【解説】将来の電力供給力を取引する|容量市場とは?

容量市場とは

4年後の将来の電力を確保する?「容量市場」とは何かを詳しく解説!

実は2020年から始まっている「容量市場」。
ただ、私たち個人の暮らしには関係のないことだと思っていませんか?

実は、容量市場の仕組みは巡り巡って私たちの日々の生活にも影響を及ぼす可能性があります。

経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー2020」

(出典:経済産業省資源エネルギー庁 「日本のエネルギー2020」)

今年の3月16日に起きた福島県沖地震では、火力発電所が一時停止しました。その影響で、東北・東京エリアでは“電力逼迫”が起こったことは記憶に新しいですよね。
また、ニュースなどでも取り上げられていますが、2022年~2023年の冬の時期が10年に1度の極寒になった場合、電力は足りなくなるという旨を経済産業省は示しています。

しかし、上図の通り日本のエネルギー自給率は2018年で11.8%となっており、世界の国々と比べるとかなり低い水準となっています。電気の必要量は増えていく反面、電気の不足はますます問題になりそうですね。

そこで今回は、将来の電力供給力を確保するために日本でも始められた「容量市場」の目的や仕組み、問題点について解説していきます。

「容量市場」が始まった背景は?その目的とは?

2012年、再生可能エネルギーの普及拡大のために「FIT制度(固定価格買取制度)」が始まりました。

太陽光や風力など季節や天候によって変動する「FIT電源」が、市場に売り出されることは、市場価格の低下にも繋がります。しかしその一方で、太陽光などが発電しない時間帯には火力発電所を稼働させて、必要な電力量を賄わなければならないということが起こっています。

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火力発電所の老朽化は年々問題視されており、JERAは稼働から約50~60年経過し老朽化した火力発電所9基を廃止すると発表しました。

理由は、老朽化により維持管理費がかさみ、投資回収ができないためです。合計出力は383万3,000kWで、原子力発電所4基分の出力に相当するそうです。
(出典:日本経済新聞「JERA、火力発電9基廃止 老朽化で採算合わず」2022年3月31日))

このように、投資回収ができずに発電所の建て替えや建設を断念する事態が続くと、日本では電気が足りなくなってしまいます。電気が足りなくなると、電気料金が値上がりし、さらには計画停電などもより多く実施されるようになってしまうでしょう。

そこで、発電所維持の必要コストを集めるために今回の「容量市場」がスタートしました。

「容量市場」の対象電源や仕組みとは?

「容量市場」は、当年度から4年後の電源を確保する仕組みとなっています。

初回は2020年から始まり、以降毎年“電力広域的運営推進機関”が開催していきます。加えて、オークションに参加できる電源は種別や容量などさまざまな条件が決められています。

また、発電事業者は、条件を満たした所有する発電所(電源)をオークションに応札(入札に参加)し落札されることで、「容量確保契約金」を受け取ることができます。そして、そのお金は、発電所の維持管理費などに充てることが可能となります。

参加電源

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では「容量確保契約金」は、どこから確保したお金なのでしょうか?

「容量確保契約金」を捻出・支払うまでの流れ

下図の通り、「容量確保契約金」を負担するのは各一般送配電事業者と小売電気事業者です。

容量市場仕組み

2016年から電力自由化により新電力が誕生し、小売電気事業者は2022年5月17日現在で741社あります。そんな小売電気事業者が上図の「容量拠出金」を支払う義務は、電気事業法により定められています。

そのため、現在の741社は、もれなくオークション初回(2020年)の4年後にあたる2024年から毎年、各年の拠出金額を支払わなければならないということになります。

ちなみに、2021年度の容量市場メインオークション結果では、9エリアの一般送配電事業者で426.7億円、小売電気事業者は4,713.4億円が支払い額となりました。また、参加対象電源が発電する約定総容量は165,342,148kWと発表されています。

さて、小売電気事業者が2024年から毎年「容量拠出金」を支払う義務があることで、何が起こるでしょうか?

小売電気事業者の現状と「容量拠出金」への不安

売買取引のイメージ

(出典:電力広域的運営推進機関 容量市場かいせつスペシャルサイト)

現在、電力市場が高騰し、小売電気事業者の撤退や新規申込受付を停止するという事態が相次いでいます。契約先の小売電気事業者から値上げ価格を提示された企業も多いのではないでしょうか?
また、燃料費調整額の高騰によって一般消費者の電気料金も値上がりしている状況なので、生活に影響を受けている方も多いかと思います。

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ただでさえ異常なエネルギー高騰状態などが続いている電力業界で、小売電気事業者はなんとか経営しているため、今後は「容量拠出金」を支払えず、倒産する企業も増えてくるのではないでしょうか。

もしくは、倒産を避けるために「容量拠出金」を需要家の電気料金に上乗せするという方針を打ち出す小売電気事業者が出てきてもおかしくないのでは?と思います。

‥少し怖いことを言いましたが、「容量市場」の本来の目的の一つには、“電力取引価格の安定化”というものがあります。安定供給を確保することで市場価格が安定化するという見通しですが、大荒れの電力業界で、果たして意味を成すのでしょうか。

日本における「容量市場」の問題点

上記でも少し触れたように、メインオークションは実需給期間の4年前に開催されます。
そこで「容量拠出金」を算出する際の単価が決定します。

容量市場スケジュール

2020年7月に初回のオークションが開催されましたが、上限価格ギリギリの14,137円/kWという、世界に例を見ない高値で約定する結果となりました。

原子力資料情報室の松久保氏が2020年度8月15日時点の需要電力量見込みから、ピーク需要比率と一般送配電事業者・新電力の「容量拠出金」負担額について、2019年度販売電力量と負担額から平均単価を推計したところ、下記のように推計されました。
(※平均的な単価であり、顧客の負担率の違いにより単価は変動)

・一般送配電事業者(旧一電):1.59円/kWh
・新電力:2.69円/kWh
(参考:原子力資料情報室 松久保 肇氏 2021年10月21日開催「パワーシフトキャンペーンセミナー」)

そんな日本の「容量市場」が抱える問題点として、下記が挙げられています。

<日本における「容量市場」の問題停>
①高すぎる約定価格‥海外の2~10倍。
②石炭火力が含まれている‥古い石炭火力や、燃料切れで稼働していない電源が含まれており供給量として役立っていない。
③小売競争を阻害‥電源を持たない新電力が不利。

とはいえ、2020年オークションの結果をもとに、落札情報を公開するという是正措置が決定しています。また、「約定価格は上限価格張り付き」という状況は回避されるそうです。

「容量市場」の今後について

「容量市場」の廃止や、やり直しを求める声が出ていることは現実としてありますが、将来の供給力不足を解消するためにも「容量市場」の廃止にはならないと思われます。

では、小売電気事業者が「容量拠出金」の負担を少なくするためには、どうすれば良いのでしょうか?考えられる方法をいくつかご紹介します。

<「容量拠出金」の負担を軽減する方法>
・契約デマンドを上げないように、高圧契約ではなく低圧契約をメインで需要家を獲得していく
・自家発やDRなどを組み合わせて発電事業者としてオークションへ参加して、「容量確保契約金」を受け取れるようにして「容量拠出金」の負担額を薄める
・「容量拠出金」を得た発電所から電源を仕入れる

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いかがでしたでしょうか?

電気料金への転嫁は、競争環境と需要家への説明が必要なことから、実行するのはなかなか難しいという声もあります。しかし、これ以上倒産や撤退する小売電気事業者が増えると、電力システムを根本から見直さなければならないと感じます。

容量市場」は、業界関係者だけでなく、私たち一人ひとりにも関係があることがわかりましたね。少し難しい制度にはなりますが、今後のためにもしっかり把握しておきましょう!

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