ポータブル電源は買うべき?定置型蓄電池とのメリット・デメリット比較
昨今、電気代の値上がりや停電への対策に注目を浴びているものが、太陽光発電設備と蓄電池です。
その蓄電池も個人向けは大きく分けて2種類あります。それが、ポータブル電源(ポータブル蓄電池)と定置型蓄電池です。
家庭用の蓄電池としては、テスラ社の「 Powerwall(パワーウォール)」のような決まった位置に固定する定置型の蓄電池を目にする機会が多いかと思います。一方、ポータブル電源と聞くと、キャンプや車中泊などのアウトドアで利用されているイメージが強いのではないでしょうか。
今回は、そんなポータブル電源について深堀りしていきたいと思います。まずは、ポータブル電源と定置型蓄電池ではどんな違いがあるのか、詳しく見ていきましょう!
ポータブル電源と定置型蓄電池の違い
ポータブル電源の一番の特徴は、用途に合わせて持ち運びが可能な点です。そのため、サイズ感もコンパクトな製品が多いです。近頃は、キャリーケースのような形で持ち運ぶことのできる製品も出てきています。
また、利用用途にもよりますが、工事は基本的に不要です。加えて、価格も定置型に比べると安価なので、購入のハードルはより低くなるかと思います。
その代わり、定置型蓄電池と比較すると蓄電容量は小さくなりますが、最近ではソーラーパネルからの充電ができるポータブル電源も増えています。さらには、電気代の節約を目指すこともできるような“定置型蓄電池に近いポータブル電源”も出てきている状況です。
そんなポータブル電源と定置型蓄電池の比較を簡単な表にまとめてみました。
上図の通り、それぞれのメリットやデメリットは大きく異なります。
「容量の大きな蓄電池がいい」「安く手に入るものがいい」という観点だけでなく、普段どのように運用したいか、停電時にどこまでの生活を確保したいかなどの観点からも、ご家庭に最適なのはどちらかをご検討いただけるといいかと思います。
ポータブル電源のメリット
次に、ポータブル電源のメリットについて詳しく見ていきましょう。
定置型蓄電池と比較して導入コストが安い
ポータブル電源の最大の魅力の一つは、定置型蓄電池と比べて導入コストが格段に低いことにあると言えます。
定置型蓄電池は大容量の電力を蓄えることができ、「全負荷タイプ」のものであれば家全体への電力供給が可能ですが、その分初期費用として数百万円単位の費用がかかることが一般的です。
一方、ポータブル電源は数万円から購入可能であり、家計に大きな負担をかけずに電力のバックアップを手に入れることができます。
☞蓄電池の負荷タイプについて詳しくはこちら
コンセント代わりになる
ポータブル電源は、コンセントがない場所でも電源として利用できます。これにより、家の中で移動しながら電子機器を使用したり、庭やバルコニーなどの屋外で電化製品を利用したい場合にも有効活用できるため便利です。
また、USBポートを備えているモデルが多く、スマートフォンやタブレットなどの充電に直接使用することができます。
停電時や緊急時に役立つ
自然災害や設備のトラブルによる停電時に、ポータブル電源は非常に有用です。ライトの電源として使ったり、スマートフォンを充電して情報収集や連絡手段を確保したりすることができます。
小型で持ち運びが容易なため、避難時にも持ち出しやすく、非常用電源としての価値が高いです。
アウトドアなど外出時に活躍
アウトドアやキャンプ、ピクニックなど、屋外でのレジャー活動時にもポータブル電源は大活躍します。屋外での電源確保が難しい場所でも、照明や音楽再生機器、カメラの充電などに使用できます。
また、災害時の車内避難としても、車のバッテリーに頼らずに電力を供給できるため安心です。
ポータブル電源のデメリット
ポータブル電源は、その携帯性と利便性で多くのシーンで活躍していますが、一方でいくつかのデメリットも存在します。
それでは、ポータブル電源の主なデメリットについて詳しく見ていきましょう。
容量が小さい
ポータブル電源は機器本体のサイズが小さいため、定置型蓄電池に比べて格段に容量が小さくなります。そのため、長時間の使用や大きな電力を消費する電化製品の稼働には向きません。
特に、家庭での長時間の停電対策や、大容量を要する電化製品の使用には限界があります。
充電が切れると使えない
ポータブル電源は、充電が切れると使用できなくなります。そのため、定期的な充電が必要であり、長期間の使用や連続使用を想定した場合、予備の蓄電池を用意しておく必要があります。
また、停電などの緊急時に充電が切れていると、使用できないリスクがあります。
水濡れに弱い
多くのポータブル電源には、防水機能が備わっていないため、水濡れに弱いというデメリットがあります。そのため、屋外での使用や水辺での活動時には特に注意が必要です。
水濡れによる故障は、製品の寿命を縮める原因にもなり得ます。
定格出力によって使えない電化製品がある
ポータブル電源では、出力が大きな電化製品を使用することができません。例えば、ヘアドライヤーや電子レンジなどの高出力の電化製品などは、ポータブル電源では対応できない場合が多いです。
そのため、使用する電化製品を選ぶ際には、蓄電池の定格出力を確認する必要があります。
中には低品質なものも
市場には多くのポータブル蓄電池が出回っていますが、中には低品質な製品も存在します。低品質な製品は、性能が不安定であったり、耐久性に欠けていたり、場合によっては安全性の問題も懸念されます。
購入する際には、信頼できるメーカーの製品を選ぶようにしましょう。必要に応じてレビューなどを参考にすることが重要です。
ポータブル電源の選び方・確認すべきポイント
ポータブル電源の選び方は、使用目的や必要性に応じて多種多様です。ここでは、キャンプや車中泊、災害時の備えなど、さまざまなシーンでの使用を想定し、選択時のポイントを紹介します。
用途に合った容量を選ぶ
キャンプや車中泊では、スマートフォンの充電、ポータブル冷蔵庫、LEDライトなどの充電に使うことが一般的です。これらの用途では、500~700Whの容量を有する蓄電池が適しています。
また、災害時には長期間の停電に備える必要があります。スマートフォンの充電、小型の電気ヒーターや炊飯器などを使用する場合は、1000Wh以上の容量を持つ蓄電池が推奨されます。
PSEマークが付いている
日本で販売される電化製品は、安全基準に適合していることを示すPSEマーク(製品安全電気用品)の表示が必要です。
ポータブル電源を選ぶ際には、このPSEマークが付いている製品を選択することで、製品の安全性を確認することができます。
正弦波/純正弦波のものを選ぶ
ポータブル電源のAC出力は、「正弦波」または「純正弦波」であることが重要です。
「正弦波」とは
電源から供給される電気の出力波形の1種です。この出力波形にはいくつか種類がありますが、中でも「正弦波」は特に自然界で観測される波形であり、家庭用の多くの電気機器はこの正弦波に合わせて設計されています。そのため、電気を安定供給できるので機器への負荷を軽減できます。
☞参考:EcoFlow社「電源における正弦波とは?」
そのため、PSEマーク同様に安全性を重視するなら「正弦波」のものを選びましょう。基本的には「正弦波」のものが多いですが、一部製品は異なることもあります。
AC出力ポートの周波数を確認する
日本国内では、地域によって電源の周波数が異なります(東日本は50Hz、西日本は60Hz)。
購入するポータブル電源が使用地域の周波数に対応しているかどうか、念のため確認しておきましょう。多くの蓄電池は両方に対応していますが、事前に確認しておくことが望ましいです。
電力の使用効率を確認する
蓄電池の効率は、公称容量のうち実際に使用できる電力の割合で示されています。
公称値に対して80%以上の製品であれば、電力を無駄なく使用でき、経済的と言えるかと思います。蓄電池のスペックを確認し、電力使用効率が高い製品を選択することが重要です。
定格出力を確認する
ポータブル電源を選ぶ際には、使用したい電化製品の消費電力を確認し、それを上回る定格出力を持つ製品を選ぶようにしましょう。
例えば、600Wの消費電力を持つ電化製品を使用する場合は、600W以上の出力が可能な製品を選ぶ必要があるでしょう。
出力ポートの種類を確認する
ポータブル電源には、ACポート、USBポート、DCポートなど、さまざまな出力ポートが備わっています。使用する電化製品や目的に合わせて、必要なポートが備わっているかを確認しましょう。
スマートフォンやタブレットなどの充電にはUSBポートが必要ですし、家庭用の電化製品の使用には主にACポートが必要となります。
ソーラーパネル充電・パススルー充電対応の製品も
ソーラーパネル充電対応のポータブル電源は、災害時やアウトドアでの使用に非常に便利です。太陽光だけで充電できるため、電源が確保できない環境でも陽の光があれば電力を供給・充電することができます。
また、パススルー充電(同時入出力)対応のモデルなら、蓄電池自体を充電しながら他のデバイスを充電することができ、より柔軟な電力管理が可能になります。
長く使うならリン酸鉄リチウムイオン電池を選ぶ
蓄電池の中でもリン酸鉄リチウムイオン電池は安全性が高く、バッテリーサイクル回数(充放電の繰り返し回数)が多いため、長期間にわたって使用することができます。
頻繁に使用する予定がある場合や、長期的な投資として蓄電池を購入する場合は、リン酸鉄リチウムイオン電池を搭載したモデルを選択すると良いでしょう。
使用用途に合った蓄電池を選ぼう
いかがでしたでしょうか?今回は、ポータブル電源のメリット・デメリットから選び方までをご紹介させていただきました。
ポータブル電源のメリットは定置型蓄電池のデメリットでもあり、また逆も然りです。ポータブル電源のデメリットをカバーしたいと感じられた方は、定置型の家庭用蓄電池が使用用途に適しているでしょう。
それぞれのメリット/デメリットを鑑みて、ぜひご家庭に合った蓄電池を導入されてください。
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