国際生物多様性の日×サステナブル建築

国際生物多様性の日_サステナブル建築

5月22日は「国際生物多様性の日」。

私たち人間を含め、地球上のあらゆる生物が互いに支え合いながら生きていく「生物多様性」について考える日です。

そして現在、人間と生物がこの先も地球上で共に生き続けるためにさまざまな角度からの取り組みがおこなわれていますが、今回ご紹介するのはその中の1つ、「サステナブル建築」です。
サステナブル建築は、私たち人間の健康寿命を延ばしながら、生物多様性を守っていくことができる取り組みといわれています。

今回は、国際生物多様性の日とサステナブル建築について詳しくご紹介します。

国際生物多様性の日と生物多様性条約

1992年5月22日に、国連で「生物多様性条約」が採択されたことを機に制定された記念日です。生物多様性条約は、危機に直面している世界の生物多様性を守るための国際条約です。

国際生物多様性の日は、この生物多様性条約をきっかけに、世界の人々に“生物多様性を守ることの大切さ”を知ってもらうために制定されています。

生物多様性とは?意味と現状

生物多様性とは

そもそも生物多様性というのは、地球上にいる全ての生物が支え合って、バランスを保っている状態をいいます。

実は今、この生物多様性が危機に直面しています。これは、「生きている地球指数(Living Planet Index:LPI)」を見るとわかります。

生きている地球指数とは、哺乳類や鳥類、爬虫類、両生類、魚類といった地球上にいるあらゆる生物種の個体数をもとに試算した生物多様性の指標です。これは、世界自然保護基金(WWF)が臨年で公表している「生きている地球リポート」で用いられています。

指数は1970年時点を“1”として計測されているのですが、2022年に公表されたデータでは1970年~2018年の48年の間に69%も減っています。これは、世界の生物多様性が崩れてきていることを意味しています。

☞参考:WWFジャパン「生きている地球レポート2022」

生物多様性の崩壊問題と原因

生物多様性の崩壊

生物多様性が崩れる一因には、生産や消費などの人間の活動があります。

例えば、電気を作るときには化石燃料が大量に使われますが、その消費によってCO2が排出されます。CO2の大量排出は温室効果ガスと異常気象の発生につながり、生物多様性を含む生態系に悪影響を及ぼします。

こうした人間の行動により生物多様性が崩れると、私たちは生活することが困難になります。なぜなら、生物多様性は私たちの生活を守ってくれているからです。

実は、生活に必要な機能や資源は、生物多様性を含む自然環境の成り立ち(生態系)によって得られています。例えば、きれいな空気を吸うことができるのは、光合成をして酸素を吐き出している植物という生物のおかげです。

つまり、私たちは地球上のあらゆる生物の恵みを受けることで、日々の生活ができています。
このため、生物多様性の現状を知り、それを守っていくことはとても重要と言えるでしょう。

サステナブル建築とは【住宅部門でも進むカーボンニュートラル】

生物多様性を回復させるには、SDGsやカーボンニュートラルへの取り組みが重視されていますが、その1つにサステナブル建築があります。

サステナブル建築とは「持続可能な建築」を意味します。長い期間に渡って使い続けられるように、地球環境や生態系に配慮して設計と施工、運用をしながら住宅や建物を建築することを指します。

サステナブル建築_スマートハウス

サステナブル建築に求められる3つの視点

サステナブル建築では、次の3つの視点を考慮した取り組みが求められます。

1. 地球の視点
地球の有限性を考慮する取り組み(再生可能エネルギーの利用やCO2削減、節電など)

2. 地域の視点
地域の環境を考慮する取り組み(ヒートアイランド対策や生物多様性への配慮など)

3. 生活の視点
生活する人の目線に立ちながら、我慢せず省エネな生活環境を目指す取り組み(温熱環境などの快適性、臭いなどの健康性など)

国土交通省:サステナブル建築物等先導事業

前述したようなサステナブル建築のプロジェクトに対し、国土交通省は「サステナブル建築物等先導事業」という支援をおこなっています。

この支援は、以下4つのプロジェクトに対し補助金の交付をおこなうものです。

1. 省CO2先導型
CO2削減の実現性に優れたプロジェクトが対象。
建築物は、以下のような条件(一部)を満たす必要がある。

・ ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス:エネルギー収支をゼロにする家)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル:エネルギー収支をゼロにする建物)といった省エネ性能を満たす
・ 材料や設備、設計、運用において、CO2削減などに役立つ先導的な技術が導入されている

2. 木造先導型
木造化建築物を推進するプロジェクトが対象。
建築物は「使う材料や工法の工夫によって整備コストを減らす」などの条件を満たす必要がある。

3. 次世代住宅型
IoT技術やホームエネルギーマネジメントシステムなどを活用し建てられる住宅プロジェクトが対象。
現在世界的に注目されているスマートハウス(創エネ・蓄エネ・省エネを自宅で実現する住宅)は、この次世代住宅型に該当する。

4. 気候風土適応型
地域の気候風土に応じた住宅の建築技術を活用して、省エネのための工夫や環境負荷低減対策をおこなうプロジェクトが対象。

サステナブル建築:日本の事例

サステナブル建築の住宅や建物は身近に多くあります。
ここでその事例を2つ紹介しましょう。

事例①集合住宅「パークシティ南千里丘」

大阪府摂津市にある集合住宅「パークシティ南千里丘」は、省エネと環境に配慮して建てられました。その具体的な取り組みは、以下の通りです。

・多目的アリーナ棟に太陽光発電パネルを設置。発電した電気は、教養部の照明などに活用
・省エネ量を一目で実感できるよう、各住戸に「エネルギー見える化システム」を設置
・ヒートアイランド対策のために、駐車場棟の屋上と外壁の一部、多目的アリーナ棟の屋上を緑化

☞参考:サステナブル建築事例集「パークシティ南千里丘」|日本建設業連合会

事例②建築物「大手町タワー/大手町の森」

東京都千代田区にある建築物「大手町タワー/大手町の森」は、ヒートアイランド対策と生態系に考慮して建てられました。その具体的な取り組みは、以下の通りです。

・ヒートアイランド対策のために、約3,600平方メートルの緑のキャノピーを設置。シミュレーションでは、平均気温が敷地内で1.7度低下
・キャノピーの緑は、さまざまな生物を育める野生を併せ持つ緑を整備

☞参考:サステナブル建築事例集「大手町タワー/大手町の森」|日本建設業連合会

健康にも効果的!断熱性能とサステナブル建築の関係

サステナブル建築_断熱と健康の関係

サステナブル建築は、私たち人間の健康にも良い効果をもたらすといえます。

なぜなら、サステナブル建築に求められる3つの視点の1つ“生活の視点”にもあるように、サステナブル建築では快適な室内環境も求められるからです。

一般住宅のZEHやスマートハウスなどは、快適な室内環境を実現する条件の中でも特に断熱性の向上が重視されています。断熱性の向上が重視されるのは、断熱の性能によって室内の温度が変わり、快適かつ健康に過ごせるかどうかが決まるからです。

例えば、今年1月24日にNHKで放送されていた情報番組「クローズアップ現代」では、室内温度が18度を下回ると以下のような健康被害が出ると述べられていました。

・18度未満…血圧上昇、循環器疾患を引き起こす恐れ
・16度未満…呼吸器系疾患に対する抵抗力の低下
・5度未満…低体温症を引き起こす恐れ
☞参考:NHK「クローズアップ現代:家の寒さと健康被害に意外な関係が」

また、厚生労働省では、以下のような健康の改善が見られることを公表しています。

・室温18℃以上を維持すると
①健康に影響が出る総コレステロール値やLDLコレステロール値が改善
②高血圧や夜間頻尿が少なくなる
☞参考:厚生労働省「住宅の温熱環境と健康の関連」

断熱性の向上が求められるサステナブル建築では、体を健康にする温かく快適な室内環境を実現することが可能です。サステナブル建築は、私たち人間とその他の生物にとっても、長く地球上で持続的に生きていくために最適な建築といえるでしょう。

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いかがでしたでしょうか?
今回は、国際生物多様性の日とサステナブル建築について紹介しました。

室内環境については、WHO(世界保健機関)も以下の内容を世界に勧告しています。

・冬の室温を18度以上に保つこと
・新しく建てたり、改修したりする建築物は、高断熱の性能に優れていること

実は、これまで日本の断熱性能基準は世界でも最低レベルでしたが、2022年10月以降、断熱基準の等級には新たに3等級追加されました。

つまり、これからの新築には従来より高い断熱基準が適用されていきます。税制優遇の条件も上がっていくでしょう。高い断熱性能は、長い目で見るとコスト減となります。

住宅の建設を検討されている方は、断熱性能レベルついても考えてみてはいかがでしょうか。

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