サーキュラーエコノミーとは?意味や違い/企業の面白い取り組み事例
今、地球温暖化が進んでいることから、世界中で環境問題に対するさまざまな取り組みがおこなわれています。その中で日本が注目している取り組み方法の1つが「サーキュラーエコノミー(circular economy)」です。
サーキュラーエコノミーは、企業が経済活動の中で廃棄物を出さずに資源を循環させていく経済システムをいいます。サーキュラーエコノミーに取り組めば、これまでの経済活動では廃棄されてきたものを収益化しながら環境問題を解決し、持続可能な社会作りに貢献できるといわれています。
そこで今回は、サーキュラーエコノミーの概要とこれまでの環境対策「3R(スリーアール)」との違い、そして日本がサーキュラーエコノミーに注目している理由を紹介していきます。
サーキュラーエコノミーに取り組んでいる企業の事例も取り上げるので、サーキュラーエコノミーについて詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
「サーキュラーエコノミー」とは?
サーキュラーエコノミーとは「企業が経済活動の中で廃棄物を出さずに資源を循環させていく経済システム」であることを説明しましたが、具体的にどういうことなのかはわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで、ここではサーキュラーエコノミーの概要と、サーキュラーエコノミーと似た環境対策「3R(スリーアール)」との違いを説明していきます。
「サーキュラーエコノミー」の意味とは
サーキュラーエコノミーは「循環型経済」とも呼ばれます。
循環型経済とは、これまで廃棄製品として消費されていた製品を資源として再度利用し、経済活動をおこなっていくことです。以下の過程を通して経済活動をしていきます。
<サーキュラーエコノミーの過程>
1. 資源の抽出:これまで廃棄物とされていた製品を抽出する
2. 製造:リサイクル・再利用しやすい設計をしてから製品を製造する
3. 消費:製品を消費する
4. リサイクル・再利用:消費されて廃棄物とされる製品を抽出し、リサイクル・再利用する
5. 製造:リサイクル・再利用しやすい設計をして製品を製造する
例えば、これまでペットボトルが廃棄製品として消費されていたのであれば、そのペットボトルを資源として抽出します。そして、そのペットボトルをリサイクル・再利用できるように設計してから製品を製造し、製品として消費された後も廃棄物とならないようにしていくのが、サーキュラーエコノミーです。
従来の経済システム「リニアエコノミー」との違いは?
サーキュラー・エコノミーのしくみは、従来の経済システム「リニアエコノミー」と比較するとわかりやすいかもしれません。
リニアエコノミーとは「直線型(線型)経済」のことで、以下のように製品を大量に生産して消費する一方通行の経済活動をいいます。
1. 資源の抽出:製品の資源を抽出する
2. 製造:製品を製造する
3. 消費:製品を消費する
4. 廃棄:消費された製品を廃棄する
リニアエコノミーにはリサイクル・再利用の過程がないため、この経済活動をおこなっていくと結果として大量の廃棄物を生み出すことになります。
このリニアエコノミーで生じる大量の廃棄物を最低限に抑えて経済活動をしていくのが、サーキュラーエコノミーです。
サーキュラー・エコノミーと3Rとの違いは?
サーキュラーエコノミーと比較される環境対策が「3R(スリーアール)」です。3Rは耳馴染みのいい方も多いかもしれませんね。
3R(スリーアール)とは、「Reduce(減らす)」「Reuse(再利用する)」「Recylce(リサイクルする)」のRから始まる3つの廃棄物対策への取り組みをいいます。
サーキュラーエコノミーと3Rの違いは、廃棄物に対する考え方にあります。
3Rは「廃棄物が出てしまうこと前提」でおこなわれる取り組みです。つまり、「どうしても出てしまう廃棄物をどう減らすか?」という考え方で、以下のような対策を示しているのが3Rです。
●Reuse:廃棄物を再利用
●Recyle:廃棄物をリサイクル
●Reduce:廃棄物の削減
それに対してサーキュラーエコノミーは「そもそも廃棄物を出さない」ことを目指します。そのため、以下のような目標を決めて廃棄物対策をおこないながら、経済活動をしていくのです。
●資源消費を最小化する環境配慮設計
製品の廃棄を最小限にするため、事業者は廃棄物の排出を抑えたり、資源をリサイクルできるしくみを作る。つまり、製造の段階からリサイクルや再利用がしやすい設計にする
● 資源・製品の価値の最大化
資源・製品を再利用していくことで、その資源・製品の価値を再発見し最大化していく
● 廃棄物の発生抑止
消費された製品を資源として循環させていくことでその資源・製品の価値の流出を最小化する
経済活動において、製品の設計段階で廃棄物を出さないように決めることが、3Rとの違いといえるでしょう。
サーキュラーエコノミーはいつから?
サーキュラーエコノミーは、世界中で取り組まれています。ここでは欧州と日本を例に挙げて、サーキュラーエコノミーの実施状況を紹介しましょう。
欧州のサーキュラーエコノミー
欧州では、EUの主要機関である欧州委員会が2015年12月2日にサーキュラーエコノミーに対する行動計画「サーキュラーエコノミー・パッケージ」を立ち上げています。
2016年6月には、サーキュラーエコノミー・パッケージに対する具体的なアクションプランが決定されました。例えば、以下のようなアクションプランが挙げられています。
●食品廃棄物を削減するためのアクション
2030年までに食品廃棄物を半減させるためのSDGsにかなうツールを提供
●二次原料のための品質基準の開発
廃棄物を資源として利用する事業者の信頼を増やす
●2015~2017年度エコデザイン作業計画における措置
製品の修理可能性や耐久性、再生可能性を高める
●肥料に関する規制の改正
EU内における有機肥料および廃棄物をもとにした肥料に対する認識を高める
●サーキュラーエコノミーにおけるプラスチックに関する戦略
再生可能性や生分解性、プラスチックの有毒物質、漂着ごみを大幅に削減するためのSDGsに対処する
●水の再利用に関する一連のアクション
廃水の再利用に関する最低要件の法案を提出するなど
☞参考:日本貿易振興機構『EU のサーキュラー・エコノミーに関する調査報告書』2016年12月
日本のサーキュラーエコノミー
日本では、2022年4月1日に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック新法)」などが、大々的なサーキュラー・エコノミーの取り組みの一例と言えます。
プラスチック新法というは、プラスチックを資源として再利用・循環させる取り組みを促進するための措置が定められている法律です。
近年プラスチック製品の廃棄量が急増していることから、世界各国でプラスチック規制への動きやサーキュラーエコノミーに取り組む動きが重要視されています。2017年~2018年頃には、アジア諸国で廃プラスチック(使用後に廃棄されたプラスチック製品およびプラスチックを主な成分とする廃棄物)の輸入規制も起こりました。
こうした世界各国の動きから日本でも廃プラスチック問題に目が向けられ、プラスチック新法が制定されたのです。
このプラスチック新法には、前述した通りプラスチックを資源として再利用する措置が盛り込まれています。近年世界の潮流となっているサーキュラーエコノミーへ移行する良い機会であると考えられ、日本でもサーキュラーエコノミーが進められるようになりました。
面白い!サーキュラー・エコノミー取り組み企業事例
最後に、サーキュラーエコノミーを取り入れている企業の事例を3つ紹介します。サーキュラーエコノミーへ取り組む一歩として、ご参考ください。
取り組み事例①バリューブックス
長野県上田市にある古本販売会社・バリューブックスでは、古紙として回収される予定だった本を資源とし、ノートとして再利用することで廃棄をなくしていくサーキュラーエコノミーに取り組んでいます。
これまでは、バリューブックスに1日に届く古本2万冊のうち1万冊が買取できず、古紙として回収されていたそうです。古紙は回収されたら再生紙となるものの、バリューブックスでできることはないかと考えられた末に生まれたのが、古本を利用してノートを作るという取り組みでした。
バリューブックスは、自社のサービスで扱っていた古本という資源を自社で活用しノートとして製造・販売していくという、まさにサーキュラーエコノミーの基本となる取り組みをしていることがわかりますね。
☞VALUE BOOKS公式サイト『本だったノート – 古紙になるはずだった本からできたノート』
取り組み事例②黒川温泉観光旅館協同組合
熊本県南小国町にある温泉街・黒川温泉を管轄する黒川温泉観光旅館協同組合が取り組むサーキュラーエコノミーは、処分コストがかかっている廃棄物を資源として再利用することです。
処分コストがかかっている廃棄物というのは、旅館から出る生ごみ、植樹から出る落ち葉やもみがら、赤土など。これらの廃棄物から完熟堆肥を作って再利用し、完熟堆肥となった廃棄物は農家さんに農作物を育てるための肥料として使ってもらっているそうです。
さらに、完熟堆肥をもらった農家さんが育てた農作物は、旅館で提供する料理に使うという取り組みもされています。自社で取り組んだサーキュラーエコノミーが、他社の経済活動にも良い影響をもたらした好例といえるでしょう。
☞黒川温泉公式サイト『「黒川温泉一帯地域コンポストプロジェクト」が、サステナアワード2020”環境省環境経済課長賞”を受賞』
取り組み事例③ONIBUS COFFEE(オニバスコーヒー)
東京都内に4店舗展開するONIBUS COFFEEでは、繰り返し使えるカップを共有するサービス「CUPLES(カップレス)」事業を展開してサーキュラーエコノミーに取り組んでいます。
ONIBUS COFFEEの代表・坂尾篤史さんがごみとして廃棄されるテイクアウト用のカップを見て、なるべくごみを出さないように考えた末に開発されたのがCUPLESです。ドイツで取り組まれていた、デポジット制のテイクアウト用カップの利用・返却サービスを参考にしたそうです。
CUPLESは、スマートフォンに専用アプリをダウンロードし、加盟店でCUPLESを利用する旨を伝えて専用のQRコードを読み取るだけで利用できます。飲み終わったら加盟店にカップを返すだけ。カップは加盟店であればどこでも返却可能です。
マイボトルを持っていない人でも環境対策に貢献できるようなしくみを作り出した良い例といえます。
☞ONIBUS COFFEE公式サイト『「CUPLES」リユースカップでテイクアウトの新しい習慣 〜カップのシェアサービス開始しました〜』
――――🌎――――🌎――――🌎――――
今回は、サーキュラーエコノミーについて紹介しました。
企業の経済活動において「廃棄物を出さないこと」と「利益を生み出すこと」の2つを実現することは、簡単なことではないかもしれません。
しかし、私たち人間が地球上で長く暮らしていけるようにするためには、こうした企業の環境に対する配慮も必要不可欠といえます。
これを機に、サーキュラーエコノミーを実践している企業の取り組みやビジネスに参加・推進することで、皆さまもぜひ環境にやさしい循環の輪に加わってみてはいかがでしょうか?
☞個人でも!ごみを出さないゼロウェイストライフ
☞好きな食べものの廃棄を減らしてみよう