カーボンニュートラルの今[エネルギー白書2022で読み解く世界と日本の動き]

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カーボンニュートラルの今[エネルギー白書2022で読み解く世界と日本の動き]

今回は、「カーボンニュートラル実現」に向けて、今世界各国や日本はどのように動き、どんな対応をおこなっているかを「エネルギー白書2022」を参考に解説していきます。

カーボンニュートラルの実現を宣言した国の数や日本のエネルギー政策など、わかりやすくまとめてみましたので、ぜひご覧ください。

カーボンニュートラル実現に向けた世界の現状

まずは「カーボンニュートラル実現」が世界で今どこまで合意され、どのように進められようとしているかを簡単に見てみましょう。

カーボンニュートラル実現を表明した国・地域[最新状況]

2021年11月に開催されたCOP26が終了した時点で、「カーボンニュートラル実現」を表明した国と地域は次の数まで増えました。

今こそ知りたい!日本のエネルギー事情―「エネルギー白書2022」_宣言国

(出典:経済産業省資源エネルギー庁HP:「今こそ知りたい!日本のエネルギー事情」)

<2021年4月時点>
125カ国・1地域
<2021年11月時点>
154カ国・1地域(+29カ国

約半年で29カ国も増加したことは、現在全世界的にカーボンニュートラル実現が重要視されているということがわかりますね。また、表明した国々のCO2排出量は世界全体の79%の割合を占めます。
特に、COP26では「2070年カーボンニュートラル実現」を表明したインドにも注目が集まりました。インドはCO2排出量世界3位だったので、目標年数は他国と比べ長く設定されていますが、表明したことは大きな一歩と言えます。

実現のためのルールづくりと脱炭素の進め方

COP26では、脱炭素に向けた国際的なルールづくりなどに進展が見られました。

(1)ルールづくり
①金融面:上場企業に気候変動対策の情報を開示させる
すでにイギリスでは2022年4月から開始されており、アメリカでも動き始めています。世界的にも、ESG情報の開示に関する統一的な国際基準を策定しようという議論が進められているようです。
これらの取組みによって、企業のCO2排出量可視化は今後もっと進んでいくと考えられますね。

②政策面:脱炭素社会のエネルギー構造に具体的な支援をする
例)電化の促進、電力の脱炭素化、水素化、CCUSなど
カーボンニュートラル実現への手段は各国それぞれの状況に合わせ異なりますが、取り組む政策の方向性は世界全体で一致しています。

(2)脱炭素の進め方
②で述べたように、目指す先は各国統一されていますが、そこに至る方法は国の状況によります。大きく分けると、次のように重視する分野が異なります。

今こそ知りたい!日本のエネルギー事情―「エネルギー白書2022」_CO2削減比率部門

(出典:経済産業省資源エネルギー庁HP:「今こそ知りたい!日本のエネルギー事情」)

上図の通り、アメリカなら「運輸」分野、日本や中国なら「産業」分野、欧州なら「民生(一般家庭での使用)」のCO2排出量削減を特に強化していくと政策上で記されています。

各国の分野別の政策内容についても、簡単にまとめてみました。

各国のカーボンニュートラル実現への政策例
アメリカ 運輸 EVインフラ、電気バス、100%SAF化など
産業 電化、水素化など
民生 建物や家電の省エネ基準見直しなど
中国 産業 省エネ投資、電化、産業構造改革など
運輸 EV購入補助など
民生 住宅省エネなど
欧州 民生 2030ZEB義務化、既存住宅の省エネ改修大規模支援など
産業 省エネ規制強化、炭素国境措置導入など
運輸 EVインフラ整備、ガソリン車新車販売禁止など

似ている部分も異なる部分もありますが、多くの国が「カーボンニュートラル実現」という1つの目標に対し動いていることがわかりますね。それでは、日本はどうでしょうか?

カーボンニュートラル実現への対応[日本]

日本の対応を見ていく前に、少し面白いデータをご紹介します。

エネルギー白書2022では、日本のエネルギーに対する動向調査として、インターネット(Yahoo!検索)の統計データを掲載していました。エネルギー関連ワードは、大きく15種類に分けて集計されています。

<世代別のエネルギーに関するワードの検索傾向(2021年)>

エネルギー白書2022_世代別のエネルギーに関するワードの検索傾向(2021年)

(出典:エネルギー白書2022_世代別のエネルギーに関するワードの検索傾向(2021年))

やはり、10代20代はまだ関心が低いことが読み取れます。しかし、例えば「エネルギーレジリエンス」などは特に30代の関心が大きく伸びています。これにはエネルギーの安定供給、つまり「停電」などのワードも含まれているためと考えられます。

検索ワードで見るエネルギーへの関心

それでは、特に近年急増している関連ワードの分野を4つピックアップし、もう少し詳しく見てみましょう。

①「気候変動対応」分野のワード
特に2020年10月以降に「カーボンニュートラル」の検索数が急増
②「エネルギーイノベーション」分野のワード
特に2020年12月以降は「グリーン成長戦略」関連での検索数が急増
③「エネルギー価格」分野のワード
直近では「ガソリン」での検索数が急増
④「発電方法」分野のワード
一貫して多いのは「太陽光発電」
近年は新燃料による発電方法にも関心が高まっている

いかがでしょうか?
特に④に関しては、カーボンニュートラルの影響で電力分野にも脱炭素化が求められているので、そういった背景が関係していると考えられます。
また、その他の分野のワードについても、世界の潮流を読み取れるラインナップだと思います。③については、生活と直結する「ガソリン」や「電気」のワードが多いですね。

日本のエネルギー戦略[時系列]

さて、それでは日本の対応として、政策であるエネルギー戦略を見ていきましょう。実は日本には、大きく3つのエネルギー戦略・計画があります。

エネルギー白書2022_「クリーンエネルギー戦略」の概念図

(出典:エネルギー白書2022_「クリーンエネルギー戦略」の概念図)

中でも、現在さまざまな検討がおこなわれているのが「クリーンエネルギー戦略」なのですが、混雑しやすいのでそれぞれを時系列順に並べてみます。

<2021年6月>
「グリーン成長戦略」策定
・カーボンニュートラル実現を目指す
・2050年までの長期的な戦略内容
<2021年10月>
「エネルギー基本計画(第6次)」閣議決定
・2030年までに温室効果ガス46%削減を目指す
・供給側を重視したエネルギー政策
<2021年12月>
「クリーンエネルギー戦略」策定を表明
・上記2つの目標を達成するための具体的な筋道を示す
・需給両面をカバーする幅広い取組みが検討されている

時系列順にそれぞれのエネルギー計画内容を確認すると、流れがわかってスッキリしますね。

上記の通りですが、こうした流れにより現在は、先の2つを達成するための具体的な方法や施策を見出すことを目的として、「クリーンエネルギー戦略」では単にエネルギーの供給構造のみならず、産業構造や国民の暮らし、地域のあり方などさまざまな方向性での検討が進められているということです。

カーボンニュートラルとエネルギー高騰問題

ここまで、世界各国のカーボンニュートラル状況や日本の対応を追ってきましたが、現在世界的に大きな問題となっているのが「エネルギー価格の高騰」です。

そもそもなぜエネルギー価格は高騰してしまったのか?
こちらも改めて時系列順に簡単に流れを確認しておきましょう。

エネルギー価格高騰の要因と流れ

①原油価格の下落
2015年以降、原油価格が下落したことにより化石燃料への投資が停滞
②脱炭素化への流れ
世界的に低炭素から脱炭素への動きが高まった
③コロナからの回復によるエネルギー需要増
コロナから回復した国々が経済活動を復活し、エネルギー需要が急増

このような経緯で、世界の火力ガスへの依存度が上昇しました。特に、欧州が天然ガスや原油を買い求めたため、価格は上昇傾向となりました。また、世界的な悪天候も影響したと考えられます。
こうした状況に追い打ちをかけたのが、ロシアによるウクライナ侵略でした。エネルギー分野はロシアに依存していた欧州には特にダメージが大きく、結果として燃料価格はさらに上昇してしまいました。

エネルギーの脱炭素化は急務?

エネルギー白書2022_一次エネルギー国内供給の推移

(出典:エネルギー白書2022_一次エネルギー国内供給の推移)

これまで見てきた通り、すでに世界的にも「カーボンニュートラル実現」という大目標に向けてさまざまな分野で取り組みが進められていましたが、最近のエネルギー価格高騰を受けて、一層急ぐ必要性が出て来ました。

現在では、地球温暖化防止という目的だけでなく、自国のエネルギーを確保するという目的のためにも取り組まなければなりません。

日本でも電力のひっ迫や省エネの推進、脱炭素化は耳にする機会がぐんと増えたように思います。環境のためにも重要ですが、私たち一人ひとりの生活のためにも、個人でもできることから省エネや脱炭素に取り組んでいきましょう。

当社は、太陽光発電設備や蓄電池などの施工・販売をおこなっております。この2つのアイテムがあれば、インフラを自分で賄うことも可能です。
ご検討されたい方は、ぜひ一度お問い合わせください。

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