「Vehicle to HOME(V2H)」とは?蓄電池との違いなどわかりやすく解説!

【解説】まだまだ聞き慣れない「V2H」とは?

「V2H」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
あまり耳馴染みのない言葉だと思います。
では、「LEAF to Home」という言葉は聞いたことがあるでしょうか?
2011~2012年ごろに耳にされたことがあるなと思いあたる方もいらっしゃるかと思います。

それでは、「リーフだけで何日暮らせるか?」という日産のCMを見たことはありますでしょうか?
こちらは「見た!」という方も多いと思います。今年の4月頃よく流れていましたよね。

そのCMにあるように、“太陽光発電設備で作った電気をリーフ(電気自動車)に蓄えて、家全体で使う”という、電気自動車でつくる新しい暮らしのシステムに使われている技術が「V2H」です。

V2Hとは「Vehicle to HOME」という言葉の略称で、“車から家へ”という意味の通り、車から家へ電気を供給する仕組みのことを指しています。

本来、電気自動車は、蓄えた電気を消費して「走行」することが主な役割ですが、「V2H」では、電気自動車を家庭用蓄電池として新たな役割を与えることができる仕組みです。

知っておきたい!「家庭用蓄電池」とは?

充電して電気を貯めておくことができ、必要な時に電気機器に電気を供給することができる、一般住宅で使用可能な二次電池・バッテリーのことです。

太陽光発電設備をご自宅に導入しているご家庭は特に、太陽光発電の余剰電力を電気自動車に充電したり、電気自動車から建物へ電気を供給したりと、太陽光発電をさらに活かすことができます。

近年、地球温暖化の影響か、突発的で大規模な自然災害が多発しています。そんな災害による突然の停電時に、電気自動車から建物に電気を供給できることは、とても便利で暮らしの安全に繋がります。

☞家庭用蓄電池について詳しく知りたい方はコチラ

【検討中の方向け】家庭用蓄電池の容量・機能・価格について

【V2Hでできること】家庭用蓄電池とどう違うのか?

家庭用蓄電池と比較されることが多い「V2H」ですが、どのような違いがあるか解説します。
ポイントは大きく分けて4点です。

① 充電可能容量

家庭用蓄電池は、1台当たりの充電可能容量は2~16kWhほどです。
☞「kWh」とは?蓄電池容量の考え方についてはコチラ!

それに対し、電気自動車は1台当たり、充電可能容量は8~60kWhほどです。ためることができる電器の容量だけで見ると、家庭用蓄電池より電気自動車の方が圧倒的に多いことがわかりますね。

② 機種の選択肢

家庭用蓄電池は、国内外さまざまなメーカーがあります。
また、1つのメーカーの中でも、電気をためることができる容量が小さいものから大きいものまで複数あったります。そのため、選択肢の幅という観点ではかなり広いです。

それに対し、V2Hはほとんど選択肢はなく、ニチコンがつくる「EVパワーステーション」を導入するケースがほとんどです。また、対応している電気自動車にも限りがあります。

<対応車種(一部抜粋)>
・日産:リーフ、リーフe+(EV)
・三菱:i-MiEV(EV)、アウトランダーPHEV、エクリプスクロス(PHEV)
・トヨタ:プリウスPHEV(PHEV)、MIRAI(FCV)
・ホンダ:Honda e(EV)
☞詳しくは、EVパワーステーションHPでご確認ください。

※V2Hには一点注意が必要
この仕組みに海外車(輸入車)は対応していません
V2Hを検討していて、車を購入前の方はお気を付けくださいね。

③ 停電したとき

家庭用蓄電池は、停電を検知すると自動でバックアップし、ご自宅に電気を供給する機能が付いています。それに対しV2Hの場合、ご自宅に電気自動車自体がないと家の中に電気を供給することができません。

充電可能容量が大きいので、バックアップ電源として使用できる時間は長いですが、あくまで「自動車」であることを意識する必要があります。

④ 価格

家庭用蓄電池は、2021年度のSii目標設定価格は、材料工事込みで16.5万円/kWh(税抜き)です。
10kWhの蓄電池であれば、165万円です。

V2Hは、ニチコンのEVパワーステーションの定価が80万円くらいです。そこへ工事費がかかります。
また、こちらは「V2H」のみの費用イメージなので、電気自動車も合わせて購入するとなると、その費用もプラスされるので、それなりの金額になってくるかと思います。

ですが、太陽光発電設備のさらなる有効活用を考えている方や、今よりも便利で環境にいい暮らしを考えている方にはぜひ一度検討していただきたい仕組みです。

⑤電気代の削減

V2Hを利用することで、電気代の削減が期待できます。

特に、電力料金が時間帯によって異なるタイムシフト料金制度を利用している場合、夜間など電気代が安い時間帯にEVを充電し、昼間など電気代が高い時間帯にその電力を家庭で使用することで、電気代を節約することができます。

さらに、太陽光発電を組み合わせることで、日中に使い切れなかった太陽光発電の電力を電気自動車(EV)に充電することができるので、電気代の節約効果がより向上します。

⑥充電スピードが速い

V2Hシステムでは、EVの急速充電口を使用するため、自宅でのEV充電スピードを向上させることができます。

普通充電器と比較して、より短時間でEVのバッテリーを充電することが可能になるため、EVの利便性が向上します。

急速に充電できることで、日常の使用はもちろん、緊急時にも迅速に対応することができるようになります。

V2Hと他の機器との違い

V2Hと、EV充電設備や家庭用蓄電池との違いについて詳しく見ていきましょう。

これらのシステムは、いずれも電力供給に関連する技術ですが、それぞれに独自の特徴と利点があります。

EV充電設備との違い

EV充電設備は、電気自動車(EV)のバッテリーに電力を供給するための装置です。

一般的に、家庭や公共の場所に設置され、EVを充電する際に使用します。

この充電設備は、電力をEVのバッテリーにのみ供給するためのものであり、その電力を家庭で利用する機能は持っていません。

一方、V2Hは、EVのバッテリーに蓄えられた電力を家庭で利用することを可能にします。

これにより、EVを移動式の蓄電池として活用し、家庭の電力需要に応じて電力を供給することができます。

例えば、電気代が高い時間帯にEVの電力を家庭で使用したり、停電時に非常用電源として活用したりすることが可能です。

家庭用蓄電池との違い

家庭用蓄電池は、太陽光発電などの再生可能エネルギー源から得られた電力を蓄え、必要に応じて家庭に電力を供給するシステムです。

家庭用蓄電池は、家庭内での電力の自給自足を目指す際に重要な役割を果たしますが、EVへの直接充電機能は有していません。

V2Hでは、EVのバッテリーそのものが蓄電装置として機能します。

さらに、V2HはEVから家庭へ電力を供給するだけでなく、家庭からEVへの充電も可能にします。

これにより、EVと家庭の電力を相互に活用することができ、電力の効率的な使用が促進されます。

V2Hの種類

V2Hには、主に「太陽光蓄電池連系タイプ」と「単機能タイプ」の2種類が存在します。

太陽光蓄電池連系タイプ

太陽光蓄電池連系タイプは、太陽光発電システムと電気自動車の蓄電池、そして家庭内の電力システムが連携して動作するものです。

このタイプの最大の特徴は、太陽光発電で得られた電力を直接EVの蓄電池に蓄え、それを家庭で利用することができる点にあります。

日中に太陽光発電で生成した電力をEVに蓄え、夜間や電力需要の高い時間帯にその電力を家庭に供給することで、電力コストの削減や再生可能エネルギーの有効活用が可能となります。

また、非常時や災害時においても、安定した電力供給源としての役割を果たします。

単機能タイプ

単機能タイプは、その名の通りEVと家庭間で電力を供給する機能に特化したシステムです。

太陽光発電システムとは直接連携せず、EVの蓄電池に蓄えられた電力を家庭に供給することに焦点を当てています。

このタイプは、特にEVの蓄電池を利用して家庭の電力を補助することを目的としており、停電時や電力コストが高い時間帯にEVから家庭へ電力を供給することで、電力の安定供給やコスト削減を実現します。

太陽光発電システムを持たない家庭や、シンプルなシステムを導入したい方に適しています。

V2Hの電力供給の種類

V2Hにおける電力供給の種類には、「全負荷型」と「特定負荷型」の2つがあります。

これらは、電気自動車(EV)の蓄電池から家庭へ供給される電力の使い方によって区別されます。

全負荷型

全負荷型は、EVの蓄電池から得られる電力を家庭内の全ての電気機器に供給することができるシステムです。

このタイプでは、家庭のメインのブレーカーに接続され、電力が全ての電気回路に流れるようになっています。

そのため、照明や冷蔵庫、エアコンといった生活に必要な全ての電気機器をEVの蓄電池で稼働させることが可能です。

特に、停電や災害時においては、家庭全体を支える非常用電源として大きな役割を果たします。

特定負荷型

特定負荷型は、EVの蓄電池から得られる電力を家庭内の特定の電気機器や回路にのみ供給するシステムです。

このタイプは、特に重要な機器や必要最低限の電力需要を満たすことを目的としており、例えば、照明や通信機器、医療機器など、選択した電気機器のみを稼働させることができます。

特定負荷型は、全負荷型に比べてシステムがシンプルで導入コストを抑えられる利点があり、特定のニーズに特化した電力供給が可能です。

停電時においても、最も重要な機器の稼働を保証するためのバックアップ電源として利用されます。

V2Hの注意点

V2Hは多くの利点がある一方で、いくつかの注意点も存在します。

バッテリーが劣化する

V2Hを利用する際には、EVのバッテリーが劣化する可能性があります。

バッテリーは充放電を繰り返すことで徐々に容量が減少し、その性能が低下します。

V2Hを頻繁に使用すると、EVとしての運用に必要なバッテリーの寿命が短くなる恐れがあるため、利用頻度や方法を考慮する必要があります。

また、バッテリーの劣化具合によっては、想定していたよりも少ない電力しか家庭に供給できないことも考慮する必要があります。

駐車している時しか蓄電できない

V2Hは、EVが自宅に駐車している時しか電力を蓄電・供給できません。

そのため、EVを長時間外出先に持って行っている間は、V2Hを利用して家庭に電力を供給することができなくなります。

日中に家を空けることが多い家庭では、太陽光発電と連携させてV2Hを最大限活用するなど、生活スタイルに合わせた運用計画が必要です。

V2H対応車種が限られている

現在、市場には多数のEVが存在しますが、V2Hに対応している車種は限られています。

V2Hを導入する際には、自身の所有するEVがV2Hに対応しているか、または将来的にV2Hシステムの利用を検討している場合は対応車種を選択する必要があります。

【V2Hを検討するなら今!】最新の補助金状況は?

2022年は、経済産業省から電気自動車や自動車用充電機器、さらにはV2Hにも補助金が出ています。

補助事業の種類にもよりますが、最大で115~121万円ほどの補助金額が見込めます。加えて、経済産業省からは電気自動車(EVなど)に対しても補助金が出ているので、あわせて検討してもいいかもしれません。

☞詳しくはコチラで解説!

【2022年最新!】V2Hの対応車種や令和4年度の補助金について要点をご紹介

今後の脱炭素社会で、重要なカギを握る電気自動車の普及ですが、V2Hのような仕組みが広がることで、再エネを活かした社会が実現されるでしょう。

これからますます盛り上がる再生可能エネルギーや脱炭素社会。皆さまも持続可能な暮らしを今のうちからぜひ考えてみてくださいね。

「V2Hについて詳しく知りたい、検討したい」という方は、ぜひお問い合わせにてご相談ください。

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