[COP28の結果まとめ]グローバル・ストックテイクの実施と化石燃料からの転換

環境

ドバイ

2023年11月30日から12月13日までの14日間、ドバイ(UAE)では「国連による気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)」が開催されました。

2022年にエジプトで開催されたCOP27から早一年。前回は途上国への「損失と損害」基金の設置が成立するなど、大きな成果があったことが印象的でした。

今回のCOP28でも様々な成果がありましたが、中でも大きく分けて下記の3つの成果がポイントになると考えられます。1つずつ詳しく見ていきましょう。

<3つの成果>
①「損失と損害」基金の運用が合意
②グローバル・ストックテイク(GST)の実施
③化石燃料からの転換に合意

成果①「損失と損害」基金の運用が合意

まずは先ほど述べた通り、前回のCOP27の成果の1つである「損失と損害」基金に関する進捗を確認してみましょう。

驚くことに、「損失と損害」基金の運用については会議初日に合意が成立しました。

前回COPではあくまで設置の合意だったので、どの機関が基金の管理をするか、どの国がお金を拠出するかなどについては、COP28までの一年間で交渉が続けられていました。

そのため、会議初日の合意成立は1つの大きな成果と言えるでしょう。また、議長国のUAEやドイツは、それぞれ1億ドルの金額拠出を表明するなど、積極的な動きがみられました。日本も1,000万ドルの拠出を表明しています。

これらの動きは、気候変動によって甚大な被害を受けている途上国への支援に向けた重要な歩みの始まりとなりました。

ビジネス

成果②グローバル・ストックテイク(GST)の実施

次に、「グローバル・ストックテイク(GST)」が初めて実施されたことも注目されました。

グローバル・ストックテイクとは?

資源エネルギー庁によると、グローバル・ストックテイクとは、パリ協定の目的や長期目標と比較して、国際社会全体の温暖化対策の進み具合がどの位置にあるのかをIPCCの最新報告書などの情報を基に、5年ごとに評価する制度になります。

各国はこのGSTの結果を踏まえ、自国の温室効果ガス排出量削減目標(NDC)を修正・更新します。また、各国は策定したNDCの施策を実施しながら、その報告を2年ごとに提出することが義務付けられています。そして、その報告は次のGSTの情報源となるのです。

こうしたサイクルを上手く循環させていくことで、各国が着実にパリ協定の目標達成へ向かうよう舵を取っていくというわけですね。

資源エネルギー庁_GST

(出典:資源エネルギー庁HP『気候変動対策、どこまで進んでる?初の評価を実施した「COP28」の結果は』)

GSTの成果と決定文書

今回のGSTでは、成果として決定文書で下記の2点が強調されていたようです。

・「世界の気温上昇を1.5度に抑える」という目標まで隔たりがあること
・1.5度目標に向けて行動と支援が必要であること

また、温室効果ガス排出量削減については、対策の強化に向けて2025年までにGHG排出をピークアウトさせ、2030年までに43%、2035年までに60%を排出削減する必要性があるとまとめられました。
具体的には、次のような項目が明記されています。

・2030年までに再エネ発電容量を世界全体で3倍、省エネ改善率を世界平均で2倍に
・排出削減が講じられていない石炭火力のフェーズダウンに向けた取り組みの加速
・ゼロ・低排出自動車の導入、インフラ構築を含め、多様な道筋の下で道路交通の排出削減を加速
・2050年までにネットゼロを達成するための、エネルギーシステムにおける化石燃料からの移行

全体を通して、再生可能エネルギーへの転換・主流化が進められていくことがわかりますね。

また、最後の「エネルギーシステムにおける化石燃料からの移行」は、今回のCOPで決められた重要な成果の1つです。最後にこちらを詳しくご紹介します。

成果③化石燃料のからの転換に合意

3つ目の大きな成果は、エネルギーシステムにおいて化石燃料を転換していくことが合意されたという点です。

地球温暖化を進める最大の要因として挙げられる化石燃料の廃止を合意に持っていけるかどうかは、今回のCOPでもとても注目されていた課題でした。

しかし、化石燃料の「段階的削減」または「段階的廃止」という強い文章を成果文書に盛り込むことには大国からの反対もあり、交渉は難航しました。遂には会議期間の延長にまで至り、結果的には、下記の通り明記されました。

「2050年までにネット・ゼロ(温暖化ガス排出実質ゼロ)を達成するために、公正で秩序だって衡平な方法で、エネルギー・システムにおいて化石燃料を転換していく、この重要な10年にその行動を加速させる」

「段階的な廃止」ではなく「脱却を進める」という形での合意となりましたが、それでも化石燃料を名指しして脱却していくことが決まったのは、COP史上でも貴重な決定となりました。

☞参考:WWFジャパン『COP28報告』

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いかがでしたでしょうか?

ここ数年のCOPは歴史的転換点となるような大きな成果が続いています。今後、各国はパリ協定の目標に対し、達成に向けますます動きを加速させていくでしょう。

2024年のCOPはアゼルバイジャンで開催されます。ぜひまた11月末頃に注目してください。

☞過去のCOP27のまとめはコチラ!

[COP27の結果まとめ]開催地エジプトでの成果とは?

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