
このバランシングコストの補填は経過措置ですので、下図のように年々減っていきます。その間に代行サービスの出現やノウハウの確立を見込んでいるためです。
価格に対し出力制御時の扱いはどうなるのか?
上記のプロセスによって決定されるのは、あくまで「調整前プレミアム単価」になります。
最終的に出力制御に関する調整がおこなわれ、「調整後プレミアム単価」となったものが、発電事業者の収入となる金額です。
FIPでは、出力制御が発生する時間帯(市場価格が0.01円/kWhのコマ)は、プレミアムを交付しないことになっています。
その代わり、その時間帯に本来つくはずであったプレミアムは別の時間帯に割り振られます。そうして、最終的に「調整後プレミアム単価」としての単価が決まります。
これも蓄電池や発電制御によって、電気の発電時間帯の変容を促す策の一つと言えます。
FIP価格決定方法:まとめ
いかがでしたでしょうか?
このようにしてプレミアム単価の価格決定には多くの要素が絡んでいます。
今回は単純に単価の話だけで、発電量を考えていません。実際には蓄電池などを導入し、価格の変動を見極めて発電量を最適な時間に多くするといった調整も、今後は必要となってくるのではないかと思います。
さて今回はここまでになります。
次回は、「FIPの簡易シミュレーション」をおこなってみたいと思います。
引き続き、ぜひご覧くださいね。
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