徹底比較|FIP制度とFIT制度[目的の違いとは?]
FIP制度を徹底解説 第2弾
前回記事、『【わかりやすく解説】2022年度から始まるFIP制度とは?[再エネ電源主力化]』はご覧いただけましたでしょうか?
今回はその続編として、「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」のより詳細な内容を解説したいと思います。
それではFIPの解説第2弾です。よろしくお願いします。
FIP制度を深掘りする前に:知っておきたい2つの制度
まず、FIPについて説明する前に理解していただきたい項目が2つあります。
① JEPX(日本卸電力取引所)
1つは、JEPX(日本卸電力取引所)についてです。
これは発電事業者や電力会社・電力小売事業者が、電気の売り買いをするための市場になります。言うなれば電気のメルカリですね。
ここでは、30分単位(1日48回、48コマ)で電気の価格が決められ売買がおこなわれます。
取引の仕方には複数ありますが、FIP制度で特に関わってくるのが「スポット市場(1日前市場)」と「1時間前市場」いう市場です。これは実際に電気を供給する前日に取引量と価格が決まるという市場です。
② 同時同量の原則
もう一つは、同時同量の原則について。
同時同量とは、電気をつくる量(供給)と電気の消費量(需要)が、同じ時間に同じ量になっているということです。
この原則は安定的な電気を供給するために必要です。もしこの需給バランスが崩れたら、電気が不安定になったり、ひどい場合は停電が発生してしまいます。
そのため、発電事業者や小売電気事業者は、実際に電気を発電したり供給する前日に計画をたてて、その計画通りに発電・供給をおこなう必要があります。
もし、この計画と実際の発電や供給がずれていたら、インバランス料金という負担が発生します。わかりやすい言葉に置き換えると、ペナルティになります。
まずはこの2つの制度を頭の片隅に入れておいてください。
FIT制度とFIP制度の大きな違いをわかりやすく比較
最初に大きく変わる点をまとめましたので、こちらご覧ください。
<FIT>
・FIT単価は国が定めた固定価格で、決まった買取期間買い取ってくれる
・買取は電気事業者がおこなう(東京電力パワーグリッドなど)
・FIT特例というのがあり、本来発電事業者でありながら計画提出義務がない
・計画提出義務がないので計画と実績の差(インバランス)の負担がない
・環境価値は国民のもの
<FIP>スタート:2022年4月~
・FIP価格は市場価格によって変動するプレミアム単価
・買取先は自分で見つける必要がある(市場や小売電気事業者などが候補)
・発電事業者であるので発電計画の提出義務がある
・計画提出義務があり、計画通りに発電する必要があるので、ずれた場合はインバランスの負担あり
・環境価値はFIP発電事業者のもの
上記の内容をわかりやすく表にまとめると以下のようになります。
FIT制度 | FIP制度 | |
①買取単価 | 国が定めた固定価格 | 市場に連動する |
②売り先 | 電気事業者 | 自分で見つける |
③発電計画提出義務 | なし | あり |
④インバランス負担 | なし | あり |
⑤環境価値 | 国民のもの | FIP発電事業者のもの |
FIT制度とFIP制度には目的の違いがある
いかがでしたでしょうか?
発電事業をおこなう上での負担がかなり大きいと感じる方もいるのではないでしょうか。
確かに、今までのFIT制度より、業務負担も金銭の負担も増えることが予想されます。ただこれは、制度自体の設計思想が違います。
どういうことかというと、FIT制度が再生可能エネルギー普及のために発電所を建設しやすくした制度であったのに対し、FIP制度は再エネ発電事業者であっても一定の需給安定義務を課して、自立した発電事業者となることを目的としているのです。
言ってしまえば、発電事業者としてあるべき姿に戻るということになります。
そもそもの目的が異なることがわかると、納得がいきますよね。
さて、今回はここまでになります。
次回からはFIP制度のリスクや価格の決定方法を解説していきますので、お楽しみに!
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