“使い捨て”ない!顔のあるプラスチック工芸品「buøy」

インタビュー

buoy_工芸品①

「プラスチックはなぜ使い捨てられてしまうのか?」

近年、ニュースなどでもよく耳にするようになった“海洋プラスチックごみ”の問題。
環境省によると、2018年(平成30年)時点でも、世界のさまざまな海洋ごみの中でプラスチックごみは65.8%と最も高い割合を占めました。また、その量は少なくとも800万トン/年と言われています。

では、そもそもなぜ“プラスチック”は簡単に捨てられてしまうのでしょうか?

それは、プラスチックそのものが悪いのではなく、“使い捨て”という考えに問題があるのだと、株式会社テクノラボの林社長はおっしゃいます。

今回は、そんな株式会社テクノラボが海洋プラスチックごみから生み出した工芸品「buøy(ブイ)」についてお伺いしました。プラスチックに愛着を持ってもらうために誕生した「buøy」、そのさまざまな取組みや面白さをぜひご覧ください。

「buøy」誕生のきっかけ:海洋プラスチックごみを再生する

株式会社テクノラボは、IoTデバイスや医療器などの部品や筐体まわりのプラスチック製品の製作を主な事業としています。起業して17年、プラスチックというものに愛着を持って取り扱ってきた林社長だからこそ、ブランド「buøy」は誕生しました。

buoy_林社長対談の様子

(株式会社テクノラボ 代表取締役:林 光邦さま)

「もともと海洋ごみ問題は知っていたのですが、あるとき長崎県の対馬市に旅行に行った際に、その漂着ごみの多さに驚きました」

環境省の調査結果(重量ベース)でも、例えば太平洋側の「小名浜」では87.8㎏なのに対し、日本海側の「松江」では658.4㎏と約7.5倍もの漂着ごみが流れつきます。
そのごみの多さを目の当たりにして、これまで“世の中に役に立つもの”としてプラスチック製品を作ってきたはずが、実際問題“ごみ”になってしまっているということに、林社長は「どうにかしなければ」と強く感じたとのことでした。

海洋プラスチックごみの再生は、なぜむずかしい?

海洋プラスチックごみが再生できないとされる理由は、大きく分けて2つあります。
①異種のプラスチックが混ざってしまって分別ができないこと
②プラスチックは種類ごとに融点が異なること

つまり、異種のプラスチックが混ざり合ってしまっていることで、ある融点で融けるものと融けないものが出てきてしまい、機械詰まりやプラスチック自体を分解しきってしまうのです。

しかし、株式会社テクノラボはそんな課題点に着目しました。

「テクノラボは製造技術を研究するという会社なので、異種のプラスチックを混ぜ合わせることで違う価値を生むということは意匠面からずっとやってきたことでした。その技術を、再生ができないとされる海洋プラスチックごみに利用することで、“再生できる”のではないかというのが、そもそものスタートです」

捨てられないための発想!海洋プラスチックごみを愛される工芸品に

buoy_工芸品②

捨てられてしまう製品たちを捨てられなくするにはどうしたらいいだろう?そんなスタートラインから始まった「buøy」は、捨てられないために、プラスチックを高度の熟練技術を駆使して作られた美的器物、“工芸品”にすることに取組みました。

「自分たちが色んな思いを込めて作ったものが、人から評価されず捨てられてしまうことはかわいそうだったので、もう捨てられない子になって、誰かに愛されたらいいなと考えました」

林社長は、この取組みのことを「保護ケン活動」と呼んでいるのだと笑ってお話くださいました。保護犬がいい飼い主さんに貰われるように、海洋プラスチックごみも如何にアップサイクルして大事にされるものを作るかということを目的のひとつに置いていました。

“工芸品”へのアップサイクル:むずかしい2つの点

そうして始まった工芸品づくりですが、大きく分けて2つ、むずかしい部分があったそうです。

「1つは“ごみを拾う”ということです。テクノラボでは、色んな地域の色んなボランティア団体からごみを購入していますが、皆さんそれぞれ自分の生活がある中で“ごみを拾う”という活動をおこなってくださっています」

(海岸の漂着ごみの様子)

地域との連携も、現在はさまざまなボランティア団体と協力しているらしく、その範囲は広大です。

<協力先地域例(一部抜粋)>
若狭湾(福井県から京都府)/対馬市・佐世保市(長崎県)/呉市(広島県)/粟島(新潟県)など

「もう1つ技術的な面でいうと、毎回条件が違うモノを一定のクオリティまで仕上げる必要があることです。何が入っているかわからない海洋プラスチックごみを“工芸品”と呼べるクオリティにしなければならないので、頭を抱えるところではあります」

プラスチックを分解すると、種類によっては有毒なガスが発生してしまいます。そのため、有毒なガスが発生しない融点の範囲内で加工をおこなう必要があります。しかし、温度が低すぎると種類によってはプラスチックが融けない可能性があり、その両立ができるラインを見極めることは試行錯誤を重ねているとのことでした。

また、海洋プラスチックごみ自体も海のさまざまな油などに汚染されていることが多いため、「buøy」の製品にはすべてフィルムコートをかけるなど、細心の注意を払っているそうです。

産地で異なる「buøy」の表情を楽しんで

buoy_工芸品③

「革とか木とかの素材でできたものは使い捨てないのに、同じ素材でも、プラスチックは“使い捨ての素材”だと思われているじゃないですか。それはなんでだろうなって考えたとき、プラスチックは“無表情”なんだと思い至りました」

製品には色んな表情や思い出が宿ります。例えばカバンなら、それを持ち歩いて行った先や体験したことを思い出すアイテムになり、自然と愛着を持つようになるかと思います。
それに対し、同じものが大量生産されやすいプラスチック製品には、表情や思い出が宿りにくいのだと、林社長は話されました。

「その点、buøyの製品はそれぞれの地域にあるその時々のごみでできていて、同じものはありません。1つ1つの表情が異なるかわいい子たちなので、愛着を持って長く使ってもらえると思います」

季節や地域によってもごみの種類は異なります。例えば、瀬戸内だと外洋ごみが入ってこないので、生活ごみや漁業ごみが多くの割合を占めます。逆に南西諸島や対馬周辺では中国・韓国などのカラフルなごみが多く流れ着くそうです。

(漂着したプラスチックごみを色分けした様子)

株式会社テクノラボが目指す「buøy」のこれからの目標

buøyの製品には、それぞれどこの海洋プラスチックごみから作られたのかわかるよう“産地”が貼ってあります。製品を持ってもらった重さその分が、その地域で実際にあった海ごみなんだと知ってもらうと同時に、その地域でこのごみを拾った“だれか”がいるのだと気づくきっかけになります。

「ごみだから価値がある、“ヴィンテージ材料”という文化をつくることが僕らの仕事です。そしてこの文化が広まれば、今度はそれぞれの地域で地元のごみを製品化して、観光客や地元の人に買ってもらうことで深いつながりができるようになります」

そうすることで、だれが拾って作ったのかが見えるようになり、そのプラスチック製品は“本当に捨てられない製品”になるでしょうと、対談の中で林社長はおっしゃられました。

「そしてゆくゆくは、人と人、地域と地域でつながっていき、自立的にごみ拾いをする人が増えていって、いつかは海洋プラスチックごみを基とするbuøyという製品が作れなくなることが、ブランド“buøy”の理想でゴールです」

あとがき「プラスチックは悪いものではなかった」

林社長曰く、1950年代、もともとプラスチックという素材自体は「環境にやさしい」と謳われて出てきたものだそうです。安くて便利でキレイなものを作ることができることがプラスチックの利点でしたが、安いが故に時代の中で大量生産されていきました。

そして今、今度は「脱プラ」のため、プラスチック製品を木製や紙製の製品に置き換える動きが進められています。しかし、“プラスチック=悪いもの”なのではなく、“使い捨て”という考えに問題があるのではと、今回のインタビューを通して、改めて気づく機会となりました。

本当の持続可能性とは何かを考えたとき、海洋プラスチックごみを “資源”と捉えて、地域で循環させていく仕組みづくりがその答えになるのではないでしょうか。

「buøy」とともに、海洋プラスチックごみがなくなる未来を楽しみにしたいですね。

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「buøy(ブイ)」HPhttp://www.techno-labo.com/rebirth/
☞オンラインショップやワークショップも!机など、より大きな商品も企画中だそうです!
株式会社テクノラボHPhttp://www.techno-labo.com/
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