IoT技術ECHONET Lite実験施設「神奈川工科大学スマートハウス研究センター」でスマートハウスの実現を!

インタビュー

神奈川工科大学スマートハウス研究センター_外観

スマートハウスに必要不可欠な「ECHONET Lite」。
スマート家電などについて詳しい方は耳にする機会も多いのではないでしょうか?

今回は、スマートハウスの標準通信プロトコル「ECHONET Lite」の普及推進が主なミッションである、神奈川工科大学 スマートハウス研究センター 広報担当の笹川 雄司(ささがわ ゆうじ)さまに、研究センターの概要とスマートハウス化への取り組みなどについてお話を伺いました。

神奈川工科大学スマートハウス研究センター_笹川様

(神奈川工科大学スマートハウス研究センター 笹川 雄司 さま)

神奈川工科大学スマートハウス研究センターとは?

2011年の東日本大震災で経験した大規模停電や電力不足を踏まえ、省エネや節電に貢献するスマートハウスの実現を目的として、2012年に活動を開始しました。
この施設(HEMS認証支援センター)は、経済産業省の補助事業「スマートハウス国際標準化研究事業」の一環として、2012年11月に設立されました。スマートハウスの国際標準通信規格である「ECHONET Lite」の相互接続試験環境の提供とともに、「ECHONET Lite」の国際的な普及活動を推進しています。

このECHONET Liteは単なる省エネ・節電だけではなく、自然災害に対する国内のエネルギー供給強化なども目的としたZEH住宅のようなスマートハウスの普及にも利用されています。特に近年では、日本のエネルギー課題の一つである低自給率を改善するためのエネルギー自家消費率向上にも貢献が出来る、ZEH住宅の普及が政府として強く推進されています。

ZEHとは?
「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略語です。
スマートハウスやZEH住宅と呼ばれる住宅は、太陽光発電による電力の創出や省エネルギー設備の導入、住宅の断熱性能を上げることなどで、生活の中で消費するエネルギーよりも生み出すエネルギーが上回る住宅のことを言います。

スマートハウス化は技術とともに進化

それまでは、省エネや節電を目的とした機器制御などを行う際には、エアコンなどの家電製品それぞれ異なる通信仕様となっていることが一般的であり、家電メーカー毎の開発が必要でした。
しかし、政府がECHONET Liteをスマートハウスの標準通信技術として推奨したことで、スマートハウス化するためのハードルが大きく下がりました。

その頃は、インターネットを介して機器のデータを取得し、コントロールする「IoT」はあまり知られていませんでした。しかし、当研究センターでは、いち早くインターネットを前提としたデータの取得や、オープンソースの無償提供などを前提とした研究を進めてきました。

IoTとは?
「Internet of Things(モノのインターネット)」の略です。
今までインターネットにつながっていなかったモノをつなぐことを指します。例えば、テレビや冷蔵庫、エコキュートなどのデジタル情報家電をインターネットに接続することができるようになります。
10年前は、インターネットに接続することができる家電製品はあっても、その情報は家電メーカーや住宅メーカーのサーバー上にしかありませんでした。

スマートハウスを実現するためのキー「ECHONET Lite」

神奈川工科大学スマートハウス研究センター_ECHONET Lite

当センターでは、「ECHONET Lite」という通信規格を搭載した、異なるメーカーの家電製品や、蓄電池、EV(電気自動車)などを設置し通信試験が行える試験環境を整備しています。
また、ECHONET Lite規格を策定している一般社団法人エコーネットコンソーシアムとの共同研究により、ECHONET Liteデータを取得するためのECHONET Lite WebAPIの実験クラウド提供(図1)や、学習アプリの開発などもおこなっています。

今後は、より様々な他メーカー、あるいは異業種の機器との連携ができるような支援を行っていきたいと考えています。

ECHONET Liteとは?特徴の紹介

神奈川工科大学スマートハウス研究センター_ECHONET Lite_図1

(図1:ECHONET Lite Web APIへの技術支援)

■ 異なるメーカーの機器を相互接続し、制御することが可能
■ 有線LAN(Ethernet)、無線LAN(Wi-Fi)として広く普及している
→標準的な伝送メディアを用いて、システムの構築が可能となる。
■家庭・中小ビル・店舗向け等、広範囲な機器に対応
→100種類以上の機器コマンドを定義しており、新しい機器についても随時コマンドを追加ができる。
■クラウド上のサービスとの連携が可能
→インターネット上の様々なシステムと連携し、高度なサービスの実現が可能となる。

ECHONET Lite機器の出荷量は年々増加

神奈川工科大学スマートハウス研究センター_ECHONET Lite_エコーネットコンソーシアムWebサイト

(出典:エコーネットコンソーシアムWEBサイト)

メーカーへの出荷台数調査では、上図の通り、現在までに市場に導入されたECHONET Lite機器が1億台を超えています。

ECHONET Liteが登場するまでは、メーカーや家電製品の種類によって異なるプロトコルをメーカーに開示してもらうこと自体が難しかったです。そのため、スマートハウスを創ろうとすると、住宅メーカーや家電メーカー毎に開発しデータ連携をさせており、時間とコストがかかっていました。
しかし、このECHONET Lite規格を経済産業省が推奨したことにより、当研究センターが懸け橋となり家電メーカーや住宅メーカーのビジネスコラボレーションを生む施設として、場を提供しています。

企業間の連携やリリース前の機器の実験をおこなう際には、「プラグフェスト」というイベントとして当施設を開放しています。イベント日には1F、2FともにECHONET Lite開発に携わる企業の皆さまが試験をおこなっています。

導入済みのECONET Lite AIF機器

神奈川工科大学スマートハウス研究センター_ECHONET Lite_導入例

現在、ECHONET Lite Web APIの普及に力を入れています。実際の企業導入例を紹介します。

これはプレスリリースにもなっていますが、例えば関西電力さんと三菱電機さんは、関西電力のスマートホームサービス「はぴリモ+」で三菱電機のクラウドと連携し、三菱電機製のエコキュートを遠隔操作できるようになりました。

これまでの場合は、関西電力のクラウドデータと三菱電機のクラウドデータは別々に存在し、連携できませんでしたが、今回は企業間でデータの連携をおこなうことができ、自社でまるごと開発する必要がなく、時間やコストを短縮できます。

☞プレスリリースはコチラ

多様なデータをクラウド化し利用する際の「注意点」も

近年、個人情報は取り扱いがかなり厳しくなっていますので、情報保護の観点からクラウドにデータをアップロードする際は注意が必要です。
特に、異なる企業間でデータをやりとりするということに関しては、情報保護をした上で、どこまでデータのやりとりをするかが重要ですし、企業間の取り決めのルール化が一層重要となってきます。

また、IoT化するにあたり前提として考えないといけないのは、危険がないかということです。安全性の確保や、いたずらを如何に防止するかなどを検討する必要があります。

さらには、2次災害についても開発前に考えるべきです。例えば、1階にはコンビニエンスストアなどでよく見る「食品棚(業務用ショーケース)」も置いて実験しているのですが、省エネという観点では、食品棚の電気を止めることは効果的です。しかし、電気を消すことにより食品が腐り、それを食べた人がおなかを壊すということがあってはいけないので、こういった機械は、ただ制御すればいいということにはなりません。

神奈川工科大学スマートハウス研究センター_注意例

一方で広がる活用の幅と可能性も

とはいえ、多くの新らしいビジネスでは、様々な用途で機器データを取得したり制御したりすることが重要です。

例えばエアコンなどの場合、エアコンの稼働状況を把握することで、在宅しているか否かを把握することが可能です。こうした活用方法は、在宅確認を取るサービスとしての新たなエアコンの活用方法として考えることができると思います。

ECHONET Lite AIFの国際標準化

当研究センターでは、国内の企業支援と同時に、ECHONET Lite AIF通信仕様を国際標準化しようと様々なロビー活動をしています(ECHONET Lite規格は国際標準化完了済み、ECHONET Lite AIFはECHONET Liteの相互接続性を高める仕様)。

国際標準化すると、国際基準を満たしている製品として競争力が増します。そうすると、海外でECHONET Liteを搭載している家電製品などが売りやすくなったり、そもそも海外の製品がECHONET Liteに沿った基準で作られるようになったりします。

そのため現在は、海外の講演会やエキスポに出席して、ECHONET Liteの技術の紹介をしたりしています。コロナ前ですが、例えば台湾台北市で行われた日台共同のシンポジウムへの参加や、海外での展示会出展などをエコーネットコンソーシアムと協働で推進しています。

また、これもコロナ前ですが、他にもJICAの事業の一環として、発展途上国の方にこの研究センターを訪れ、見学していただき、こういった技術があることを知ってもらう活動などもおこなっていました。

逆にコロナ禍では、新しい試みとしてヴァーチャル見学ができるようにWebサイトを新たに用意し、なかなか当研究センターに来られない方にも「この施設でどういった実験をしているのか?」「どのような活動をしているのか?」ということを知ってもらうサービスとして提供を始めました。

スマートハウス研究センターの今後

当研究センターの今後としては、ECHONET Liteを実装した機器が世の中で選ばれていくことがZEH住宅、スマートハウスへの一歩だと考えています。
実験機器としてあらゆる機器の持ち込みや他社同士の検証、ビジネスの発表前の実験会場、ビジネスマッチングの場としての提供などを積極的におこなっていきます。

そして、ECHONET Liteを国際標準化することは海外で勝てる製品を生み出す一歩になると思いますので、海外でのロビー活動も引き続き積極的におこなっていきます。

神奈川工科大学スマートハウス研究センター_ECHONET Lite_推進活動の様子

(シンポジウムなどへの参加の様子)

あとがき

IoT技術により、様々な家電がネットワークでつながり、ひとつのリモコンやディバイスで制御・コントロールできるようになります。それがECHONET Liteという規格に則ることで実現されようとしています。

こうした技術を用いて、スマートハウスやスマートシティの実現が叶えば、別の新たなサービスの創出にもつながるそうです。今後、ますますECHONET Liteの国際基準化を含めて注目していきたいですね。

☞家の中の消費電力量が見える化!「HEMS」とは?

スマートハウスに必要不可欠!省エネを進めるカギ「HEMS」とは?

☞蓄電池もスマホ1つでコントロールできる?

【テスラパワーウォール】IoTの類を駆使し進化する家庭用蓄電池

 お問い合わせ

関連記事

お問い合わせ

運営会社

詳しく見る